『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:キラキラ(前橋育英高・石井陽)
ゲキサカ / 2025年1月16日 19時32分
「自分たちの弱さをもう1回見つめ直して、厳しく言い合うところも言い合って、褒めるところもしっかり褒め合って、全員で切磋琢磨しながら苦しい夏を乗り越えてきたので、本当にあのインターハイの負けからチームが変われたなと思っています」。苦しい時期をみんなで共有してきたことで、タイガー軍団は今まで以上の一体感を纏い始めていた。
11月。石井は安堵の表情を浮かべていた。選手権予選決勝。インターハイで苦杯を嘗めさせられた共愛学園とのリターンマッチは、延長までもつれ込む激闘の末に、3-0で勝利。夏のリベンジをきっちり果たし、冬の全国切符を力強くもぎ取ってみせる。
「ホッとしたという感情が一番大きかったかなと思います。円陣の時に『共愛に負けて、全国に出られなかった悔しさを思い出して、勝ちたいという気持ちを前面に出そう』ということを言って、それが試合でしっかり表現できていたのが良かったですね。夏に『全国に出るのは当たり前のことではない』と痛感したので、こういう形で全国に出られたことで、また1つ自分たちの活躍できる場が増えたので、そこは嬉しく思っています」。
そう口にした石井は選手権への抱負を問われ、少しだけ言葉に力をこめる。「小さいころから見ていた大会で、いろいろな人が応援してくれて、活躍すればいろいろな未来が見えてくる場所だと思うので、本当に夢の詰まった大会だなと感じています。悔いなく終わることが一番ですけど、まだまだ隙や甘さがあるので、残りの期間でしっかり突き詰めて、優勝目指して頑張りたいと思います」。自分にも、チームにも、大きな期待を抱いて、『14番のキャプテン』は晴れ舞台への準備を整えていく。
12月31日。試合が終わった瞬間、こみ上げてくる涙を抑え切れなかった。愛工大名電高(愛知)と対峙した2回戦。前橋育英は2点のリードを追い付かれてPK戦へ。先攻1人目のキッカーとして登場した石井のキックは、終了間際に交代で入った相手の“PKキーパー”に弾き出される。
「ドキドキしましたし、プレッシャーが掛かっていた中で、ちょっと焦ってしまったというか、先に自分がボールをセットしてしまって、相手のキーパーが来るのを待ってしまったので、自分の行きたいタイミングで行けば良かったなと思いました」。
絶望に近い感情が押し寄せてきたものの、すぐに気を取り直してGK藤原優希(3年)の元へ向かう。「もう藤原に止めてもらうしかないので、『PK戦はオマエがキャプテンだぞ』という意味で託しました。『自信を持ってやってくれ』『本当に頼む』ということを伝えましたね」。自分のキャプテンマークを守護神の左腕に巻き、祈るような想いでその後のPK戦を見つめ続ける。
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