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手つかずで遺された、女手一つで育ててくれた80代母への仕送り“総額2,000万円”。50代娘、涙も…税務調査官「追徴課税です」→「なんで?悔しい!」【指摘されない方法を税理士が助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月26日 11時45分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

社会人になり収入を得られるようになると、これまで育ててくれた親へ生活費を渡したり、仕送りを送ったりする人は多いでしょう。しかし、親側が子どもを想って仕送りを貯金したままにしていると、いざ相続が発生した際に思わぬ事態となることも……。本記事ではAさんの事例とともに、仕送りの注意点について辻・本郷 税理士法人の山口拓也税理士が解説します。

家に入れた生活費や仕送りは誰のもの?

実家に住んでいる子供が社会人になって給料をもらうようになると、家に生活費として3万円や5万円を家にいれるということがよくあります。また、遠方に住んでいても、実家に仕送りをするという例もあるでしょう。

では、そのお金を親が生活費として使わずにコツコツと貯めていた場合、このお金は誰のものになるのでしょうか。

結論からいうとこのお金は、子供のものではなく親の財産となります。難しい言葉でいうと子供がその自分名義の口座を知らなかった場合には、「家計の主宰者のもの」つまり親の財産ということになります。

親がこっそり貯めていた生活費、残っていると相続税の対象に

たとえばこのようなケースがあります。Aさんの両親は、Aさんが小さいころに離婚し、Aさんは母親に引き取られ、母親は女手一つでAさんを育てました。そんな母親の苦労をみてきたAさんは、高校を卒業して社会人になると母親に月5万円ずつ生活費として家にお金をいれてきました。

母親は子供からもらったお金だからということで、そのお金には手を付けず、ずっと子供名義の通帳にお金を入金して通帳を管理してきました。

そんな母親でしたが、80歳で他界、50歳になったAさんは税理士に相続税申告を依頼しました。母親はお金に苦労しながらも自宅と預貯金で5,000万円もの財産を遺しました。

相続人はAさん1人のため、相続税のボーダーラインである基礎控除の3,600万円(3,000万円+600万円×1人)を超えてしまい160万円の相続税を支払いました。

そんなAさんですが、母親の遺品を整理していると見知らぬAさん名義の通帳に、いままで渡していたお金、なんと2,000万円が貯めてありました。

Aさんは母の想いに涙。感謝の気持ちでその通帳を自分のものとして受け取りました。もともとは自分のお金です。まさか相続とは関係ないだろうと思っていたのです。

相続税の税務調査は母の死後、2年後の秋

忘れたころに申告を依頼した税理士から連絡がありました。亡くなった母親について税務署から税務調査の連絡があったとのことです。日程調整をして、当日を迎えました。

当日やってきた税務署の担当官は2人、午前中は、ヒアリングでした。母親やAさん自身の過去の学歴、経歴、趣味、親族関係の聞き取りなどからスタートします。その後、母親の老後の生活状況や財産管理の状況など質問は多岐にわたります。

12時になり一旦食事休憩したのち、午後1時から再び調査がスタートしました。午後は相続税申告で使用した資料の現物確認です。通帳や、不動産の権利証などの確認をして写真を撮っていきます。

その後、母親のものでなく、Aさん自身の通帳も見せてください、と言われました。

「え、自分のも?」と一瞬違和感を覚えましたが、立ち会ってくれた税理士は、相続税の税務調査は家族全員のチェックなのできちんと出しましょうと言われ、自分の通帳も担当官に渡しました。

「この通帳のお金は誰のものですか?」

Aさんの通帳は、3冊ありました。ひとつは自分の給料が入金されているメインの通帳。もうひとつは昔のお年玉やお祝いでもらったお金を貯めておいた古い通帳。

そして、最後に母親がこっそり貯めてくれた2,000万円が入っている通帳です。そしてこの通帳は、母親が母親の印鑑を使いAさん名義で作成したものでした。

調査官は通帳を慣れた手つきで確認しつつ、写真を撮っていいですか?と聞かれたので了解し、写真を撮っていきました。

そして例の通帳を見ていた調査官が、この通帳の原資は誰のお金ですか? と質問をしました。Aさんは正直に「私が生活費として家に入れたお金です」と答えます。

調査官は、その後、印鑑の印影をとったり、家の大事な書類の保管場所などをチェックしたりしつつ、税務調査は夕方の4時に終わり帰っていきました。こんなにたくさんのことを聞かれるとも知らなかったAさんはくたくたに疲れました。

税務調査の結果の連絡はそれから1~2か月後

しばらくして、税理士から連絡がありました。税務調査の内容について打ち合わせをしたいということで事務所へ伺いました。

税理士はおもむろに「増減財産検討表」という書類を出してきました。どうやら税務署から渡された税務調査の指摘事項がまとめてある書類のようです。その検討表のなかに、なんと母親がこっそり貯めてくれた2,000万円がありました。

「えっ……」一瞬Aさんは訳がわからなくなり、「どうして相続税の対象になるのですか!?」と質問しました。

すると税理士は、母がその家計の主宰者であり、子供がその口座の存在を知らなかった場合には、家に入れたお金は家計の主宰者のものになると話しました。名義はAさんですが実態は母親の財産である『名義預金』という状態です。

告げられた多額の追徴課税

今回のケースでは、母親が主宰者ということになり、母親の名義預金として相続財産になるようです。

「そんな、ひどい……」

納得できない気持ちでしたが、しぶしぶ修正申告に応じ、追徴税額を払うことになりました。

当初は5,000万円の財産で申告しましたが、これに2,000万円を加えて7,000万円の財産として相続税を計算しなおします。そうすると相続税総額は480万円となりますが、すでに160万円は払っているので差額の320万円が修正申告での相続税となります。

また、修正申告の場合、延滞税(令和6年の場合、年2.4%)と過少申告加算税(10%)も追加でかかることになります(約40万円)。追徴税額は合計で約360万円となりました。

税理士からは、「税務調査に素直に応じたので加算税が過少申告加算税10%で済んだけれど、仮装隠蔽になると重加算税35%かかるところだったからよかったね」と言われましたが屁のツッパリにもなりません。とにかく「悔しい!」、この一言に尽きます。

では、Aさんのように、亡き母もきっと望んでいないであろうこのような形で追徴課税をされないようにするためには、どうすればよかったのでしょうか?

Aさんはどうすればよかったのか?

まず、この2,000万円の通帳の存在を知らなかった場合には、当初の申告から相続財産として申告しておけば、追徴ということはありませんでした。納得するかどうかは別として……。

続いて、母親への生活費や仕送りが、「贈与」ではなく、「預けた」ということであれば、相続財産として認定を受けなかった可能性もあります。

「贈与」ということが成立するためには、通帳やお金の「管理・支配・運用」が誰にあるかということが必要になります。今回家に入れたお金は、結局母親がその通帳を作成し「管理・支配・運用」していたためAさんの財産という主張は難しいと考えられます。

しかし、たとえばAさん名義の通帳にAさんが毎月5万円入金しますが、通帳は渡さずにキャッシュカードだけを母親に渡し、母親は必要に応じて生活費として消費していれば、Aさんが母親に贈与ということではなく、キャッシュカードを預けたということや、通帳の管理等はAさんが行ったということで贈与に該当せず、相続財産にはならなかった可能性もあります。

「預けた」と認められるために税務署と争った裁判事例

預けたかどうか争われた事例で大阪国税不服審判所の非公開裁決事例(平成27年11月4日)があります。

相続人が亡くなった母にお金を送っており、その総額がおよそ5,000万円ありました。この5,000万円は相続人のものであり、相続財産ではない、と主張して税務署と食い違い、国税不服審判所で争われた事例です。

その預貯金等の契約名義人は母親であり、これを管理・運用していたのも母親でした。結果として、母には生前に給与収入や年金などの収入があったこと、相続人の収入の状況からみても5,000万円もの大金を母に預けたとはいえない状況であるなどから、相続人が負けてしまいました。

通帳の流れや、名義預金、逆名義預金と言われるものは税務署にはすぐにわかってしまいます。この場合、通帳の管理状況や、収入の状況などがポイントとなります。生活費や仕送りで追徴課税とならないように、申告する際には税理士によく相談してみましょう。

山口 拓也

辻・本郷 税理士法人 シニアパートナー

税理士

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