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5年に1度の財政検証、次の年金改革の目玉とは? Q&Aで考える「公的年金保険の過去と未来」(下)

東洋経済オンライン / 2024年4月1日 9時0分

出口治明委員から、「権丈先生のお話でショックだったのは、5年後にもまだ在老を議論しているかもしれないという見通しだったのですけれども、(中略)決して金持ち優遇でも何でもないので、いろいろな問題点があるとしても、基本的には廃止すべき方向で、ここで議論していったらいいのではないか」との発言があった。

そして、あれから5年以上経った今も、年金部会では高在老の話をしている。政策形成過程では、高在老改革は高所得者優遇の一言に負ける、そういう話である。

正直者がバカを見るこの制度のおかしさ、社会がWork Longerを唱えておきながら、それを実践する人がペナルティを課される矛盾を理解するにはかなりの知識が必要となる。ゆえに多数派は、高年金者の給付カット財源4500億円(2021年度末)を用いて所得代替率をわずかにでも上げている現状を良しと考えたままになる。年金部会の中でさえもそうだ。

高在老は、保険料率を下げるための財源措置として、公的年金制度の理屈を無視して設けられたものであり、ここからいくつもの矛盾が生まれている。しかも、高在老による支給停止対象額は、年々増えており、2018年度末4100億円であったものが2021年度末には4500億円となっている。これは、対象となる多くの人が高在老ゆえの就業調整をしていないことを示唆している。

これからは多くの人たちが、高在老に起因する制度の矛盾に直面し、そろって、いわば泣き寝入りのままこの制度に従っていくことになる。それは、公的年金、さらには政治というものへの不信感、再分配制度への嫌悪感を高めていくのだろうと思う。

その状況を避けるためには、公的年金の税の優遇措置を見直して、そこで得られる財源をもって高在老を廃止することが理想ではある。しかしそのためには、5年に一度の年金改革と税制の抜本改革がタイミング的に一致する僥倖が必要となる。

そこで次善の策として、厚生年金保険料の上限を若干引き上げて、その財源で高在老の縮小・撤廃の道を考えている。高在老に起因する高所得周りの問題は高所得者同士で解決する。これにより、高在老改革で必ず出てくる高所得優遇の批判を封じる。

年金課税と他の施策についても触れておこう。

老齢年金には手厚い公的年金等控除があり、遺族年金は全額非課税である。これらが、医療保険、介護保険の保険料や患者・利用者負担の両面において、支払い能力に応じた負担面で不公平をもたらしている。さらにこの影響は、財源調達のルールとして医療保険制度を活用する子ども・子育て支援金制度にまで及ぶ。さまざまな面に公平さを欠く影響を与える大きな源に年金課税がある。

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