舞台はNYの日本人高級クラブ…秘密の恋に溺れる女を描いた『MAKI マキ』
ananweb / 2018年11月16日 18時30分
人生では居場所を見失ってさまよってしまうこともありますが、女性として自立するうえではそういう経験もときには必要なこと。そこで、今回ご紹介するのは、愛に翻弄されながらも成長していく女性を描いた話題作です。それは……。
■ NYの日本人コミュニティが舞台の映画『MAKI マキ』!
【映画、ときどき私】 vol. 200
ニューヨークにある日本人高級クラブでホステスとして働くマキ。英語も話せないままアメリカ人の彼氏を追いかけて日本を飛び出したが、いまはクラブのボーイであるトミーと同棲していた。クラブ内での恋愛は禁止されていたため周囲には秘密の関係。しかし、マキはトミーとの子を妊娠していたのだった。
そんなマキの異変に気が付いたのは、クラブのママでもあるミカ。トミーに不信感を募らせ、動揺していたマキをいたわり、優しい言葉をかけていたが、実はミカにはある思惑があった。はたして、マキの運命はどうなってしまうのか……。
ananweb読者たちと同世代の女性が主人公ということもあり、興味を持っている人もいるかと思いますが、今回は本作の舞台裏などについて、こちらの方にお話を聞いてきました。それは……。
■ イラン出身のナグメ・シルハン監督!
新鋭女性監督として注目を集めているシルハン監督ですが、本作が長編2作目。これまで日本に10回ほど来たこともあるという日本通の監督から見た日本の魅力や撮影秘話などについて、語っていただきました。
―今回は日本人女性が主人公で、アメリカの日本人コミュニティが中心に描かれていますが、このストーリーはどのようにして生み出されたものなのでしょうか?
監督
私自身がイラン出身のアメリカ育ちということもあり、アメリカに住んでいる外国人の気持ちがよくわかるというのがまずありました。あとは、昔から日本映画が大好きで、日本の文化にも興味があったので、「これを映画の題材にすれば、もっと日本に触れることができるんじゃないか」と思ったんです。
―そういった思いもあって、あえてアメリカに住むイラン人ではなく、日本人を描こうと思ったのですか?
監督
1作目でカナダに住むイラン人の物語を撮っていたこともあり、同じようなものを作るのはおもしろくないなと感じていたというのもありますね。そのうえ、アジアのなかで、私にとって一番興味があったのが日本。自分で研究することによって、とても勉強になると思いましたし、私はチャレンジすることが大好きなんです。
―同じ異国に住む女性として、マキに自身の経験などを反映したところはありましたか?
監督
半分くらいはそういう部分もありました。でも、マキのように「自分が何をしたいのかわからない」といった経験はみなさんもしているんじゃないでしょうか? それは海外か自分の国に住んでいるかは関係なく、そういう思いを抱いている人はたくさんいるはずです。
■ 権力を振りかざす女性は世界中どこにでもいる
―原田美枝子さんが演じるクラブのママであるミカは、権力で他人を支配するような女性でしたが、モデルになった人もいたのでしょうか?
監督
ママさんみたいな人はいろんなところにいますよね(笑)。リサーチのために日本のホステスクラブにもたくさん行き、いろいろな方と出会いましたが、こういう女性はけっこういるんだなと思いました。「こういう女性」というのは、50代、60代で権力を振りかざしていたり、「権力者になりたい」と思う女性のことですが、日本だけでなく、どこに行ってもいるものですよ。
私が昔住んでいたイランやイタリア、フランス、そしてアメリカで出会った数々の女性をイメージして書きました。だから、私も人生ではたくさんのママさんに会っていますね(笑)。ちなみに、フランスにいたときにあるプロダクションの会社で働いていましたが、そこのボスが女性で本当にママさんと同じような動作や話し方をする人でした。それから、そういう女性はなぜかだいたい若い男の子が好きなんですよね(笑)。
―では、世界中にいるミカのような女性を集結して描いたんですね(笑)。
監督
そうですね。だから、ある意味この作品は、ママさんのような女性に対するリベンジみたいなものかもしれないです(笑)。でも、私はこの作品のミカは好きなキャラクターなので、嫌いではないですよ。
―私も海外に留学していたときに、どの国にも日本人のコミュニティがあることを知りましたが、監督の目にはどのように映っていましたか?
監督
日本人はコミュニティという名の“巣”を作って、そのなかに集まっているという印象を受けました。たとえば、アメリカのホステスクラブにいる日本人女性のなかには、2~3年アメリカにいても英語がしゃべれない人もいましたが、巣のなかにいるだけで外のことを知らずに帰国する人もいるんですよね。そういう人たちは、いったいどういう利益を求めて海外にいるんだろうと思いながら、見ていたこともありました。
■ 今回の撮影で日本人の心に近づくことができた
―以前、監督はニューヨークで日本人コミュニティと親しくしていたこともあったそうですが、その際に驚いたことなどがあれば教えてください。
監督
一番印象に残っているのは、グループのなかに入ろうとしても、日本人以外はなかなか入れないようなところがあることですね。でも、この映画を作るにあたって日本人のエキストラの方もたくさんいたので、この作品のおかげで少しずつ日本人の心に近づいていくことができたと思います。
―ちなみに、イラン人のコミュニティというのは、どのようなものですか?
監督
もちろんイラン人コミュニティもどこにでもありますし、同じように自分たちだけで固まって、楽に感じている人もいますよ。だから、これは日本人特有なことではないと思います。
―監督は日本がとても好きだということですが、師匠であるアミール・ナデリ氏の影響で日本に興味を持ち始めたのですか?
監督
ナデリ監督に会う前から、日本の映画をたくさん観ていましたし、日本の音楽も聴いていたので、日本にはとても興味がありました。なぜ日本に惹かれたかというと、非常に深いところで物事を見ていて、芸術的にも繊細であるにも関わらず、ひけらかすことなくすごく控えめで、デリケートなところを感じたからです。
―今回、日本のキャストたちと仕事をしてどのように感じましたか?
監督
まず、ミカ役の原田美枝子さんとお仕事ができることはとても光栄なことであり、とても楽しみなことでもありました。というのも、以前の作品でも、今回の作品でも、出演者はほとんど素人で、原田さん以外はプロの俳優が少なかったからです。
だからこそ、「偉大な監督たちとお仕事をしている原田さんと一緒にできるんだろうか」みたいなことを思ったりもしました。でも、原田さんはとても素晴らしい方なので、現場ではたくさんのことを学ぶことができたと思います。
■ 原田さんがいたからこそ、この作品ができた
―確かに、ベテランである原田さんが存在するだけで、そのシーンに緊張感が走って重みを増すような感じはありました。
監督
劇中では舞台のような雰囲気を感じる場面もありましたが、それは原田さんの大きな存在感があったからこそ。彼女のパワーのおかげでそういったシーンを撮ることができたと感じています。
今回、原田さんには事前に脚本も読んでもらいましたが、最初から参加すると言ってくださいました。そのあと、出資集めやキャスト選びに時間がかかり、撮影に入るまで1年近く間が空いてしまったのですが、原田さんは一度もやめると言うこともなく、ずっと待ってくださったのです。
それは私にとっては大きなことでしたし、一番のいい思い出でもあります。原田さんがいたからこの作品ができたところもあるので、まるで天使のような存在でした。絶対に良い映画になると信じてくれた原田さんのおかげで、とても心強かったです。
―マキ役のサンドバーグ直美さんとトミー役のジュリアンさんは長編映画初だったそうですが、キャスティングしたきっかけを教えてください。
監督
まず、マキとトミーはセットで考えないといけないと思っていました。つまり、何よりもこの2人のケミストリーが合わなければ、すべてが壊れてしまうと感じたからなんです。
今回は先にジュリアンと会いましたが、そのときに「あなたに合いそうなお友達はいない?」と何となく聞いたところ直美を呼んでくれました。その後、2人と初めてカフェであった瞬間、「この2人だ!」と確信してお願いすることにしたんです。
■ ポルノ映画と勘違いされて追い出されそうになった(笑)
―今回は、低予算ということもあり、短期間の撮影では難しいことも多かったと思いますが、一番苦労したのはどんなことでしたか?
監督
クラブでの撮影はとにかく大変でした。というのも、本物のホステスクラブを借りていたので、私たちが撮影することができたのは営業以外の時間でのみ。そのため、営業が終わる朝5時に入って、夕方の6時までに終わらせないといけなかったので、セッティングしては元に戻すというのを毎日繰り返していました。それが本当にきつかったですね。
あとは、マキが別荘に行くシーンも、1本分の映画と同じような内容を3日間で撮らないといけなかったので、違う意味で大変だったシーンです。とはいえ、全部大変でしたね……。
―そのなかで、何かハプニングが起きたりしたことはなかったですか?
監督
実は、マキのアパートは友達から借りていたのですが、そこのオーナーがポルノ映画を撮っていると勘違いして、追い出しにきたことがありました(笑)。どんなに違うと言っても、わかってもらえず、毎日のように言われ続けて大変でしたね。原田さんもいたので、とても恥ずかしかったです。
■ 「絶対に負けない」という気持ちを受け取って欲しい
―この作品を通じて、ananwebを読む日本の女性たちにも感じて欲しいことがあればメッセージとしてお願いします!
監督
若い人たちに伝えたいのは、がんばればどんな願望も手に入れられるんだという勇気を与えられる映画だということ。それは「絶対に負けない」という思いを持ったマキやトミー、そしてミカからも感じることだと思いますが、カメラの後ろにいるスタッフたちも同じような気持ちでこの作品を作ったので、そういうところはみなさんにも感じて欲しいと思っています。
■ 女性の持つ強さを感じずにはいられない!
大人の女性として新たな一歩を踏み出すことの大切さを感じさせてくれる本作。欲望と孤独が渦巻く大都会ニューヨークで、愛を求めて生きる女性の姿に、思わず自分を重ね合わせてしまう人もいるはずです。
■ それぞれの思いが交差する予告編はこちら!
■ 作品情報
『MAKI マキ』
11月17日(土)より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー
配給:ユーロスペース
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