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5年に1度の財政検証、次の年金改革の目玉とは? Q&Aで考える「公的年金保険の過去と未来」(下)

東洋経済オンライン / 2024年4月1日 9時0分

この問題を考える際には、なぜ、先に挙げた王道の年金改革が長い間実現できないままでいたのかを考えておくことが、年金周りの政治経済現象を理解するうえで役に立つ。

「政策は、所詮、力が作るのであって正しさが作るのではない」(『再分配政策の政治経済学』3ページ)は、四半世紀前から言い続けてきた言葉である。「制度、政策は権力ベクトルの均衡として成立している」とも論じてきた(『もっと気になる社会保障』261ページ)。そうした力関係で決められた制度が、非正規の利用を事業主に推奨し続けた社会保険制度であり、当面の基礎年金が高めに推移して、これらのせいで将来の基礎年金がかつての想定よりも低くなってしまう日本の公的年金制度だったのである。

岸田文雄首相も出席していた第12回全世代型社会保障構築会議(2022年12月16日)で次の発言をしている。

2月に自民党のある会議で、勤労者皆保険、かかりつけ医の話をしますと、終わった後に1人の先生が、おっしゃることはそのとおりなのですが、それってわれわれに支援者と戦えという話ですよねということになって、今のようにみんな大笑いになったわけですけれども、そこにいた長老の先生が、われわれも変わらなくてはいけないということだよとおっしゃられて、非常に面白い会議でした。

第11回全世代型社会保障構築会議では「政治経済学者から見る社会保障論のキーワードはレントシーキング」との発言もしている。そうした政策形成過程での力学を押さえたうえで、年金周りの政治経済を考えることが必須となる。

基礎年金への国庫負担増を、マクロ経済スライドの調整期間一致という聞こえのよい、心理学上のフレーミング効果をねらった角度から進めていこうとすると、基礎年金に依存する人の生活苦、貧困を救う必要、再分配の強化を始点に置かざるをえなくなる。

そこからスタートした論の帰結が、先ほどまで貧困の話をしていたはずなのに、この案に賛同して報道する(高所得の)記者たち自身をはじめ、多くの高年金受給者への税の投入が増えて彼らの基礎年金をも高めてしまうという矛盾が生まれる。

無理のある論から生まれるこのトリッキーさをつかれて、国庫の問題を絶えず考えている人たちから高年金受給者へのクローバック(一定所得層以上の基礎年金を減額する制度)が求められた時、どのように反論するのだろうか。

2013年の社会保障制度改革国民会議以来、長く論じられてきた適用拡大や被保険者期間の延長ではなく、厚生年金と国民年金の積立金を混ぜるという比較的新しく言われるようになった方法で、基礎年金を上げたい本当の理由を言うことを避けようとして、スキがある論になっているようにも見えるし、高在労廃止という、高所得者優遇と批判されることもある目標を掲げる同じ時代に再分配の強化を声高に言うのもおかしな話である。

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