年金受給額、5年で「年20万円」減少…自力で貯めようにも手取り「22万円」の残酷
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月21日 20時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
厚生労働省のレポート「令和4年 賃金構造基本調査」によると、日本のサラリーマンで、いわゆる平社員の平均給与(所定内給与額)は28万1,600円です。本記事では平均給与、そして平均年金受給額について見ていきましょう。
「手取り22万円」でお金は貯まらない
“高齢期の就労の拡大等を踏まえ、高齢者が自身の就労状況等に合わせて年金受給の方法を選択できるよう、繰下げ制度について、より柔軟で使いやすいものとするための見直しを行います。”(厚生労働省ホームページ)
高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの定年引上げや継続雇用制度の導入などが始まりました。就業期間の延長にともない、年金受給開始時期の上限も75歳に引き上げられています(令和4年4月から適用)。
人生100年時代となった今、乱暴な言い方をすれば「死ぬまで働く」が現実味を帯びてきたといえます。しかし「働いてお金を貯めて将来安心!」かというと、案外そうでもないようです。
厚生労働省のレポート「令和4年 賃金構造基本調査」によると、日本のサラリーマンで、いわゆる平社員の平均給与(所定内給与額)は28万1,600円(平均年齢41.1歳、平均勤続年数10.4年)です。
月給28万円となると手取りは22万円ほどでしょうか。家賃は手取りの1/3から1/4くらいが良いとされていることを考えると、7万円ほどの賃貸が最適といえるでしょう。都内周辺の1人暮らしの家賃相場は1Kなら7万~8万円ですから、都内での暮らしは問題なさそうですが、そのほかの支出を考慮すると、自由に使えるお金はわずかではないでしょうか。
最新の1世帯あたりの1ヵ月間の収入と支出を見ていくと(2023年4月~6月期)、単身世帯の消費支出は15万3,027円となっています。しかしこの数字はあくまで全国平均。都内暮らしとなるとさらなる支出は避けられないでしょう。
「令和4年 賃金構造基本統計調査」によると、初任給は大卒で22万8,500円。社会保険料などを引かれたら、手取りは18万円ほどになる状況です。奨学金もあれば実生活は相当に厳しいものになります。
“昨年度大学を卒業したAさん。奨学金制度を利用し某有名大学に進学、社会人になるとともに都内で1人暮らしを始め、システムエンジニアとして新社会人のスタートを切った。
「毎月2万円、15年間かけて返済していく予定です。ボーナスが入ったら、それも返済に充てるつもりなので、実際はもっと短くなると思いますが」”(ゴールドオンライン連載より)
65歳以上世帯の「年金受給額」「支出額」はいかに
「老後2,000万円不足する」「いや、余裕がある暮らしには3,500万円は必要だ」「そんなには必要ないはずだ」……。老後資金にまつわる様々な論争が存在します。
老後の貯金や支出も気になるところです。厚生労働省「令和4年 年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)」を見ていきましょう。
65歳以上の配偶者あり世帯において、貯蓄額階級別構成割合をみると「100~300万円」が14.0%と最も高く、次いで「700~1,000万円」が11.1%となっています。では、毎月の支出はいくらぐらいになるのでしょうか。
■支出額状況
配偶者あり世帯の本人及び配偶者の支出額階級(月額)別構成割合をみると、「20~25万円」が23.0%と最も高く、「15~20万円」が21.2%と続きます。支出額(月額)の中央値は21.2万円です。
配偶者なし世帯の本人の支出額階級(月額)別構成割合をみると、男性では「10~15万円」が23.7%と最も高く、「15~20万円」が19.1%と続きます。女性では「10~15万円」が25.3%と最も高く、「5~10万円」が23.1%と続きます。単身者の支出額(月額)の中央値は男性14.3万円、女性12.2万円となっています。
では支出金額に対し、もらっている年金はいくらなのでしょうか。
■受給状況
公的年金(共済組合の年金、恩給を含む)の年金額階級別構成割合をみると、男性では「200~300万円」が47.4%、「100~200万円」が31.8%となっています。女性では「100~200万円」が37.5%、「75~100万円」が26.7%。男女ともに、年齢が高いほど金額が高くなる傾向がみられます。
ちなみに現役時代、正社員中心だった男性の平均年金額は192.6万円。女性の場合は120.7万円となっています。5年前の調査と比べ、男女ともに20万円ほど減少しました(平成29年調査では、男性208.4万円/女性139.3万円)。
「年金制度が破綻していることは全くありません。」
厚労省のホームページでは「年金、将来、自分たちも本当にもらえるのか?」という不安について回答していました。
“Q.少子高齢化が進行すると、若い世代の年金額は減ってしまうのではないでしょうか?
A.年金制度は、5年に一度、健康診断のような形で行う「公的年金の財政検証」によって100年先までの見通しを検証しており、令和元年の財政検証では、若い世代が将来受け取る年金は、経済成長と労働参加が進むケースでは、引き続き、将来の時点で働いている人々の賃金の50%を上回る見込みです。年金制度が破綻している、若い世代は年金を受け取れない、といったことは全くありません。”
一方、厚労省「近年の経済成長率と賃金上昇率の動向 ーバブル崩壊後の直近20年間の動向を中心にー」(2017年)では「賃金上昇率はともにマイナスとなっている」と明確に示されており、「1人当たり賃金は、被用者全体では減少傾向にある」と続いています。都道府県別の最低賃金は上昇の一途をたどっていますが、労働者がその恩恵を受けているとは捉えがたい状況です。
トドメに下記の言葉が記されています。
「過去20年平均でみると、名目経済成長率はプラスとなっているが、労働分配にあたる雇用者報酬やその内訳となる賃金・俸給はマイナスとなっている。」
「将来の時点で働いている人々の賃金の50%を上回る見込み」とは一体、何でしょうか。新NISAを利用した資産運用の推奨などもされていますが、国民の不安を解消する仕組みづくりが求められています。
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