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格安スマホ、キャリアより「シンプルで安い」とふたたび注目

ASCII.jp / 2024年4月3日 17時0分

写真はイメージ

 2024年、実は日本で「格安スマホ(格安SIM、MVNO)」が生まれて10周年になろうとしている。

 そもそも「格安スマホ」は、2014年、大手スーパーのイオンが、日本通信のSIMカードと、とある倉庫に在庫として眠っていたLGエレクトロニクス製「Nexus 4」を組み合わせ、月額2980円で売り出したのが発端だ。割安なスマートフォンとして爆発的に売れるなか、「MVNO」ではわかりにくいということで、某メディアが「格安スマホ」と命名したところ、一気に市民権を得たというわけだ。

「ahamoショック」からMVNO復活説

 かつて「格安スマホ」といえば、IIJmioやmineoなどキャリアから通信回線を借りてサービスを提供する、いわゆる「MVNO」が中心であった。しかし、MVNOにユーザーを獲られまいとソフトバンク「ワイモバイル」、KDDIが「UQモバイル」といったようにサブブランドを強化。ユーザーの獲得合戦が始まった。  2020年頃までMVNOはユーザーを順調に伸ばし、シェアも拡大していったが、急ブレーキがかかったのが2021年春だ。NTTドコモが月額3000円程度で20GB使える「ahamo」を投入。これにより、MVNOはシェアで10%を下回るようになってしまったのだ。

 MVNO業界内では「ahamoショック」として、ここ数年、停滞感が漂っていたが、ここに来て「MVNO復活説」が出始めている。

 根拠としてあるのが、2023年12月のガイドライン改正だ。実は2019年のガイドライン改正により、MVNO業界でトップ2であるIIJmioとmineoに対して、MNOであるNTTドコモやKDDI、ソフトバンクや楽天モバイルと同様の規制がかかっていた。これにより、端末割引や長期割引施策が自由にできないなどの制約が存在したのだ。

 しかし、2023年12月にガイドラインが改正となり、MVNOの2社に対する制約は解除となった。これにより、いち早く動いたのがmineoだ。長期ユーザー向けの優遇プログラム「ファン∞とく」を改定し、長期契約ユーザーに優しい内容に復活させている。

 ガイドラインの見直しにより、大手MVNOの競争力が増しており、MVNO業界全体で見ても追い風であるのは間違いない。

「irumoショック」それほど大きくなかった?

 MVNO業界にとって、ahamoショックに続いて逆風と言えそうなのがNTTドコモによる低容量プラン「irumo」の開始だろう。

 NTTドコモはNTTコミュニケーションズを完全子会社化するなか、MVNOサービスを提供していたOCNを取り込んだ。その後、2023年にはOCNの料金プランを一部、ベースとした新料金プラン「irumo」を開始している。

 irumoの開始で最も影響を受けたのではないか、と見られていたのがフリービットが手がける「TONEモバイル」だ。

 TONEモバイルは、NTTドコモが低容量プランが手薄だった2021年に、「エコノミーMVNO」として、ドコモショップで取り扱われるようになっていた。 

 NTTドコモとしては当時、「ギガホ」「ギガライト」をメインにしつつ、小容量はエコノミーMVNO、シンプルでオンラインに特化したプランとして「ahamo」をラインナップしていた。

 TONEモバイルとしては、全国のドコモショップで取り扱ってくれるということで、一気にシェアを拡大できると目論んでいたが、irumoの登場により、存在感がなくなったように“メディアからは”見えていた。

 しかし、TONEモバイル関係者によれば「irumoが始まっても、あまり影響は受けていない。TONEモバイルは指名買いで、お客さんがドコモショップに訪れている」というのだ。

 実際のところ、NTTドコモがirumoを扱い始めたが「ショップ店員からすると、irumoなどは光回線やクレジットカードなどを組みあわせて安くなるプランであり、客に対しての説明が面倒で手離れが悪い。その点、TONEモバイルはそうした説明が不要で安いということで、ショップ店員さんから喜ばれている」というのだ。

 ここ最近、キャリアショップはショッピングセンターに出店を出して顧客の勧誘をしている。買い物途中の客を引き留め、新規契約させるには、とにかく「説明不要で手離れのいい商材」が求められているのだ。そこにTONEモバイルはマッチするというのだ。

キャリアは「経済圏争い」で複雑な料金プランに

 ここ最近、MNOによる「経済圏拡大競争」が過熱している。

 第4のキャリアとして楽天モバイルが参入したことで、既存の3社はポイントを軸とした「経済圏の拡大」に躍起だ。

 直近でも、NTTドコモが月額2200円を支払うオプションを契約することで、キャンペーン期間中に限ってd払いのポイントが10%還元となり、月間最大4000ポイントまでもらえる「ドコモポイ活プラン」の提供を始める。

 また、auはauじぶん銀行やauカブコム証券の口座を持ち、利用することでトクになる「auマネ活プラン」を開始。ソフトバンクもPayPayのポイント還元が増える「ペイトクプラン」を始めている。

 いずれも単なる料金プランではなく、スマホ決済サービスなどを組み合わせて初めて、お得になるプランであり、ある程度、ユーザーの理解力が求められる。キャリアショップとしては「売りにくい」のは事実であり、逆にMVNOのようにシンプルでわかりやすくて安いプランが現場では求められているというわけだ。

値上げ基調のなか、“シンプルで安い”MVNOに再び脚光

 NTTドコモやKDDI、ソフトバンクは、金融商品と通信料金を連携させたプランにシフトしているが、いずれも「値上げ基調」になっている傾向がある。

 2020年の菅政権による「圧力値下げ」により、通信料収入が大きく落ち込み、ようやく復活しつつあるタイミングだけに、機会を見て「値上げ」に持って行きたいというのが本心だ。

 そんななか、MVNOに対しての「接続料」はいまだに値下げ基調が続いており、MVNOにとってはコストである接続料が下がることで、安価なプランを維持しやすいという状況になっている。

 ここ数年、ahamoショックで元気のなかったMVNOだったが、ここに来て「シンプルで安い」という魅力が改めて見直され、MNOからユーザーを奪える環境が整いつつあると言えるだろう。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

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