アングル:EVと内燃車、新たな「クリーン基準」登場
ロイター / 2021年7月2日 10時23分
6月29日、米電気自動車(EV)・大手テスラのショールームで流線型の新型車「モデル3」を購入したあなたは、地球のために少しでも良いことをしたとの満足感に包まれている。写真は2018年6月、カリフォルニア州カーディフに停車中のテスラ「モデル3」(2021年 ロイター/Mike Blake)
[デトロイト 29日 ロイター] - 米電気自動車(EV)・大手テスラのショールームで流線型の新型車「モデル3」を購入したあなたは、地球のために少しでも良いことをしたとの満足感に包まれている。
だが、実感するのはまだ早い。あと1万3500マイル(2万1725キロ)走行しないと、ガソリンで走るセダンと比べて環境への負荷は小さくならないのだ。
これは、ロイターが自動車の耐用年数期間中に排出する二酸化炭素(CO2)量を計算するモデルから得られたデータをもとに分析した結果だ。
その計算モデルはアルゴンヌ・ナショナル・ラボラトリー(シカゴ)が開発し、EV電池に含まれる金属の種類から、自動車に使われるアルミニウムやプラスチックの量に至るまで、数千ものパラメーターが組み込まれている。
アルゴンヌは米エネルギー省が出資し、シカゴ大が運営している組織。
「技術における温室効果ガス・規制対象排出・エネルギー使用(GREET)」と呼ばれるこのモデルは他の手法と併せ、自動車排ガスの米2大監督当局である環境保護局(EPA)とカリフォルニア大気資源局が、政策立案の参考にしている。
アルゴンヌの首席エネルギー・システム・アナリスト、ジャロド・コリー・ケリー氏によると、EVは内燃エンジン車よりも生産過程で多くのCO2を排出する。EV電池に使う鉱物の採掘・処理と、動力電池の生産が主な原因だ。
しかし、生産過程のCO2排出量の差と、EVの方が内燃エンジン車よりも環境への負荷が小さくなる走行距離、「ブレークイーブン」ポイントの推計は、前提の置き方によって大きく変わる。ケリー氏によると、EV電池のサイズやガソリン車の燃費、EVの充電に使われる電源などの要因も、推計値を左右する。
<勝ち組はノルウェー>
ロイターは、アルゴンヌのモデルに一連の変数を組み込んで分析を行った。
冒頭に紹介したテスラ車「モデル3」の数値は、電源の23%が石炭火力発電である米国で走行した場合の推計だ。電池はカソード(陰極)にニッケル、コバルト、アルミニウムが使われ、54キロワット時(kWh)のものと想定した。
比較に使ったガソリン車はトヨタ自動車のカローラで、重量2955ポンド、燃費は1ガロン当たり33マイル。モデル3、カローラともに生涯走行距離を17万3151マイルとして計算した。
しかし、これと同じテスラ車がノルウェーで走行したとすると、走行距離のブレークイーブン・ポイントは8400マイルと短くなる。同国の電源は、ほぼ全て再生可能な水力だ。
仮に、EVの充電に使う電力がすべて石炭火力発電に由来すると想定すると、走行距離が7万8700マイルに到達しないとCO2排出量はカローラ並みまで下がらない。中国やポーランドは、電源の大半が石炭火力発電だ。
ロイターの分析では、中型のEVセダン車の生産と、それに付随する電池の生産過程で排出されるCO2は1マイル当たり47グラム。つまり最初の購入者に届くまでの総量は、810万グラム以上となる。
これに対し、同様のガソリン車は1マイル当たり32グラム、総量550万グラム強だ。
ただ、アルゴンヌのエネルギーシステム部門のシステムズ・アセスメント・センターでディレクターを務めるマイケル・ワン氏の計算では、12年間の耐用年数で見れば、EVの方がCO2排出量はおおむねずっと少ない。
<反論も>
ロイターの分析結果は、調査会社・IHSマークイットが欧州で出した推計と似通った数字となっている。IHS幹部の説明を聞くと、同社推計のブレークイーブン・ポイントは国によって異なるが、通常1万5000マイルから2万マイルの間であり、長期的にはEVに移行した方が恩恵を得られる。
ただ、EVに関してそれほど前向きではない分析もあり、ベルギーのリージュ大の研究者、ダミアン・アーンスト氏は、ブレークイーブン・ポイントを6万7000キロから15万1000キロの間と推計している。
(Paul Lienert記者)
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