「結婚しないと老後は孤独」という発想の落とし穴 結婚関係なく「3人に1人は60歳で独身」という現実
東洋経済オンライン / 2024年4月13日 11時40分
では、離婚の影響が大きいとしたら、男女で離婚率は同じはずなのに、なぜ独身率に男女で10%ポイントもの差がつくのかと思うかもしれません。が、離婚しても再婚はします。そのうえで、再婚率は男性のほうが高く、再婚相手は初婚女性を選ぶ割合が高いからです。
私はこれを「時間差一夫多妻制」と呼んでいますが、離婚した男性が再婚のたびに初婚女性と結婚することが多いために、結果として「未婚男性余り現象」が発生します。冒頭で書いた通り、離婚した男性は未婚男性並みに孤独耐性がない寂しがり屋ですので、「離婚後の一人ぼっち」に耐え切れず再婚活動にいそしむのでしょう。逆に、四国や九州沖縄地方の女性は、離婚後は一人で生きていけるたくましさがあるのかもしれません。
また、「寂しがり屋」という観点でいえば、北海道や東北各県の離婚男性にも言えます。これら北国地域の離婚率はかなり高めで全体的に40%以上の離婚率ですが、離婚した男性の再婚達成率も西日本全体に比べて高く、結果青森以外の東北各県の男性還暦独身率が低くなっています。
しかし、それは皮肉にも未婚男性の初婚相手となったかもしれない未婚女性を奪うことになり、特に東北地方において、「結婚したくても相手がいない」ことによる初婚数の大幅減少状況を作り出してしまっています。
結婚しても誰もがいつかは一人に戻ることがある
今回は60歳という年齢に絞って分析しましたが、さらに年齢があがれば、特に男性の死亡率が高まり、75歳以上になると圧倒的に死別による独身戻り女性が増えます。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2040年には未婚と離別死別による独身者を合わせた15歳以上人口の割合は、ほぼ有配偶人口と同等になります。つまり、人口の半分は独身者(ソロ)になるわけで、もはやマイノリティではなくなります。
独身というと若い年代を想像しがちですが、長く続く少子化によって若者人口は減少しています。すでに、男性の場合は、若者(34歳まで)の独身人口より35〜64歳の中壮年独身人口のほうが上回っており、それはやがて65歳以上の高齢独身人口が最大化することになります。
結婚しても、誰もがいつかは一人に戻ることがある。もちろん、結婚した時点で離婚や死別のことなどを考える人はいないでしょうが、確実に訪れる未来に向けて「老後一人ぼっちになったときに自分はどう生きるか」を考えたりすることも大切かと思います。
荒川 和久:独身研究家、コラムニスト
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