自然災害に対するリスクマネジメントとは? 万一のために知っておきたい「災害対策基本法」
ファイナンシャルフィールド / 2019年11月7日 9時30分
地震、台風、豪雨。毎年のように日本列島のどこかで起こる大規模な災害に対して、私たちはどのような法律・制度のもと、わが家のリスクマネジメントをしていけばいいのでしょうか? 事前の準備と事後の対策を組み立てる際に知っておきたいことについて解説していきます。
災害救助法とは?
今年の9月に発生した台風15号による災害では、国や県、自治体といった行政の対応の遅れが指摘されています。しかし個人的には、台風が発生していることを知りながら、情報収集や対策準備が十分になされていなかったことが、今回の対応の遅れにつながったのではないかと考えています。
確かに、自然災害に対して完全に予知・予見し、万全の対策を講じることは難しいと思います。しかし、「災害救助法」という法律が制定されていることを踏まえると、台風への備えとその後の被災への対策を立てられたわけです。
国民としても、この点を知っていると、なぜ、対応が遅れてしまったのか、自分なりに考えることができるのではないかと考えています。
災害救助法の位置づけ
※内閣府「災害救助法の概要」をもとに筆者作成
災害救助法は、災害対策基本法の枠組みの中にある法律といえます。
災害対策基本法には、1.防災に関する責務の明確化、2.防災に関する組織、3.防災計画、4.災害対策の推進、5.財政金融措置、6.災害緊急事態の6つの項目があり、「災害予防」・「応急援助」・「復旧・復興」といった3つのステージごとに対応策が講じられています。
このうち、災害救助法は、応急援助のステージで、どのように災害支援を行っていくかを規定した法律です。災害救助法の目的は、「災害に対して、国が、地方公共団体、日本赤十字社その他団体および国民の協力の下に、応急的に、必要な援助を行い、被災者の保護と社会秩序の保全を図ること」となっています。
通常の災害時、救助を行う実施主体は市町村です。都道府県は、市町村が行う救助に対し、後方援助や総合的な調整を図ります。
しかし、災害救助法が適用されると、救助を行う実施主体が都道府県になり、市町村はそれを補助する側に回ります。そして、都道府県が負担する費用のうち、最大で半分を国が負担することになっています。
このような流れを見ていると、指摘されている台風15号による災害対応の遅れは、災害発生当初、しばらくの間、通常災害の認識で行われていたことが原因だったのではないかと推察できます。
災害救助法における救助
それでは、災害救助法では、どのような救助が実施されるのでしょうか。
1避難所の設置
2被災者の救出
3応急仮設住宅の供与
4住宅の応急修理
5炊き出しその他による食品の給与
6学用品の給与
7飲料水の供給
8埋葬
9被服、寝具その他生活必需品の給与・貸与
10死体の捜索・処理
11医療・助産
12障害物の除去
台風15号による被害では、避難所の設置はもとより、時間の差こそあれ、災害救助法の適用による救助が実施されました。報道などで私たちの目に触れていたのは、例えば、被災者の救出や住宅の応急修理、飲料水の供給、障害物の除去などだったと思います。
特に、住宅の応急修理については、自治体からブルーシートが配布され、業者やボランティアなどを通じ、ブルーシートを屋根などにかぶせている映像が多く流れていました。
そして、応急救助のステージが経過した後は、復旧・復興のステージに移行していきます。復旧・復興のステージでは、例えば、「被災者生活再建支援法」をもとにした「被災者生活再建支援制度」など、目的に応じていくつかの支援制度が用意されています。
被災者生活再建支援制度は、被災者の生活再建と復興が支援の目的です。具体的には、住宅に対する再建支援ですが、その内容は次のようになっています。
○被災者生活再建支援金の支給額
※内閣府「被災者生活再建支援制度の概要」より抜粋
被災者生活再建支援金は2種類あり、ひとつは「基礎支援金」、もうひとつは「加算支援金」です。それぞれ、住宅の被害程度に応じ、要件に適合すれば支援金が支給されることになっています。
○制度の対象となる被災者世帯
1.住宅が全壊した世帯
2.住宅が半壊、または住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯
3.災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯
4.住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯(大規模半壊世帯)
まとめ
リスクマネジメントを検討する際、災害対策基本法にあるように、「予防」・「応急救助」・「復旧・復興」と3つのステージでまとめていくと、わが家としてどのように対策を考えていけばいいかがイメージしやすくなります。
予防段階では、避難訓練や避難経路の確認、食料や水の備蓄などがその最たる例ですが、実際に被災したときは、その応急処置としてどのような公的な救助があるか、そして、復旧・復興段階でようやく経済的な支援が受けられるといった段取りをあらかじめ把握しておくと、具体的にどのように備えていけばいいかが組み立てやすくなります。
今後も、この国で住む限り、私たちは自然災害と向き合うことを前提に生きていくことになります。転ばぬ先の杖である「リスクマネジメント」。予防、応急救助、復旧・復興と3段階に分け、わが家に合った対策を整えていくようにしましょう。
出典:内閣府「災害救助法の概要(平成元年度版)」
内閣府「被災者生活再建支援制度の概要」
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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