マイナス金利解除でどうなる?「金利のある世界」と上手にお付き合いする方法
オールアバウト / 2024年4月3日 12時20分
日本銀行がマイナス金利を解除しました。日経平均は上昇を続けており、4月以降も上昇が期待できる状況です。「金利ある世界」に頭を悩ます方も多いかと思いますが、一気に利上げは行われませんので、「支払いの許容度」を把握しておけば怖いことはなんらありません。
日経平均は史上最高値更新「未踏の極地」へ
2024年の年明けからの外国人投資家などの怒涛の買いによって、日経平均株価は史上最高値を更新、4万円台の水準もつけるなど、東京市場は、「未踏の極地」に入り込んでいます。3月に入って公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によるものと見られる売り(年金は一定の運用ルールに基づいて運用しなくてはいけないため、決められた運用割合を超えた場合、調整(売り)しなければならず、例年年度末にその売りがでる)も一巡し、4月からは新年度相場入りすることから、また上昇も期待できるところです。
特に4月は、年金のリバランスに伴う売りも一巡が期待できるほか、伝統的にも外国人投資家が買いを入れるケースが多いことから、日経平均の一段高に期待できるでしょう。
日銀はマイナス金利の解除を決定、脱デフレ宣言も間近か
さて、3月は日本銀行の金融政策決定会合で歴史的な決議が行われました。「マイナス金利(※1)の解除」が決定し、17年ぶりの利上げ(※2)を実施したのです。(※1)マイナス金利……民間の金融機関が日銀に預金する時に金利がマイナスになる、つまり預ける側が日銀に金利を支払わなければならないもの(預金よりも投資を促し、デフレ脱却・経済活性化を目指す政策)
(※2)利上げ……中央銀行による政策金利を引き上げる金融政策。景気が加熱傾向にある時、引き締めを目的とする
「利上げ」という言葉自体、この20年ほど馴染みがなかったと思いますが、マイナスだった金利を0%水準に引き上げただけですので、「利上げ」というよりも「正常化」という表現が適切だと思います。まぁ、金融政策の正常化に踏み出したことに変わりありません。ようやく日本に「金利ある世界」が戻ってきたのです。
春闘の結果、大企業だけではなく中小企業の賃金が上昇したほか、日本の地価も上昇するなど、「物」の値段が当たり前のように上昇する時代が訪れました。この20年超続いていた日本円をそのまま保有していれば得した「デフレ」の時代から、日本円をそのまま預貯金で持っているだけでは損をする「インフレ」の時代が到来したのです。
急激な利上げを行う予定はなし
ただ、日本が毎月利上げを行う時代が来たわけではないことを正しく理解しなくてはなりません。植田和男日銀総裁など日銀関係者は、「金融緩和はしばらく維持する」ことを明言しています。つまり、利上げを一気に実施する予定は今のところないとの見方です。つまり、私たちの銀行預金の金利や住宅ローンの金利の上昇は段階的で、一気に上がることはなさそうだ、ということです。
投資家向けセミナーを頻繁に行っていると、「変動金利で組んでいる住宅ローンを固定金利にしたらいいか?」といった質問をよく受けます。私は一貫して「日銀は一気に利上げを行う予定はありませんが、数年にわたって金利は段階的に引き上がるでしょう。そうなった場合、先々の不透明感がリスクと考えるのであれば、不透明感が払しょくできる固定金利で安心してはどうですか?」と答えています。
金融に関するリスクは人それぞれ
金融に関するリスクは、人それぞれ全く異なります。ちなみに、私は変動金利の住宅ローンのままで放っておいています。仮に金利が1%上がっても、月間の支払いにさほど影響しないからです。どこまで許容できるか(支払いのバッファ)を明確にわかっておけば、先々の不透明感はほぼ払しょくできるでしょう。不透明感が解消されれば、おのずと安心感に置き換わりますので、まずは「支払いの許容度」を明確に理解しておきましょう。そんな難しい話ではありません。仮に1年後に金利が1%上がった場合、5年後には3%上がった場合を想定してシミュレーションを作るだけです。今回の想定は、変動金利の住宅ローンですが、詳細のシミュレーションを作りたい方は、住宅ローン契約先の金融機関に相談するのが確実です。
さぁ、投資に回せる資金があればNISAの出番
そして、「支払いの許容度」を理解した後、投資に回せる資金があることも把握できたら、少額投資非課税制度(NISA、ニーサ)を利用した長期投資を検討してみてはどうでしょうか? 日銀が段階的な利上げを想定していないので、長期的な期間で株式に投資するメリットは十分あると考えます。個別の投資に関しては、大枠だけお話しておきます。NISAのつみたて投資枠は、「高配当利回り銘柄」「不動産投資信託(REIT)」「海外インデックスファンド」、成長投資枠は「テンバガー狙いのグロース銘柄投資」が基本と考えます。このように考える理由は次の機会に解説するとします、よしなに。
文:田代 昌之(金融文筆家)
新光証券(現みずほ証券)やシティバンクなどを経て金融情報会社に入社。アナリスト業務やコンプライアンス業務、グループの暗号資産交換業者や証券会社の取締役に従事し、2024年よりフリー。ラジオNIKKEIでパーソナリティを務めている。
(文:田代 昌之(金融文筆家))
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