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中古バイクの「メーター巻き戻し」疑惑 リセールバリューに直結する大問題はどうやって解決されている?

バイクのニュース / 2024年4月18日 11時10分

古くて新しい中古バイクの「メーター巻き戻し」疑惑。クルマでは制度上ほとんど解決された昔話ですが、バイクの場合は現在進行形の疑惑として取りざたされることがあります。とくに車検が無いバイクは、届出しているのになぜクルマのように疑惑を払拭できないのでしょうか。バイク業界の動きを追いました。

■なぜバイクでは「メーター巻き戻し疑惑」を根絶できないのか

 人気不人気を問わず、中古バイクの価値は年式(モデルイヤー)と初度登録年月、そして走行距離の3つの要素が大きく影響します。

速度計や距離計にメーターケーブルを使っていた時代のバイクなど、中古バイク市場では「メーター巻き戻し」疑惑が残る速度計や距離計にメーターケーブルを使っていた時代のバイクなど、中古バイク市場では「メーター巻き戻し」疑惑が残る

 新しい年式のモデルには、それだけ新しい技術が盛り込まれて、部品供給も豊富です。初度登録年月と走行距離を見比べるだけで、前のオーナーの乗りこなしぶりが伺えます。

 初年度登録が新しいのに思った以上に距離が延びている場合は、かなりヘビーローテーションで乗り回していたのでしょう。また、走行距離が延びた車両は消耗部品の交換時期とも考えられ、取り替えなどメンテンナンスを確認する必要があるかもしれません。

 年代物のバイクの価格が高騰する前から、例えば「新古車」や「デッドストック」などの言葉がありましたが、年式が古いのに走行距離が短い、倉庫に眠っていた「掘り出しモノ」などという話になれば、古くてもエンジンや車体に負荷がかかっていないから価値(価格)も高い、ということになります。

「走行メーターの巻き戻し」は、この重要な指標から生まれる価値に付け込んで行なわれているのです。

 最近のバイクは巻き戻しが簡単にできないような対策も行なわれています。ただ、アナログ式に数字のコマが歯車で動くような古い車両は、わりと簡単に巻き戻しが可能な場合があります。

 また、わざわざ手を加えなくても、事故や故障、カスタム等でメーターをまるごと交換することも、バイクでは珍しいことではありません。

 メーターを巻き戻す、または取り替えることで、長距離を走った車両も一瞬にして書き換えることができることになってしまいます。

■市区町村の届出データがバラバラ……初度届出年月すらわからない

 自動車公正取引協議会では、メーター巻き戻しによって実際よりも少なくなったkm数を現在の走行距離数として表示することは不当表示として禁じていますが、実はこうした事例はクルマでもあり、過去に何度も事件化しています。

 それがなぜ中古バイクではいまも話題になるのか……それは車検制度と大きな関係があります。

車検証には、車検を受けた時の走行距離が、過去2回にさかのぼって記載されている車検証には、車検を受けた時の走行距離が、過去2回にさかのぼって記載されている

 メーター巻き戻しが社会問題化し、車検証に走行距離が記載されるようになりました。車検証の記載距離よりメーター表示距離が短い場合は、メーター表示の改ざん、またはメーターの変更があった「走行距離減算車」と呼ばれます。

 車検が必要な車両は、クルマだけでなくバイクでも、車検証に車検を受けた時の走行距離が過去2回にさかのぼって記載されています。そのため走行距離減算車は、誰でもわかります。

 しかし、車検制度の無い原付と軽二輪の中古バイクは、所有者であってもメーターに表示された距離を検証することができません。

 車検が無くても、バイクユーザーは地方自治体に必ず届出し、課税標識(ナンバープレート)を付けているので記録が残っているはずですが、全国でデータを共有しないために、初度登録年月は不明。まして、軽自動車税届出済証には走行距離など記録されていません。

 税金だけ徴収し、自治体間のデータ共有や充実など、システムの更新にその費用が回っていないのです。

 一方、車検のあるクルマ(登録車)などでは、車検証に走行距離を記録するだけではメーター巻き戻し疑惑が解消されなかったため、追加の対策も講じられました。

 メーター交換などで走行距離が前回の車検より短くなった場合は、過去の車検時に記録された最も長い走行距離を追加記載することに改め、誰でもメーター巻き戻しの有無が確認できるようになったのです。

 そのため、クルマにとってメーター巻き戻しは、もはや昔話となりました。この対策は、車検制度のある小型二輪にも適用されています。

■バイクオークションの二輪車走行距離管理システムで

 メーター巻き戻しで、バイクの価値が棄損されることに危機感を抱いたバイク業界がとった対策は、会員オークション会場で流通された全ての出品車両情報をデータベース化し、車台番号と走行距離の履歴を残すことでした。

「日本二輪車オークション協会」(金島雅哉会長)は、メーター巻き戻しの不正行為防止を目的に、独自の「二輪車走行距離管理システム」を確立しました。

日本二輪車オークション協会 金島雅也会長日本二輪車オークション協会 金島雅也会長

 同協会はバイクオークションを運営する9社で構成され、会員となる運営会場(全国13カ所)でバイクオークションを展開しています。このすべての会場に出品される車両について、2003年から車台番号をもとに走行距離の履歴を残して調査し、異常が認められれば「走行メーター交換歴車」、「走行距離減算車」、「走行距離疑義車」として区分し、情報公開を義務付けています。

 同協会によると、2023年2月~2024年1月の1年間で、約41万9000台の新規履歴を登録しています。これまでの累積履歴登録件数は延べ約831万台で、台数にして509万台に達しました。

 これらの情報をもとにしたチェックシステムは、走行距離確認サービスとして2017年よりオークション会場に参加するバイクショップに提供されています。

 また、希望する中古バイク情報サイトにも、媒体向け走行距離管理システムとして2018年から提供されています。

 こうして発見されたメーター巻き戻しについては、不当表示を未然防止することが求められます。

「二輪車走行距離管理システム」は走行履歴を蓄積していくので、車検の有無、排気量に関係なく「メーター巻き戻し」が発見できます。

 クルマのような車両管理の制度がない中で、バイクの価値を守る有力な方法とされています。

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