保険ってどうやって成り立っているの? 保険の原理を説明します
ファイナンシャルフィールド / 2020年1月26日 9時30分
保険とは、偶然な事故により経済的損失を被った場合、その経済的損失の回復を目的としてかけられるものです。 損害保険により、他国との貿易に使う船が海難事故で沈没したり、自分の家や工場が火災で全焼したりといった場合の経済的損失を担保することで、それらの事故にもかかわらず、正常な経済活動が行えるようになりました。 生命保険のおかげで、一家の働き手に万一のことがあっても、家族が路頭に迷わずに済んでいます。今回は、保険が成立するための要件と保険制度を支える基本原理について説明したいと思います。
保険の基本原理
まず、保険というシステムの基本原理について説明したいと思います。
1.大数の法則
火災や交通事故などは、個々の住居や自動車から見れば、偶然な事象としてとらえられます。
しかし長期間にわたり同種の事故を統計的に整理すると、そのような事故がほぼ一定の確率で発生していることが分かります。
サイコロを振っても「1」が出るか「6」が出るかは分かりませんが、何十回も振ると「1」の出る確率も「6」の出る確率もおおよそ6分の1になるのと同様です。
多数の観察数で見ると一定の発生頻度に近づくことを大数の法則と言い、保険事故発生の確率を予測するのに用いられます。
2.収支相等の原則
保険料は大数の法則に基づいて、将来事故の発生する確率に基づき算出されます。
保険の加入者が公平にその保険料を負担するのならば、保険料の総額と保険金の総額は一致する必要があります。これを収支相等の法則と言います。
実際には、これに保険事業を経営するための経費や資産運用収益を加えた上で運営されています。
3.給付・反対給付均等の原則
ある個人の保険料は、その個人が保有する危険の程度(事故の発生する確率)に相応するものである必要があります。
それを給付・反対給付均等の法則と言います。例えば、火災で焼失しやすい木造家屋の保険料は、鉄筋コンクリートの家の保険料より高くなければいけないということです。
給付・反対給付均等の原則は「公平の原則」とも呼ばれます。
保険が成立するための条件
前項のような基本原理に基づき成立する保険ですが、あるリスクに対して保険が成立するためにはいくつかの条件があります。その条件にはどんなものがあるのでしょうか?
1.偶然の事故により経済的損失が発生すること
保険が成立するためには、不確実性=偶然性が必要になります。
損害保険の場合は「発生するかどうか」および「損害の程度」、生命保険の場合は「いつ発生するか」が予見できません。それらの事故の発生が予測しがたいことが、保険成立の条件となります。
2.経済的損失の回復を目的とすること
保険の機能は経済的損失の回復にあります。精神的な損失や名誉の回復ではありません。
それゆえ、保険が成立するための条件として、保険事故の発生により損失を被る経済的な被保険者利益があることが、保険成立のための第二の条件となります。
被保険者利益とは、例えば火災で焼失した家などの価値を言います。
3.同質のリスクを有する多数の経済的主体が存在すること
保険は、同質のリスクを持つ主体が多数いないと成立しません。
つまり「家が燃えてしまっては困る」という人がたくさんいなければ、家の焼失の際に支払う十分な保険金が集まらず、保険が成立しないということです。
多数の経済主体が保険に参加することによりリスク分散が可能になり、統計的手法により損害の発生確率を計算し、適正な保険料を求めることができるようになるのです。
4.保険料が合理的計算に基づいていること
保険料と保険給付が数理的な関係にあり、保険料が保険契約者のリスクに応じて合理的に計算されたものである必要があります。
5.利得禁止の原則
保険は発生した損害に対応する保険金の支払いを目的とし、個人の生活や企業活動の安定を目的としています。
被保険者が被った損失以上の利益を得ることになれば、放火等の犯罪を誘発し、モラル・ハザードをまねくことになります。
そのため、被保険者が受ける可能性がある損害以上の額の保険契約は禁止されており、これを利得禁止の原則と言います。
(まとめ)
保険の基本原理と保険が成立する条件に解説しました。それらを知ることで保険の重要性を考え、より良い活用ができるきっかけになることを願っています。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
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