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SNSが災害時の情報インフラとして使えない理由 偽情報すら収益化する姿勢で被災地の活動に悪影響

東洋経済オンライン / 2024年4月11日 19時30分

2022年の台風15号ではドローンで撮影された静岡県の被害状況として、生成AIで作られた偽画像がXに投稿されて拡散した。生成AIの登場により真偽の見きわめはさらに困難になっている。生成AIでは動画も作れるようになり技術の進化はとどまるところがないが、人が備えるリテラシーには限界がある。

災害時の情報をソーシャルメディアに頼ってきた取材方法も変更が求められている。カメラ機能がついたスマートフォンを持つ人は、既存メディアの支局や記者、カメラの数より圧倒的に多く、それらを簡単でコストが安い取材網として活用してきた。

ただ、災害時は既存メディアも混乱しており、誤報が繰り返されている。筆者は以前からソーシャルメディア投稿の安易な報道利用についてリスクが高いことを指摘してきた。不確実性の高い投稿には、陰謀論や他国や組織による影響工作も入り交じるため、リスクはさらに増している。

プラットフォーム運営企業の姿勢は大きく変わり、偽・誤情報すら収益にしようとしているが、テレビや新聞は誤報により社会的な信頼が低下すれば失うものが大きい。既存メディアは、ソーシャルメディアを玉石混交ではなく、「便所の落書き」だと捉え直し、情報インフラという前提を疑い、新たな対策を検討する必要がある。

トリアージによって必要な情報を収集する

信頼できる情報をどのように収集するのか。収益が細る既存メディアが取材網を拡大し、記者やカメラを増やすことは現実的ではない。

一つめは、系列や社、さらには媒体を超えて災害時の現場取材対応チームを作ることだ。能登半島地震ではNTTとKDDIという巨大企業による協力が協定に基づいて行われ、NTTグループの海底ケーブル敷設船にKDDIが衛星アンテナを利用した携帯電話の船上基地局を展開した。

東海地方では民放4局が系列を超えて災害時にヘリコプターの取材エリアを分担する「名古屋モデル」を構築して合同訓練を行っている。ヘリコプターは維持や運用に多額の経費が必要だが、支社・支局の統廃合が進み記者が減少しているなかで、災害時の現場取材でも連携を検討するタイミングではないだろうか。

二つめは、ケーブルテレビやローカルメディアとの連携だ。すでに進めているところも多いと思うが、ニュースを扱っていないメディアや自治体の広報、図書館を含めて地域の信頼できる人や組織とのネットワーク構築と広く捉えたい。

町の話題やお店を紹介するローカルメディアは、現状では災害時の連携対象とは見られていないが、町の情報や人のハブとなる人や組織が運営に関わっていることも多く、信頼できる情報を収集する連携先となりうる。

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