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川村元気が語り尽くす、「小説を映像化することについて」

映画.com / 2024年4月12日 15時0分

 ですから、吉田さん自身が映画の脚本でやられたことは、空洞をひっくり返して具体にする作業。今回も同様で、ラブレスを描くには愛があった状態を描かなければいけない。そこが難しいと思って、ふたりに任せてみたんです。自分の正解だけで進んでも面白くないので」

 一方で「映像化にかかわった小説や漫画の原作者は、絶対に一度は嫌な思いをしているのではないか」と吐露する。

 川村「プロットが上がってきたとき、『なぜこうなった!?』と思うことがあります。原作をそのまま模写しても、こうはならないだろう……、と言いたくなるくらいとんでもないものを読む経験をしている方も多いと思います。自分が誰かの原作を預かるとき、まずは原作通りにやったらどうなるか、から考え始めます。

 とはいえ、映画と小説は全然違います。たとえば小説『四月になれば彼女は』で一番の人気があったキャラクターは、弥生の妹の純。性に奔放なキャラクターなんですが、あの人の登場シーンが映画で増えてしまうと、そちらの話のほうが面白くなってしまう。写真部の先輩の大島というキャラクターも僕は大好きなんですが、あのキャラが最も重いドラマを背負ってしまっている」

 山田&木戸「大島のエピソードを描いてしまうと、アイスランドから帰ってこれなくなりますよね(笑)」

 川村「サブキャラが印象的だったり、本筋から脱線したエピソードの方が面白くなってしまうのが、良い小説な気がします。脚本はストーリーと構成、小説は描写の面白さが勝負。純や大島を描くと、メインの3人を食っちゃう。すごく気に入っているキャラクターやエピソードを、諦めざるを得ないんだなと自分の中で納得させるのに半年くらいかかりました。もしドラマ版『四月になれば彼女を』を作る時がきたら、純や大島を暴れさせたいですね」

 川村は、原作執筆時に膨大な人数に取材をし、全てのキャラクターにモデルがいると公言している。この日は、映画では中島歩が演じた“ペンタックス”のモデルになった人物の実母が場内にいた。

 川村「小説を書くとき、大学の写真部へ取材に行ったのですが、部長の男の子が『ペンタックス一択』みたいな子だったんです(笑)。それがすごく印象に残っていて、彼をモデルに書いたキャラが、中島歩くんが演じた“ペンタックス”でした。ニコンでもキャノンでもなく、ライカでもなく、ペンタックス。そういうディテールって、想像力では書けません。Tシャツまでペンタックスでしたから」

 木戸「僕はペンタックスのセリフ、もっと書いていたんです。妙にセリフを長くし過ぎたら、『ここ、いらないんじゃない?』って削られました(笑)」

 川村「木戸くんの書いたセリフで、『(大学が)懐かしいのはたまに思い出すからだよ』というのがあるんですが、あれは原作にはないセリフ。思い出って勝手に美化されていたりするだけのことって、あるじゃないですか。それを一発で表現していて、すごくいいなと思いました。原作で生まれたキャラクターが映画の中で新しいセリフを話し、それがちゃんと同じキャラクターが発した言葉になっていることが、映像と小説の理想形なのかなと思いました」

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