SNSが災害時の情報インフラとして使えない理由 偽情報すら収益化する姿勢で被災地の活動に悪影響
東洋経済オンライン / 2024年4月11日 19時30分
東日本大震災以降、災害情報におけるインフラとしてのSNS、ソーシャルメディアの占める割合は高くなったが、今回の能登半島地震においては、特に「インプ稼ぎ」を企図する偽・誤情報も横行した。改めて、信頼できる情報発信のあり方について、藤代裕之氏に論じてもらった。
ソーシャルメディア=情報インフラという認識を捨てる
1月1日の能登半島地震で明らかになったのは、ソーシャルメディアが災害時の情報インフラとして機能不全であるということだ。それは災害時の情報をソーシャルメディアに頼ってきたテレビ局の取材方法も問われることを意味する。次の大規模災害に向け、ソーシャルメディアの活用ではなく、信頼できる情報をどのように収集し、ニュースを伝えていくかに考えを大きく変えていく必要がある。
「SNSにどのような対策が必要か」「利用者が注意することは何か」。能登半島地震発生の直後からテレビ局や新聞社からいくつかの問い合わせがあったが、「対策は実現性が低く、利用者の対応は困難」と言うと、コメントは使われることがなかった。既存メディアでは「プラットフォームを運営する企業が対応を」「利用者は不確実な情報に注意しよう」といった識者のコメントが並ぶが、このような取り上げ方はソーシャルメディアを災害時の情報インフラとして認識していることを示している。
かつて「便所の落書き」と呼ばれたインターネットは、ブログやツイッター(現X)といったソーシャルメディアの登場により大きく変化した。転機の一つは、2011年に起きた東日本大震災で、既存メディアよりもリアルタイムであること、給水所や食料配布など地域の細やかな情報が手に入ることで、人々の被災生活を支えるよりどころとなった。
ほかにもGoogleの安否確認サービスやAmazonの仕組みを利用した物資支援が行われ、テレビとの関係では動画配信サービスを利用してニュースを同時配信するという画期的な取り組みもあった。
これらの動きを受けて、総務省は2012年に「大規模災害時におけるインターネットの有効活用事例集」を取りまとめた。自治体や省庁がアカウントを開設するだけでなく、ソーシャルメディアを運営する企業側も積極的に取り組みを行い、ツイッターは救助要請ツイート「#(ハッシュタグ)救助」のルール周知、消防庁や気象庁との意見交換や自治体との防災訓練実施で連携を深めた。
大規模な災害時に役に立ったという人々の記憶、行政の後押し、企業の努力、これらが重なりソーシャルメディアは災害時の情報インフラとして社会的に位置づけられたといえる。
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