PowerShellの今を見る 2つあるPowerShellはどっち使えばいい?
ASCII.jp / 2024年3月17日 10時0分
PowerShellに関しては、2021年に1回まとめたのだが、あれから3年も経過したので最新情報も含めて、簡単に解説したい。なお、それぞれのこれまでの経緯などは、過去記事に記載しているので参考にしてほしい。
●あらためて「PowerShell」の現状と登場後の経緯を整理する https://ascii.jp/elem/000/004/052/4052789/
結論から言えば、PowerShellには、Windowsに同梱されている「Windows PowerShell」と、ユーザーがインストールする必要がある「PowerShell」がある。コマンドラインを使う頻度が高いようならば、最新のPowerShellをインストール、そうでなければWindows PowerShellで十分である。
PowerShellのインストーラーなどに表示される奇妙な人物イラストを見たことがある人もいるだろう。これはPowerShellのマスコットらしい(PowerShell Digital Artにアメコミ調のコミックがあり、マーベルっぽいヒロインだ)。 。
PowerShellの前提となる「.NET」とは?
PowerShellの解説をするには、まず「.NET」についての簡単な理解が必要になる。「.NET」とは、アプリケーションの開発、実行環境で、現在のWindowsソフトウェア開発の主流になっているものだ。
過去に作られたアプリケーションを含めれば、機械語のアプリケーションの方が多いと思われるが、現在も開発されているアプリケーションに着目すると、「.NET」の利用が多いと思われる。.NETについても過去にこれまでの経緯をまとめた。
●あらためて「.NET」について整理する https://ascii.jp/elem/000/004/051/4051022/
「.NET」には、「.NET Framework」と「.NET Core」(略して.NETと呼ぶ)の2種がある。.NET Frameworkが最初に作られ、Windows VistaからWindowsに同梱されてきた。
.NET Frameworkの最新版は、.NET Framework Ver.4.8.1で、Windows 11にも搭載されている。.NET Frameworkは、今後メジャーアップデートすることはなく、今後のWindowsにも4.8.xが同梱される。セキュリティ/バグフィックスのアップデートはあるが、最新機能への対応などは、後継とされる.NET Coreが担う。
.NET coreは、現在では単に.NETと呼ばれる。この記事では、.NETと.NET Frameworkを総称するときは、カッコ付きで「.NET」と表記している。.NETはオープンソースで開発され、現在では、毎年11月にアップデートされている。3年(36ヵ月)のサポート期間を持つLTSと、18ヵ月(1年半)のサポート期間のSTSを1年ごとに交互にリリースする。なお、リリースには、実行環境だけの「.NETランタイム」と、開発環境を含む「.NET SDK」の2つがある。
最新版の.NET 8(Ver.8.x)は、2023年11月に出荷され、LTSのため、2026年までサポートされる。原稿執筆時点では、.NET 7(Ver.7.x)が今年5月まで、.NET 6が今年11月までサポートされている。
このように最低でも複数の.NETバージョンが利用できるが、それぞれサポート期間があり、実行環境としては、継続的にアップデートしなければならない。ただし多くの場合、アプリケーションをインストールするときに、自動的にランタイムがインストールされるため、ユーザーは特に意識する必要はない。また、インストールされた.NETは、Windows Update経由でアップデートされる。
以下の表に.NET Frameworkと.NET Coreのこれまでのバージョン履歴を示す。
PowerShellと.NETの関係
PowerShellには、Windowsに同梱されている「Windows PowerShell」と、以前はPowerShell Coreと呼ばれていた「PowerShell(Core)」の2つがある。違いは、Windows PowerShellは、.NET Frameworkを使って開発されているのに対して、PowerShellは、.NET Coreを使って開発されていることにある。以下の表は、Windows PowerShellとPowerShellのバージョン履歴である。
また、PowerShellは、以前には「PowerShell Core」と表記されていたが、2021年に.NET Coreが.NETになったタイミングで、PowerShellと表記されるようになった。また、2021年以前の古い記事では、Windows PowerShellをPowerShellと略記していることがあるので注意が必要だ。
「Windows PowerShell」とPowerShellの最大の違いは、対応している「.NET」の違いである。また、Windows PowerShellは、Windows Updateで更新される(必ず更新されるわけではない)。これに対して、PowerShellには、複数のインストール方法があり、更新方法もインストール方法ごとに異なる。
対応する「.NET」の違いは、PowerShellスクリプトの微妙な互換性に影響する。同じオブジェクトのメソッドでも、「.NET」のバージョンにより動作が異なる。特に.NET Frameworkと.NETでは、非互換性が生じることがある。
というのも、PowerShellでは、「.NET」のオブジェクトを利用し、そのプロパティやメソッドを自由に呼び出せるからだ。このとき、.NET Frameworkで作られたWindows PowerShellは、.NET Frameworkのオブジェクトを扱い、.NETで作られたPowerShellは、.NETのオブジェクトを扱う。このため、同じ文法、同じステートメントでも、呼び出される「.NET」に違いが生じる。
例えばPowerShellの文字列は、.NET Framework、.NETのSystem.Stringクラスのオブジェクトだ。.NET Frameworkと.NETのStringクラスには違いがあり、.NET 8ではメソッドなどが追加されている。たとえば、.NET FrameworkではSplitメソッドが6個(引数のパターンが異なる)しかないが、.NET 8には8個ある。これは、Microsoftのページに記述がある。
●.NET Frame 4.8.1 String クラス https://learn.microsoft.com/ja-jp/dotnet/api/system.string?view=netframework-4.8.1#methods ●.NET 8 String クラス https://learn.microsoft.com/ja-jp/dotnet/api/system.string?view=net-8.0#methods
PowerShellで利用できる文字列のSplit()メソッドは、PowerShellが「.NET」のメソッドを呼び出しているだけである。つまり、SplitメソッドはPowerShellではなく「.NET」の範疇にあり、その挙動はPowerShellの埒外にある。
このためスクリプトを書く場合に互換性を高めるには、できるだけPowerShellの文法内で記述する必要がある。たとえば、文字列の分割ならPowerShellの分割演算子「-split」を使う。ちなみに「-split」はRegexクラスのSplit()メソッドを使って実装されている。
PowerShellのインストール
PowerShellを今インストールするなら、最新版は.NET 8を使うVer.7.4となる。しかし、.NET 7を使うPowerShell Ver.7.3やその前のVer.7.2の方が、利用されている期間が長く、さまざまなバグが修正されていて“枯れている”といえる。大部分のソースコードは、前バージョンのものを使うため、新しいからといって枯れていないわけではないが、新規に追加・修正した部分があり、その部分の実績は新しいものほど短いものになる。
ただし、“枯れ”具合は、PowerShellをよほど使い込んでいないとわからないだろう。とはいえ、運が悪いとバグに行き当たることもある。どれにするかはご自分のリスクで判断していただきたい。なお、.NETが毎年11月にバージョンアップするため、PowerShellも毎年11月をメドにバージョンアップが行われる。
PowerShellは、winget、Microsoftストア、DotNetSDKからインストールが可能で、そのほかZIPファイル、MSIファイルをGitHub(https://github.com/PowerShell/PowerShell/releases)などからダウンロードして手動でインストールする方法がある。
このうち、推奨されるのは、winget経由でのインストールである。原則アップデートは、インストールと同じ方法でする必要があり、Wingetの場合、「ピン留め」機能で、バージョン固定やアップデート禁止などができるため制御がしやすい。
なお、Microsoftストアからのインストールは可能だがお勧めできない。Microsoftストアからインストールしたアプリは、原則インストール先フォルダへのアクセスが制限されるため、本格的な利用には向いていないのだ。
Wingetでは、インストールしたプログラムのアップデート(Upgrade)を制御する「ピン留め」がサポートされており、これを使って、特定のPowerShellを継続して使うことができる。ピン留めすることで、wingetのUpgradeサブコマンドの対象から除外される。詳しくは、過去記事(「Wingetにおける安定版v1.14からプレビュー版v1.16での新機能」)を参照してほしい。
また、PowerShellでは、安定版とプレビュー版は同時にインストールすることができる。
どのPowerShellを使うかは悩ましいところだが、システム管理などで複数のマシンで実行させるようなスクリプトを作らなければならない立場なら、インストール不要で仕様の安定しているWindows PowerShell上で開発し、余裕があればPowerShellでもスクリプトを検証しておくべきだろうか。
使い分けるのが面倒なら、選択は管理対象のマシンや実行環境とご相談といったところだが、まだWindows PowerShell一本槍でも構わないと思う。少なくとも緊急時にインストール不要でスクリプトを実行できる。利便性を取るか、安全性を取るかといったところか。
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