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アリ・アスターも舌を巻いた異形ホラー「オオカミの家」は音もすごかった! ヒットの要因、作品の聴きどころ座談会

映画.com / 2024年4月7日 10時0分

WOWOWプラス山下氏(以下、山下):サウンドデザイナーのクラウディオ・バルガスさんという方が音響デザインとしてクレジットされていますが、音響デザインとは別に“音と音楽の実験”という項目があって、そこにバルガスさんと監督2人の名前が入っています。

 この作品は完成まで5年かかっていますが、映像がすべて完成してからサウンドデザイナーに渡したわけではなく、撮れた映像を次々にバルガスさんに渡していたそうで。ですから音も5年がかり。映像作品の多くはサウンドライブラリーと呼ばれる、効果音や音楽のストックを使って音作りをすることもありますが、今回、バルガスさんは既存の音源は使わない、というルールを自分で決めたそうです。自分だけでなく、自分の子どもたちにもいろんな音を出させて、それを使って構成していきました。

 コロニア・ディグニダはナチの時代を引きずっている場所なので、音楽ではナチを思わせるような楽曲としてワーグナーがあって、子守り歌はブラームス。ドイツの大体同じような時代の人たちの楽曲が使われています。

 しかし、劇場とここでのBlu-ray上映では音がかなり違いました。部屋の大きさが違うということもありますが、それだけじゃない。セイゲンさんのマスタリングという作業がさらにそれぞれの音のニュアンスを豊かにし、定位をよりクリアにしたように感じます。

オノ セイゲン氏(以下、オノ):パッケージソフトに音声を収録する際の、最後の質感の調整がマスタリングです。今回もCDよりも高音質の、48kHz/24bitのリニアPCMというスペックでBlu-rayに収録するということで、まずは映像を見ないで音の素材だけをチェックしました。この作品の音は、いわゆる映画の音や音楽とはまるで違った感じを受けました。普通、映画の音響は、ダビングステージと呼ばれる専用のスタジオで作られるんですが、これはそうではない。商業映画ではなく、美術館でインスタレーションのようにして作られたと聞いていたんですが、音がすごくよかった。

 2010年代以降の映画は、ハリウッド作品を筆頭に上手にサラウンドが使われていますが、インディペンデントで作られたこの作品もそれらに負けないぐらいのクオリティの音でしたね。僕には現代音楽家の友人もいますが、今はみなコンピューターを使いホームスタジオで音響制作をやっている。そして、大きなプロダクションでなくても、良いセンスがあればこの作品のようにちゃんとした映画の音が作れます。

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