“高校サッカー版・ボルト?”。京都の名門、洛北FW三谷は陸上部から転向1年半の快足ストライカー
ゲキサカ / 2018年10月16日 20時12分
陸上の100m、200m、4×100mリレーの世界記録保持者で、“人類最速の男”との異名を持つのがウサイン・ボルトだ。2017年に引退してからはプロサッカー選手への転向を目指し、各国でのトライアルに参加。今月12日はオーストラリアのセントラルコースト・マリナーズの一員として、プレシーズンマッチに出場し、2得点をマークした。手にしたメダルや経歴は全く違うが、高校サッカーにもボルトと同じように陸上競技から転向し、活躍する選手がいる。インターハイ10回、選手権3回の出場を誇る名門・洛北高のFW三谷林太郎(3年)だ。
幼稚園の年中からサッカーを始めた三谷の転機が訪れたのは中学生の頃だ。中学に上がるタイミングで、小学校時代に所属したチームがジュニアユースを設立。三谷も迷うことなく加入したが、新設チームの難しさからか、運営がうまく行かずにチームが消滅してしまう。他チームへ移籍する手もあったが、「掛け持ちしていた陸上部で結果が出ていたし、顧問の先生ともうまく行っていたのでそのまま陸上に専念しようと思った」。
元々、スピードが武器のストライカーだったため、陸上競技への適性はあったのだろう。中学3年生の頃には、近畿大会に出場し、200mで6位に入賞。活躍が洛北高陸上部監督の目に留まり、高校でも陸上を続けることを決意した。コンスタントにインターハイに出場し、国体選手も所属する陸上部でも期待されていたが、「サッカーはチームスポーツ。ミスをカバーし合えたり、点を獲った時に皆で喜び合えるのが好きで、やっぱりサッカーがしたいなと思った」という三谷のサッカーへの想いは止められなかった。
陸上部を退部し、社会人チームでのプレーも考えたが、小学校時代の指導者に背中を押され、高校2年生になったタイミングで、サッカー部の前田尚克監督に入部届を提出。晴れてサッカー部の一員となった。中学時代も友だちとボールを蹴っていたとはいえ、サッカーから離れていた影響は大きく、「ボールが蹴れなくなっていた。ただでさえ下手くそなのに、トラップがまったく収まらなかった」。ただ、周りに追いつくために練習では常に全力で取り組み、チームメイトも事あるごとにアドバイスをしてくれたおかげで、ブランクを取り戻すのに時間はかからなかった。試合で受ける指示も明確で、とにかくスピードを活かそうと裏に抜けることだけを意識した。
昨年1年間はAチームに絡むことができなかったが、今年6月にインターハイ予選が終わってからはAチームのスタメンに名を連ねる機会が増えた。実戦での経験を重ねるうちに技術の改善も進み、スピードを活かした飛び出しでチャンスを作る機会が増加。「どうしても陸上の走りをしてしまうので、1回の走りに使うパワーが多く、すぐにバテてしまう」ため、途中でベンチに下げられてしまうことも多い。それでも、「Aチームで試合に出られるなんてあの頃は思わなかった。ボールを蹴らせてもらえるだけでも、有難い」と充実した日々を過ごしている。
チームはインターハイ予選でまさかの初戦敗退となったが、選手権予選は順調に2回戦を突破し、上位進出を虎視眈々と狙っている。三谷も「周りに頼りっぱなしではなく、ちょっとでもチームの助けになれるようなプレーが出来るように全力で頑張りたい」と意気込みは十分。元陸上部の快足FWの活躍が、洛北躍進の鍵になるかもしれない。
(取材・文 森田将義)●【特設】高校選手権2018
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