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企業の財務健全性への対応、政府と役割分担=雨宮日銀副総裁

ロイター / 2020年7月29日 17時36分

 7月29日、日銀の雨宮正佳副総裁は、日本記者クラブで講演し、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて打ち出した、企業などの資金繰り支援・ドルや円の潤沢な資金供給・上場株式投信(ETF)の3本柱で、引き続き資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくと述べた。写真は2014年1月、都内の日銀前で撮影(2020年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 29日 ロイター] - 日銀の雨宮正佳副総裁は29日、日本記者クラブで講演し、新型コロナウイルスの影響が長期化すれば企業のソルベンシー(財務健全性)問題に発展する可能性があることに言及し、政府と役割分担し、日銀は流動性供給という中央銀行の基本的な役割を追求していくとの方針を示した。当面は感染症の影響を注視し、必要があれば躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和に踏み切ると語った。

講演後の質疑応答では、マイナス金利の深掘りについて「追加緩和の選択肢として排除しない」と述べた。雨宮副総裁は、マイナス金利の適用は日銀当座預金の限界的な増加部分に限られ、市中銀行が日銀に預けている当座預金全体では日銀がプラスの金利を払っていることに触れ、「マイナス金利が金融機関収益を圧迫するとの考えには若干の誤解がある」と指摘した。「金利の形状全体が金融機関経営に影響を及ぼしているのは事実」とする一方、金融機関の預貸利ざやは過去20年間、傾向として低下してきているとも述べた。

<政府と連携、役割分担>

雨宮副総裁は講演で、3月以降に打ち出した企業などの資金繰り支援・ドルや円の潤沢な資金供給・上場株式投信(ETF)の3本柱で、引き続き資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくと述べた。

コロナ危機に対し、日銀は政府と連携して政策を打ち出した。政府の国債増発を踏まえ、日銀は国債の購入上限を外し、積極的な購入スタンスを明確化した。雨宮副総裁は講演で、日銀の国債購入は「金融政策上の目的で行っているものであり、財政ファイナンスではない」と指摘。質疑応答では、将来的な利上げ局面で「財政収支の事情を勘案するかと言われれば、しない」と踏み込んだ。

企業のソルベンシー問題を巡る政府・日銀の役割分担について、雨宮副総裁は「ソルベンシーを意識した措置については、政府が、信用保証や資本性資金の供給といった制度を用意している」と指摘した。

<内外経済は「回復への移行局面」>

雨宮副総裁は講演で、内外経済について「回復への道筋がはっきりと見える状況には至っていないが、回復に向けた移行局面には入りつつある」と指摘。1990年代の日本の金融危機の後、長期間にわたり企業行動が慎重化したことを挙げ、「大きなショックは、企業や家計の成長期待を低下させ、支出行動を慎重化させるリスクがある」と述べ、今後の動向を注意深く見ていく必要があると話した。

質疑応答では、欧米の中央銀行と同じ2%の物価目標を変更しない考えを示した。「各国の中央銀行が方向感を共有して金融政策を運営するのは、長い目で見ると為替市場や金融資本市場の安定確保につながっていく」と述べた。その上で、経済と物価の関係や物価目標達成へのタイムフレームについて、不断の検討が必要だと述べた。

<中銀デジタル通貨、実証実験へ>

講演では、感染症の流行が決済システムの面でもイノベーションを促す可能性があると指摘した。中央銀行デジタル通貨について「将来必要になった時に的確に対応できるように準備する観点から、一段ギアを上げて検討を進めていく必要がある」と述べた。質疑応答で雨宮副総裁は、具体的な実証実験を行いながら検討していくと述べた。

*内容を追加しました。

(和田崇彦 編集:内田慎一、山川薫)

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