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アングル:新興企業が続々拠点開設、欧州でAI人材争奪戦が過熱

ロイター / 2024年3月18日 9時41分

AI関連のスタートアップが大量に登場していることで、欧州ではテクノロジー人材を巡る争奪戦が過熱している。写真は2023年7月、上海で開かれたAI関連のイベントで撮影(2024年 ロイター/Aly Song)

Martin Coulter

[ロンドン 11日 ロイター] - 人工知能(AI)関連のスタートアップが大量に登場していることで、欧州ではテクノロジー人材を巡る争奪戦が過熱している。グーグル・ディープマインドなどの企業も、巨額の報酬を提示するか、欧州における最良の人材を失うかという岐路に立たされている。

オープンAIの対話型AI「チャットGPT」が一気呵成の成功を収めたことに刺激された投資家は、次の大化け候補を見つけようと、有望なAIスタートアップに資金を注ぎ込んでいる。

こうした投資の奔流に乗って、昨年はカナダのコヒア、米国のアンスロピック、オープンAIなど少なからぬ他国のAI企業が欧州に事業拠点を開設した。ただでさえ域内人材の採用と維持に奔走しているテクノロジー企業にとって、プレッシャーは高まるばかりだ。

ロンドンを拠点とするディープマインドは2010年の設立で、2014年にグーグルに買収された。ボードゲームから構造生物学に至るまで、あらゆる方面でのAIの応用により名をはせている。

だが同社は現在、資金力豊かなライバルが近隣にあふれるという事態に直面している。自分で起業するために退職する社員も増えている。

最近の離脱者で目を引くのは、共同創業者のムスタファ・スレイマン氏。リンクトインの創業者で富豪のリード・ホフマン氏と共に米カリフォルニア州でインフレクションAIを設立した。また科学研究員だったアーサー・メンシュ氏は、現在ミストラルAIの最高経営責任者(CEO)となっている。インフレクション、ミストラル両社とも、時価評価額は活動開始後あっというまに数十億ドルに達している。

事情に詳しい関係者によれば、ディープマインドは今年に入ってから、恐らくスタッフの転職や独自の起業を思いとどまらせる対策として、一握りの上級研究員を対象に、数百万ドル相当の制限付き株式の入手を認めた。

ディープマインドの広報担当者はロイターに対し、「競争が激しいのは確かだ」と認めつつ、「依然として人材の獲得と育成は順調に進んでいる」と言葉を添えた。

<先行組との差を詰める>

幹部人材あっせん会社のエイブリー・フェアバンクによれば、過去1年間、英国のAI関連企業における幹部クラスの社員に対する報酬は「うなぎ上り」だという。

マネジングディレクターのチャーリー・フェアバンク氏は、「アンスロピックやコヒアといった他国のAI大手によるロンドン雇用市場への参入は、AI人材を巡る競争をさらにエスカレートさせる」と語る。

フェアバンク氏によれば、これまで35万ポンド(約6600万円)前後の報酬を得ていた幹部ポストの場合、報酬総額にして5万─10万ポンドの大幅上昇が見られるという。

顧客企業向けに社内チャットボットなどのツールの構築を行うコヒアは、2022年、ディープマインドで主任研究員を7年間務めたフィル・ブランソム氏をチーフサイエンティストとして採用した。

1月には、やはりディープマインドを離れたセバスチャン・ルーダー氏がコヒアに加わった。

ルーダー氏はロイターの取材に対して、「業界でも有数の優れた頭脳をたくさん集め、ゼロから巨大な事業を築き上げる企業を見つけるのはめったにない機会だ」と語った。「そういうチャンスが来たら、つかまないと」

ルーダー氏は報酬に関する質問にはコメントを控えた。

ベンチャーキャピタル、オープンオーシャンのジェネラルパートナーであるエカテリーナ・アルマスク氏は、ディープマインドについて「もはやこの分野における突出したリーダー企業とは言えない」と評する。

「こうしたAI関連企業がどこも同じ人材プールを巡って競争している。AIスキルを備えた人材は不足しており、プールと言っても海よりは池に近い」

スレイマン氏は最近、インフレクションAIのためにロンドンを拠点とするテクノロジー人材の募集を開始した。一方、メンシュ氏が設立したミストラルは、あっというまに欧州大陸でも有数の活気にあふれるスタートアップとなり、昨年12月にはベンチャーキャピタルから4億1500万ドル(約613億円)を調達した。

ミストラルはコメントを控えた。インフレクションにもコメントを要請したが回答は得られなかった。

<経営への発言権も>

オープンAIは昨年、ロンドンに初の海外支社を開設し、まもなく第2の拠点をダブリンに設けた。同社で人事担当バイスプレジデントを務めるダイアン・ユーン氏は、他国への拡大も続けていく予定で、「これは最初の一歩にすぎない」と話している。

コヒアも昨年英国支社を開設し、エイダン・ゴメスCEOはロイターに対し、最近は本拠トロントとロンドンで過ごす時間が半々になっており、ロンドン支社の従業員数を現在の2倍、50人に増やす計画だと語った。

「私たちは人材がいる場所を目指す。ロンドンにも、欧州各地にも多くの人材がいる」とゴメスCEOは言う。

人材争奪戦のおかげで、働く側としては、声を掛けてくる企業に対して高い要求を突きつけやすい立場になりつつある。

ロンドンを拠点とするAI音声企業イレブンラブスは、新規採用者に対してストックオプションや高い給与を提供し、完全リモートワークを認めている。ただし、求人中のポストの大半では従業員が欧州域内で活動するよう指定している。

イレブンラブスは先日、a16zやセコイアといったベンチャーキャピタルから8000万ドルを調達した。ロイターに対し、近く従業員総数を現在の2倍に当たる100人まで増やすと明らかにした。

パリを拠点とするビオプティムスもやはりディープマインドの元社員が設立したスタートアップだが、2月には3500万ドルを調達した。

ビオプティムスに早くから投資しているトーマス・クローゼル氏によれば、スタートアップは経営方針に関する社員の発言権が大きいことを売りに、グーグルなどの大手テクノロジー企業からの人材引き抜きを狙っているという。

「グーグルはその事業分野における最も優れた企業の1つで、非常に優れた人材も輩出している」とクローゼル氏。「だがもっと規模の小さなスタートアップなら、自分が情熱を注ぐ仕事から離れないままで企業としての成功にも関与できるという、またとない機会を得られる」

(翻訳:エァクレーレン)

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