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アングル:「バイデン政権」、外交は内向きなトランプ流継承か

ロイター / 2020年8月30日 12時12分

 世界各地の元外交高官は、トランプ氏が米国の指導力への信任を大きく損なったと口をそろえる。大統領選挙でバイデン氏が勝利すれば、多くの外国政府が、10年以上前にジョージ・ブッシュ(子)大統領の時代が終わったときよりも大きな安堵の息をつくことになるとも指摘する。写真は20日、米民主党全国大会で演説するバイデン氏。デラウェア州ウィルミントンで撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)

[ワシントン/ロンドン 24日 ロイター] - トランプ米大統領は2016年に大統領選で選出が決まったほぼ直後から、喜々として、前任のオバマ大統領が注意深く作り上げてきた外交遺産をぶち壊す努力を始めた。

続く数日間で、数カ月、数年間で、トランプ氏はアジア太平洋地域の貿易の枠組みである環太平洋連携協定(TPP)を投げ出し、地球温暖化対策のパリ協定も、イラン核合意も、さらには何十年も続いてきたキューバとの敵対関係をようやく終わりにするプロセスさえ、放り出してきた。

トランプ氏はドイツ政府から日本政府に至る長年の同盟国に対しても公然と攻撃し、一方でロシアのプーチン大統領から北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長まで、独裁支配者を褒め讃えた。ただ、中国の習近平主席に対しては称賛を重ねたあげく、中国政府との貿易戦争と非難の応酬に乗り出し、新たな冷戦の懸念や、軍事的衝突の懸念さえ誘発している。

世界各地の元外交高官は、トランプ氏が米国の指導力への信任を大きく損なったと口をそろえる。今年11月3日の大統領選挙でバイデン前副大統領が勝利すれば、多くの外国政府が、10年以上前にジョージ・ブッシュ(子)大統領の時代が終わったときよりも大きな安堵の息をつくことになるとも指摘する。

元高官らは、民主党政権に代わればオバマ政権時を思わせる政策への回帰に向けて素早く行動が起こされると期待する。まずはパリ協定への復帰だ。

しかし、トランプ氏が世界中に不快感を与えたのは確かだが、同氏のすべての政策の遺産が一気に窓から投げ出されるわけではないし、昔からの同盟国も戦略的なライバル国も、上院議員としても長年外交政策に精通してきたバイデン氏がお手柔らかに接してくれることは期待していない。トランプ氏が標榜した「米国第一主義」によって具現化された米国の内向き志向が、大きく変わるとの期待もしていない。

フランスの元駐米大使ジェラルド・アラウド氏は「われわれはまさに、中国やロシアとの力の外交の枠組みの中で、米国の新たな外交政策を明確にするという移行期にいる。これはまさに新しい世界だ」と話す。「米国の大統領たちはこれから、米国自身の国益へのコミットメントを強めていくだろう。米国はもはや世界の警察官でありたくないし、このことを実はオバマ氏もトランプ氏も理解していると思う」という。

<トランプ氏の中国戦争>

トランプ政権は中国については最近、新型コロナウイルスの発端から情報窃取疑惑に至るまで幅広い問題で攻撃色を強め、懸念を引き起こしてきた。しかし、バイデン政権が誕生しても、対中政策となれば実質的な変化は少ないとの見方は広く共有されている。

実際のところ、トランプ氏がオバマ氏とバイデン氏について中国に「弱腰」とレッテルを貼ろうとしてきた一方で、オバマ政権は当初、トランプ政権よりも強硬な対中姿勢を追求していたのだ。

元米国防総省当局者で中国専門家のマイケル・ピルズベリー氏は一時、トランプ政権の外部アドバイザーも務めたが、同氏によると、オバマ政権の最後の2年間に対中戦略は変わっていたという。

ピルズベリー氏によれば、バイデン氏の外交アドバイザーの面々、即ちエリー・ラトナー氏、カート・キャンベル氏、ブライアン・マッケオン氏、トニー・ブリンケン氏、ボブ・ワーク氏、アッシュ・カーター氏はいずれも、かつて中国について厳しい分析をしてきたし、中国の軍事的増強や情報窃取活動や貿易慣行について深い懸念を共有していた。

キャメロン元英首相の国家安全保障顧問を務めたピーター・リケッツ氏は、トランプ氏の中国政策を一部は評価するとしつつも、懸念も口にする。「トランプ政権は、中国政府のひどく強引な外交政策や国内で反体制派と見なした者たちへの弾圧などの振る舞いについて、膨れ上がる懸念を具体的な形にした。トランプ政権が進んで中国の前面に出て、そうした振る舞いを問題にする、つまり声高に非難しようとしたのは良いことだ」というのが同氏の評価。ただ、トランプ政権のそうした姿勢が今や行き過ぎてしまい、中国と全面対決の冷戦モードに突き進みかねないリスクがあると指摘する。

過去に英首相3人の外交顧問だったトム・フレッチャー氏によると、バイデン政権になっても対中政策が大きく変わるとはみていないが、摩擦は避けるスタイルになるだろうという。「バイデン氏の対中政策がトランプ氏の政策からかけ離れたものになるとは思わない。ただ、使われる文言は変わるだろうし、もっと分別や戦略に裏打ちされた文言になるだろう」。

対北朝鮮外交については、トランプ氏による前代未聞の、しかしなおも実を結んでいない同国への関与が、将来的には米朝関係の基礎になる可能性があるとの分析も聞かれる。

<失われた米国の信頼>

欧州連合(EU)の元駐米大使デービッド・オサリバン氏は、トランプ氏が外交に「壊滅的な打撃」をもたらしたとし、米国のイメージと指導的役割の再建には時間がかかるとみる。

しかし、オサリバン氏は、自国が海外にこれほどまでに関与する必要があるのかと懸念を深める米国人がいることや、一部同盟国が役目を果たしていないと感じる米国人がいることにも言及。こうした中で「トランプ氏が大統領選で負けても、欧州で涙を流す者はいないだろう」と手厳しい。トランプ政権は「とりわけ能力に欠け、不手際で、率直に言って同盟国と疎遠になり、それまでは敵対者と見なされていた国を安心させる傾向があった」と指摘する。

ただし、オサリバン氏は、バイデン政権が欧米協調の黄金時代を目指すとの幻想を持つ者もいないと警告する。「欧州と米国の食い違いはこれからも続く。ただ、われわれは相互に敬意を払うということから始めることはできる」という。

オサリバン氏らによると、バイデン氏がイラン核合意やTPPへの復帰を目指す可能性は高いが、その場合も、トランプ氏がしばしば口にしたような「より有利なディール」を確実にするような取り決めの改変は必ず求めてくるだろうという。

ブッシュ政権で国務省報道官、オバマ政権でバーレーン大使だったアダム・エレリ氏は、欧州勢などの脳裏にあるのは「トランプ的な外交が結局、再現されることになるのだろうか」という思いだと指摘した。

(David Brunnstrom記者、Humeyra Pamuk記者、Luke Baker記者)

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