『猟奇島』から『サイコ』まで…… 痛烈で痛快な人間狩りスリラー『ザ・ハント』脚本家が明かす“影響を受けた作品”[ホラー通信]
ガジェット通信 / 2020年10月29日 23時30分
良質なホラー作品でファンを増やし続けるブラムハウス・プロダクションズによる、人間狩りスリラー『ザ・ハント』が10月30日より公開。
痛烈な社会風刺で物議を醸し、一時は公開中止に追い込まれた“問題作”であるものの、大いに楽しめる痛快な娯楽作品に仕上げている本作。一体どんな作品に影響を受けているのだろうか。二人の脚本家が明かしてくれた。
画像:左から、デイモン・リンデロフ(脚本)、ニック・キューズ(脚本)、ジェイソン・ブラム(製作)
『猟奇島』(32) 『脱出』(72)
本作で描かれるのは、エリートたちが娯楽で庶民を狩るという衝撃的な“人間狩り”。脚本を手掛けたデイモン・リンデロフは、「娯楽のために”狩られる”人間を描いた映画は昔から存在するし、中でも『猟奇島』(32)はもっとも有名だ」と、元祖とも言える”人間狩り”サスペンススリラーからインスピレーションを受けたことを明かしている。『猟奇島』が成功したことにより、『恐怖の島』(45)や『太陽に向かって走れ』(56)といった”人間狩り”作品が作られてきた。「本作の脚本を執筆する上でそういった作品から影響を受けたし、特に、田舎の人間と衝突し、手に負えない事態に陥った都会の男たちを描いた『脱出』(72)の要素が反映されている。“場違いな人間”や“異質な存在”といったアイデアは、この映画から得たものだ」
『博士の異常な愛情』(64) 『ゲット・アウト』(17)
また、リンデロフは、風刺と娯楽という2つの要素を持つ本作について、映画史に残る名作と、本作と同じくブラムハウス製作のジョーダン・ピール監督作を意識していたという。「『ザ・ハント』を構成する骨子は非常に暴力的なアクション・スリラー・サスペンスだが、核の部分にあるのは風刺だ。うぬぼれだと思われたくないけど、僕たちの目標は『博士の異常な愛情』(64)や『ゲット・アウト』(17)のように政治的な主張を持った作品にしつつ、トロイの木馬的に、実際の中身は“見た目とは違う娯楽的なもの”にすることだった」
さらに、もうひとりの脚本家であるニック・キューズは、人間狩りを行う世界観の信ぴょう性とリアリティの担保のために、「アメリカ合衆国憲法修正第5条を本作のストーリーに当てはめてみた」と証言。これは、“同じ罪で2度起訴されることはないために本当に人を殺めても再度罪には問われない”としてサスペンススリラー『ダブル・ジョパディー』(99)でも引用された条項である。
『サイコ』(60)
極めつけとして、本作において、サスペンスやホラー映画における定番や定石を徹底的に裏切り、観る者を楽しませることを決心させたのが、“観客の予想を裏切る”作品として先駆的な、アルフレッド・ヒッチコック監督の名作『サイコ』(60)。従来のストーリー構造を覆し続けることで終始エキサイティングな展開をみせる本作には、リンデロフが「冒頭の15分か20分の間に『サイコ』的な展開を何度も繰り返すことを思いついた。『もしも主人公のようなキャラクターたちが冒頭に次々と登場し、その後すぐに殺されたら?』と考えたんだ」、キューズが「最初は観客も展開を読もうとするが、何度も予想を裏切られるうちに降参し、予想外の展開へと導いてくれそうな本作を純粋に楽しんでくれるはずだ」とそれぞれ自信をみせている。
『ザ・ハント』
10月30日(金) TOHO シネマズ 日比谷他全国ロードショー
監督:クレイグ・ゾベル 製作:ジェイソン・ブラム
脚本:ニック・キューズ、デイモン・リンデロフ
出演:ヒラリー・スワンク、ベティ・ギルピン、エマ・ロバーツほか
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