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焦点:ウクライナ、ドナウ川の穀物輸送ルートにもロシアの脅威

ロイター / 2023年7月27日 16時17分

7月25日、 ウクライナ南部オデーサ(オデッサ)州を流れるドナウ川沿いの穀物倉庫や港湾施設がロシアの攻撃を受け、ウクライナにとって大事な穀物輸送ルートが脅威にさらされている。写真は15日、ウクライナ・オデーサ地方のダニューブ河口付近を航行する貨物船とウクライナ沿岸警備隊の船。ウクライナ当局提供(2023年 ロイター)

[キーウ 25日 ロイター] - ウクライナ南部オデーサ(オデッサ)州を流れるドナウ川沿いの穀物倉庫や港湾施設がロシアの攻撃を受け、ウクライナにとって大事な穀物輸送ルートが脅威にさらされている。

黒海経由のウクライナ産穀物輸出合意から離脱したロシアが、穀物輸出を一層妨害することで、ウクライナに対する締め付けを強めようとしているもようだ。

ロシアが先週に行った攻撃でオデーサ州の穀物セクターは数千万ドル規模の被害を受け、24日にはドナウ川沿いでルーマニアと接しているレニ港にある倉庫や他の施設が、無人機(ドローン)攻撃を受けた。こうした事態からは、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻当初、穀物輸送が完全に滞った光景が思い起こされる。

ウクライナ農業評議会(UAC)の副責任者デニス・マルチュク氏は「ドナウ川が使えないと、(穀物)輸出(の状況)は危機的になる。陸上ルートだけで運べるのは非常に少ない量にとどまる。(ロシアによる)全面侵攻当時に戻ってしまう。黒海が封鎖されるとなれば、ドナウ川はわれわれが利用しなければならない主要ルートの1つだ」とロイターに電話で語った。

ラボバンクの農業コモディティー市場調査責任者カルロス・メラ氏は「大きな問題は、ロシアが近い将来において、これらの港湾への攻撃を続けるかどうかだ」と述べた。

24日の攻撃以降、ドナウ川の輸送ルートでは船舶交通の渋滞が解消されていない。

その正確な原因は不明だが、マリントラフィックのデータに基づいてロイターが計算したところでは、イズマイル港付近にいかりを下ろしたままの船舶は20隻に上り、出航可能なのは3隻のみで、24日以降、別の3隻も到着した。そこから約45キロ上流のレニ港の近辺でも7隻が停泊している。

<保険料高騰か>

関係者の話では、ドナウ川の港湾について一部保険会社が条項見直しを行っており、黒海穀物輸出合意の無効化の対象であるウクライナの港に対する戦争リスクのカバーはいったん停止されている。

保険業界関係者は25日、ウクライナのドナウ川沿いの港湾から貨物を積み出す船を新たにチャーターするための保険適用要請はほとんど見当たらないと明かした。

関係者の1人は「ロシアは輸送船舶を脅かすというより、インフラの破壊を狙っているように見受けられる。ただ、結果的には威嚇の効果になる」と説明する。

別の1人は「ドナウ川沿いの港湾に引き続き何らかの保険が適用されるとしても、保険料は著しく高くなる。何が起きるかは分からないのだから」と述べた。

それでも黒海経由の穀物輸出合意が機能しなくなったウクライナにとって、ドナウ川輸送ルートの重要性は高まっている。

メラ氏の見積もりでは、攻撃を受ける前の段階で、このルートは月間で約250万トンの穀物とオイルシードを輸送できる能力を備えていた。

一方、マルチュク氏によると、鉄道とトラックの輸送量は最大でも月間200万トンにとどまる。

これだけではウクライナが今年想定している輸出量に対応するには不十分だ。今年のウクライナの穀物収穫量見通しは4400万トンで、同国は伝統的に収穫量の大半を輸出に回している。

供給過剰を恐れる国内農家の突き上げを受け、中東欧諸国がウクライナ産穀物の輸入を制限していることも足かせの1つだ。

ロシアによる一連の攻撃では、中国向けに保管されていた6万トンの穀物や貯水施設、その他各種インフラが被害を受けた。インフラ所有企業は、施設修復には最低でも1年かかるとの見方を示した。

マルチュク氏は、失われた穀物の時価は800万ドルに上り、穀物エレベーターの被害額は何千万ドルにもなると嘆いた。

<ロシアの意図>

専門家の1人は、ロシアの攻撃はウクライナを黒海から閉め出し、世界の穀物供給国としてのロシアの存在感を高める目的があると分析している。

これらの攻撃からは、ロシアが西側諸国を「脅迫」してアンモニア輸出再開や、幾つかの制裁措置の解除といった成果を勝ち取ろうとしている姿勢が読み取れるという。

ウクライナが広大な領土の全域をカバーする防空網を構築する難しさも浮き彫りになった。

地元メディアが24日伝えたところでは、同日のドナウ川沿いの施設攻撃に投入されたドローン15機のうち撃墜できたのはわずか3機で、撃墜率は首都キーウに配備された西側製の防空システムに比べてずっと低い。 

(Max Hunder記者、Jonathan Saul記者)

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