戦力外直後…GMの衝撃提案に「え…?」 2時間後に覚悟の“転身”、21歳が進んだ第2の人生
Full-Count / 2024年4月27日 7時20分
■オリックス・比屋根ブルペン捕手が4年前に発した「え…?」の真相
予想外の“提案”に、思わず声が漏れた。「え……?」。固く結んでいた首元のネクタイが汗で滲むほど、オリックス・比屋根彰人ブルペン捕手は驚きを隠せなかった。当時は21歳。「嘘でしょ……? としか思えませんでした」。衝撃の“転向”を打診される数秒前、戦力外通告を受けたばかりで、事態が飲み込めていなかった。
2020年11月4日、大阪・舞洲の球団施設に呼び出された比屋根は“クビ”を覚悟していた。2017年の育成ドラフト3位でオリックスに入団。長打力が自慢の大型内野手として、プロの扉を開いた。3年間を懸命に過ごしたが、支配下選手登録を勝ち取れず「次の年が(選手で)ないのは、薄々、気がついていました」と頭をかく。
呼び出された部屋で球団から通達されたのは「選手としての3年間、お疲れ様でした。ありがとう」という言葉だった。その直後、福良淳一GMから「来年からブルペンを支えてほしい」と添えられた。内野手だった比屋根は「絶対に(目上の方に)言っちゃあかんのですけど……。その時ばかりは『え?』っと言う声が出てしまいましたね」と苦笑いする。
「21歳で、プロ野球生活が終わったら、まだ次に何をするか考えていませんでした。(球団スタッフなどの)打診を頂ければ嬉しいな……と思っていましたね。何も他の仕事をする予定が、本当になかったので」
数秒間、頭の中を整理して言葉を前に出した。「キャッチャーですか……?」。福良GMは、目を細めて「うん!」と深く頷いていた。「新しいお仕事をいただいたので、その(戦力外通告の)2時間後から、ブルペンでキャッチング練習を開始していました」。1時間ほどは、空いた口が塞がらなかったが、2時間後には“現実世界”にいた。
「せっかく、声をかけてもらったので。やるっきゃないと思いましたね。ただ、未知の世界でした。(投手の)立ち投げも全然捕れなかったですもん……」
■裏方転身で心掛けるのは「全部、本音で言うこと」
比屋根は小学4年生からの3年間は捕手を務めたことがあったが、その後は未経験だった。「レベルが全然違いますよ(笑)。一緒にしちゃいけない。阿部(翔太)さんのフォーク、座っているのに『股抜け5連続』してしまいましたから。フォークが落ちるんじゃなくて、揺れるんです。軌道が全く読めないんです」。防具の付け方も、ままならなかった。
「みんな優しくて、本当にありがたいです。キャッチャーミットは当時、(伏見)寅威さんから受け取りました。戦力外になって挨拶に行ったんですけど……。そのときに『寅威さん、僕、キャッチャーやることになったので、ミットを頂けないですか……?』と言いました。最初、寅威さんは『マジで? 嘘は要らないぞ!」となりましたけど、最後は信じてもらえました」
裏方転身後の2021年からは主にファームの投手陣を担当。ブルペンでにこやかな笑顔を弾かせる。「やりがいがあります。若い選手の成長を見届けられるので」。そう言い切った後、真っすぐな視線で言葉を付け足した。「全部、本音で言うこと。『今のダメですね、いつもとは違います!』と(最年長の)比嘉さんにも言います」。中嶋政権4連覇へ、縁の下から支える。(真柴健 / Ken Mashiba)
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