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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:キラキラ(前橋育英高・石井陽)

ゲキサカ / 2025年1月16日 19時32分


「もともと『蹴りたいな』とは思っていましたし、緊張というよりは、楽しみの方が大きかったと思います」。ペナルティスポットに立った石井の頭の中は、不思議なぐらいクリアだった。

 ファイナルは予想通りの激闘となった。流経大柏が先制すれば、前橋育英が追い付く。以降はお互いにチャンスを作りながらも、次の1点は生まれず、110分間が終了。日本一の行方はPK戦へと委ねられる。

 キッカーの順番は山田監督が決めた。「自分は前回外しているので、5番以内には入らないだろうなと思っていました」と予想していた石井は、7番目に指名される。このチームが変わるきっかけになった試合もPK戦で、このチームで最後に戦う試合もPK戦へと突入。前橋育英の選手たちは、誰もが不思議な巡り合わせを感じていた。

 5人目までは両チームともに全員成功。サドンデスに入った6人目も双方が沈め、7人目も先攻の流経大柏は確実に成功。外せばその時点で試合に幕が下りる重要なキッカーが、石井に回ってくる。

 5万8千人を集めた大観衆の視線が、小柄な『14番のキャプテン』だけに注がれる。負けたら終わりとか、2度のPKを失敗したとか、キャプテンの責任とか、14番の重みとか、みんなの想いとか、そういうものは全部どこかに吹っ飛んでいた。ただ、目の前のボールをゴールへ蹴り込む。石井の頭の中は、不思議なぐらいクリアだった。


 激闘が終わったばかりのピッチの中央。しつらえられた表彰式のステージへ、黄色と黒のユニフォームを纏った選手たちが、胸に金メダルを光らせながら集まってくる。

 すべてはこの瞬間のために、長く苦しい1年間を過ごしてきたのだ。無数のカメラのレンズが向けられる中、中央へと歩み出てタイミングを確認する。溜めて、溜めて、国立の空へと掲げた優勝カップは、日本一を喜ぶみんなの笑顔は、メチャメチャ眩しく輝いていた。

「本当にキラキラして見えましたね。苦しい想いをしてきたからこそ、より輝くものがあったのかなって。この仲間と、この景色を見られて、本当に良かったです」。

 2つの重責を最後まで担い切った、頼れるリーダー。前橋育英の『14番のキャプテン』を託された石井陽が、正しいと信じて突き進んできたいばらの道の先には、今まで見たこともないような最高の景色が、キラキラと、美しく、広がっていた。



■執筆者紹介:
土屋雅史
「群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に『蹴球ヒストリア: 「サッカーに魅入られた同志たち」の幸せな来歴』『高校サッカー 新時代を戦う監督たち』
▼関連リンク
SEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史
●第103回全国高校サッカー選手権特集

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