ピーター・グリーナウェイが語る 映画監督としての仕事、マイケル・ナイマンとのコラボレーション
映画.com / 2024年3月2日 10時0分
あと、世の中がよりイメージを意識するようになったこともあります。1930年代にテレビが発明され、大衆に普及したのはおそらく60年~70年代頃。それに対して、絵画はエリート主義的なものになっていきました。私が美術学校で知り合った30人くらいのうち、画家としてだけで生活できている人は一人もいないと思います。彼らは何らかの映像の仕事に携わっていると思います。
――映画監督として仕事の楽しさを教えてください。
観客がいること、観客からお金をいただくこと……そして制作そのものが楽しいですね。もちろん本なら出版されなければいけないという恐怖があり、絵画や映画なら、見てもらわなければならない、しかし、そういう絵画や映画が何であるかという核心に迫るべきではありません。
絵を描くときに、青の横にピンクを置いたり、構図を縦や横にしたり、映像や文章制作で様々な文字を用いたり、意味を持たせたり……それらの作業はお客を興奮させるものではないかもしれませんが、作り手にとっては奥深く魅力的です。だから、ギャラがもらえなくても、また年をとるにつれてお金がもらえなくなってきても、実際の制作の喜びは残ります。それは私にとって不老不死のようなものです。
私はおそらくあと20年も生きられません。4人の子供がいるのでその遺伝子は続くでしょうが、私が死んだ後も、多くの絵画、映画、文章を残せます。ウランの原子番号は92、私の目標は92才まで生きること。ご覧の通り、私はまだ考えたり話したりすることができ、とても元気です。
――あなたの映画の物語も、奇想天外でオリジナリティに溢れています。まず映像としてこういうシーンを見せたい、という欲望から物語が生まれるのでしょうか?
私の映画制作にとって、なにより大事なのはロケーションです。今取り組んでいる新作映画はイタリアのトスカーナ州にある美しい街を舞台にしています。そこの教会のプロジェクトマッピングの企画で訪れ、その街の美しさにとても興奮し、また戻りたいと思い、実験的に脚本を書きました。私は今、81歳で長くは生きられません。ですから死について語りたいと思いました。すべての人の人生には2つの大きなテーマがあります。エロスとタナトス、一つはセックスで、もう一つは死です。
エロスは人生、性の目覚めや愛の始まりで、私はセックスをテーマにした映画は作りました。そして今回は死、人生の終わりについての映画です。本当に人間に死は必要なのかを問いかけたいのです。もちろん永遠に生きる人はいませんし、宗教的な示唆ではなく、自殺や安楽死における死の幇助について、感情的に掘り下げたいと思っています。死というものに友人のように対峙して描きたいと思います。
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