「東京五輪への推薦状」第56回: “和製モドリッチ”高江麗央が開花させつつある新たな一面
ゲキサカ / 2018年5月2日 7時42分
「ダービーで本当に観客も多かったですけれど、緊張はあまりしなかったですね。相手のC大阪には山口蛍選手とか代表選手がいて、そういう選手を喰っていきたいと楽しみにする気持ちのほうが強かった。一つひとつのプレーに歓声とか溜め息とかがあって、自分は意外と(歓声を)聞いているタイプなのですが、そういうのも楽しめましたね」
試合開始早々にいきなり山口を削るプレーも見せるなど、ダービーの雰囲気にも恐れるところがまるでない様子も特筆モノ。メンタリティーの部分ではプロのトップレベルで戦えるところを見せたと言えるだろう。
もちろん、この程度で高江のG大阪における地位が保証されるなんてことはない。実際、大阪ダービーの次の試合ではハーフタイムで交代を命じられ、直近の試合はベンチを温めることになった。同じポジションには今野泰幸や遠藤保仁のような重鎮もいれば、市丸瑞季のような同世代のクオリティのある選手もいる。プロの競争は、そう甘いものでないことも確かだ。
「本当にこれからがスタートだと思う。スタメンに定着できるように練習からやっていかないといけない」
高卒2年目、スタートラインに立った若武者をG大阪の番記者である下薗昌記氏は「和製モドリッチ」と評している。繊細なタッチと戦術眼を持つボランチは、実は彼の動画も「結構観ている」と笑いつつ、その域に達するまでにはもちろん、G大阪の先発オーダーに定着するためにも、まだまだ足りない部分があることに自覚的だ。その謙虚な姿勢自体が、次なる成長にも原動力にもなるだろう。その上で、夢も大きく抱く。
「五輪とかA代表も目指してやっていきたいし、海外の選手相手でも、代表でやれるくらいの選手になりたい」
選手の成長というのは分からないもので、ちょっとした切っ掛けや指導者の働きかけによって思わぬ才覚が目覚めることもある。クレバーでスキルのある選手であることはよく分かっていたが、今年20歳になるG大阪の「和製モドリッチ」は別の一面を開花させつつある。もちろん、「まだまだ」の部分も目立つのだが、未来への可能性をしっかり見せているのも、また確かな事実だ。
執筆者紹介:川端暁彦
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。
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