今後、振替加算は少なくなる? 損をしないための<年金>と<働き方>の知識
ファイナンシャルフィールド / 2019年12月3日 23時15分
厚生年金加入期間が20年以上ある配偶者によって生計を維持されている、当該期間20年未満の人については、その老齢基礎年金に振替加算されることがあります。 もし、自身の厚生年金の加入が20年未満から20年以上になると、振替加算はないことになりますが、現在20年未満で、これから働くことを考えている人は振替加算がなくならないよう、厚生年金加入期間が増えないよう、働き方を調整したほうがよいのでしょうか?
振替加算の仕組み
振替加算は老齢基礎年金に行われます。もし、配偶者である夫の厚生年金加入期間が20年以上あり、本人である妻の厚生年金加入期間が20年未満の場合であれば、当該妻に振替加算されます。
20年以上加入の夫が年上の場合は、20年未満加入の妻が65歳になってから加算され(【図表1】(1))、一方、20年未満加入の妻が年上の場合は20年以上加入の夫が65歳になって以降加算されることになっています(【図表1】(2))。
ただし、この振替加算は、原則、本人(前述の妻)が1926年4月2日以降1966年4月1日以前生まれである場合に加算対象です。そして、その加算額は【図表2】のとおり、本人の生年月日により異なっています。
20年以上になると振替加算は支給されなくなる
配偶者である夫だけでなく、本人である妻にも厚生年金加入期間が20年以上あって65歳を迎えている場合は、振替加算の対象の生年月日であっても、妻に振替加算は行われません。
では、夫婦共働き期間があり、厚生年金加入期間が20年に近い妻の場合、振替加算がつくように、厚生年金加入対象となるフルタイムの勤務や一定以上の勤務時間でのパート勤務(フルタイムの4分の3以上の時間の勤務、あるいは従業員501人以上の企業で週20時間以上勤務)は控えるべきなのでしょうか?
振替加算は今後少なくなる
振替加算の額は今後65歳を迎える人の場合、加算されたとしても金額は数万円程度です(【図表2】)。今年度60歳を迎える人であれば、加算額は年間2万6940円となり、その次の年度以降に60歳を迎える人の場合、さらに加算額が少なくなります。
一方、厚生年金に加入して加入期間の合計が20年以上になった場合、振替加算がなくなる代わりに、老齢厚生年金が増えることになります。
仮に、2万6940円の振替加算がある60歳の人で、過去の厚生年金加入期間が19年だった場合。60歳から65歳までの間に、あと11ヶ月だけ給与(標準報酬月額)18万円で厚生年金に加入し、合計19年11月となると2万6940円振替加算され、65歳からの老齢厚生年金(報酬比例部分と経過的加算額の合計)は11ヶ月分の加入で年間3万円弱が増えることになります。
さらにあと1月勤務してちょうど20年になると、老齢厚生年金は12ヶ月分で年間3万円強増えますが、その一方で振替加算がなくなります。このように20年ちょうどでは19年11ヶ月より合計年金額が減ることにはなります。
しかし、厚生年金加入が20年になってさらにその後長く加入すれば、老齢厚生年金がさらに多くなります。もし、60歳から65歳になるまでの5年間同じ18万円の給与で加入した場合であれば、厚生年金加入期間は20年を超え合計24年ですが、65歳からの老齢厚生年金が年間15万円強増えます。
なくなる振替加算の額(2万6940円)以上に、老齢厚生年金が増えることになり、差し引きして増えた額で65歳以降生涯受給できることになります。
振替加算は後の世代ほど少なくなり、1966年4月2日以降生まれの人は加算されませんので、働き方を決めるにあたっては、振替加算を考慮する必要がなくなりつつもあります。
働くことによる収入も
厚生年金に加入する形で勤務をすると、厚生年金保険料のほか、健康保険料や雇用保険料も控除対象になって給与から控除されます。
また、本人が厚生年金に20年加入して60歳台前半で老齢の年金(特別支給の老齢厚生年金)を受け取ると、配偶者の加給年金が加算されなくなることもありますので、その点も意識する必要はあるかもしれません(加給年金については【図表1】(1))。
しかし、厚生年金加入対象として、一定以上の勤務時間で勤務をすることで給与収入があります。同じ時給での厚生年金未加入の短時間勤務の場合や働かない場合よりも給与による収入が多いことにもなります。長く、多く働いたほうが給与と年金を含めた収入も増えるでしょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
関連記事
「妻が20年以上厚生年金に加入すると、夫の加給年金がもらえない」本当ですか?
老齢基礎年金に加算される振替加算の仕組みと金額(1) -誰にいくらどのように加算される?
老齢基礎年金に加算される振替加算の仕組みと金額(2) -振替加算はなぜ加算される?
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
夫が65歳になります。52歳の私は所得300万円の会社員で厚生年金に加入。加給年金はもらえますか?
オールアバウト / 2024年4月22日 20時30分
-
加給年金を長期間もらえる人とは、どんな人?
オールアバウト / 2024年4月11日 8時10分
-
月「17万円」のはずが…65歳の元サラリーマン「ねんきん定期便」には記載のない年金に思わずガッツポーズ「やった、年金が増えた!」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月6日 10時15分
-
妻は厚生年金に2年ほど加入していましたが、ほとんどの期間、私の扶養に入っていました。私は65歳になると加給年金は支給されますか?
オールアバウト / 2024年4月5日 20時30分
-
5歳下の妻がいると年金が「総額200万円」も増加!? 年の差夫婦が知っておきたい「加給年金」について、金額や支給要件を解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年3月31日 2時20分
ランキング
-
1なぜ歯磨き粉はミント味? ヒット商品の誕生には「無駄」が必要なワケ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月26日 8時0分
-
2突然現場に現れて「良案」を言い出す上司の弊害 「気になったら即座に直したい」欲求への抗い方
東洋経済オンライン / 2024年4月26日 8時0分
-
3濃口醤油と淡口醤油、塩分が高いのはどっち?…醤油の「色の濃さ」と「味の濃さ」の知られざる関係
プレジデントオンライン / 2024年4月26日 8時15分
-
4「加賀屋」50歳の元若女将が選んだ"第2の人生" 震災からの復興への道、仕事術について聞く
東洋経済オンライン / 2024年4月26日 12時0分
-
5円安、物価上昇通じて賃金に波及するリスクに警戒感=植田日銀総裁
ロイター / 2024年4月26日 18時5分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください