「理解できない投資に金を出すな」…“投資の神様”ウォーレン・バフェットの名言を実践するのが簡単ではない〈意外な理由〉
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月8日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
投資をやるうえで、避けられるリスクがあるなら避けておきたいもの。そのために必要なことは、「事業内容を自分で理解できる会社の株を買うこと」と、会社員投資家である奥山月仁氏は言います。奥山氏の著書『個人投資家入門byエナフン 株で勝つためのルール77』(日経BP)より、詳しく見ていきましょう。
ユーザーとして満足した会社、家族のお気に入りの店を調べる
私はユーザーとして満足のいく体験をした時、必ずその会社のことを調べることにしている。大化け株は身近な所に潜んでいるからだ。
というのも、過去に次のような失敗の経験があったからだ。初めてビジネスホテルの「ドーミーイン」に泊まった私は、ワンランク上の部屋と大浴場、そしておいしい朝食に大満足して、ドーミーインを展開している共立メンテナンス(9616)を450円ほどで買った。
しかし、リーマンショックの傷跡が残っていた当時の経済状況を考慮して、「デフレに苦しむホテル業界で急成長は難しいだろう」と考えを変え、3割ほど値上がりした時点で売ってしまった。意に反して、同社株はその後も上がり続け、2015年12月には5,325円まで上昇し、「テンバガー(10倍株)」になった。
顧客のニーズをしっかりとつかんだ企業が成長軌道に乗った時の株価の上昇には目を見張るものがある。2倍や3倍、共立メンテのように夢の10倍もある。デフレなどの外部環境のマイナス要因は、長期的に見れば買い時をもたらしてくれる。このことも、この失敗で胸に刻んだ。
10年ほど前に妻から教えてもらったおしゃれな100円ショップのセリア(2782)に至っては、底値から100倍高という驚異的な成長を遂げた。ただ、極めて残念なことに私はこの株を買っていない。当時は、妻の買い物好きを強みとは考えていなかったのだ。
この教訓として、家族の強みも整理しておくことを強くお勧めする。娘さんに教えてもらった子供向け関連の企業が大化けする可能性だってあるのだから。
〈大化け株〉には特徴がある
身近な株を買うなら次のような特徴をいくつか併せ持つ株を買うとよい。
①他社技術の利用が得意
株式投資で魅力的な企業は、意外にも革新技術の提供側ではなく、利用側に多い。例えばアップルのiPhoneは、数多くの日本企業の技術に支えられている。もちろん、最も儲かっているのは日本企業ではなく、アップルのほうだ。株価は1999年以降100倍以上に上昇し、時価総額は世界一となった。
②右肩上がりの棒グラフ
私は企業のホームページを調べる中で、長期にわたって右肩上がりの棒グラフを見ると、つい興奮してしまう。私の大好きな企業は、[図表1]に示した、情報システム構築支援を手掛けるコムチュア(3844)のように創業以来10年以上着々と成長を続け、上場後もかなりの長期間、その傾向を維持しているタイプだ。このようなグラフを見つけたら、ピンとくるようにしよう。
③まるで話題に上らない
株価は、長期的には、企業の成長と割安な株価の是正という2つの要因で上昇する(➡31)。同じ成長株を買うなら、株価は割安なほうがいい。今市場で人気がない割安な株が、今後もずっと人気がないわけではない。あなたの独自の視点からは有望なのに、市場で話題に上っていない株が見つかれば、じっと持ち続けよう。将来、市場がその成長性に気付いた頃には、株価は数倍に上昇しているはずだ。
④行列、売り切れ、予約待ち
これまで鳴かず飛ばずだった企業が、ある日、とても上手に市場のニーズをつかむことがある。株価は急上昇し、一躍スター株に変身するが、そんな夢のような出来事の兆しは身近なところから始まる。欲しい商品がすぐ手に入らず、予約待ちや行列に並ばないと買えない。そんな光景を目にしたら、その商品を提供している会社のことを調査するとよい。
⑤常習性や中毒性のある商品
食品や外食の銘柄を狙うなら、おいしさよりも、つい口に入れてしまう常習性や中毒性に着目しよう。コーヒー、たばこ、ポテトチップス、トンカツ、激辛、健康食品……。常習性の高い食料品は必ずしもおいしさで買っているわけではないが、提供企業の株価は長期的に堅調なことが多い。同じ理由で、ゲームやSNS、アニメなどのついハマりがちな分野から、思わぬ大化け株が出る可能性も忘れてはいけない。
⑥有望株の周辺に次の候補がある
21世紀に入ってから、小売り・外食セクターから、テンバガー(10倍株)が次々と登場した。背景には、複数の技術変化や構造変化がある。高速道路やバイパスの整備に伴う人の移動の変化、安価で工期の短い乾式工法の普及によるスピーディーな多店舗展開、規模が大きいほど販売データが蓄積できるPOS(販売時点情報管理)システムの普及などだ。これらが、新興の郊外型チェーン店に有利に働いた。こうした変化は、同時に複数の関連企業にも大きな変化をもたらす。
たまたま有望株を1つ見つけたら、成長構造を吟味し、よく似た構造の関連企業を探すと、次の大化け株を見つけられる可能性がある。今なら、AI(人工知能)や、地球環境問題に取り組む企業などに十分に注意を払うべきだろう。
理解できない会社には投資しない
「投資は合理的であらねばならない。理解できないなら金を出すな」。これは、米国の偉大な投資家、ウォーレン・バフェットの名言の1つである。
この言葉の肝は「理解」の2文字にある。投資家にとっての最大の弱みは「理解できない」ことであるからだ。繰り返し強調してきたが、株式投資では事業内容を自分で理解できる会社の株を買うことが原則だ。
事業内容が理解できないなら、無理に理解できるようになる必要はない。バフェットが説いたようにその企業の株を買わなければよい。そうすることによって、「理解できない」という克服困難な弱みと正面から向き合わずに避けて通ることができる。
これはシンプルで合理的な考え方だが、実践するのはそう簡単ではない。人間には、よく分からないものを魅力的と思い、分かりやすいものをつまらないと感じる心理的な傾向があるからだ。理解できないものには投資しないというルールを堅持するには、最初は魅力的に映った企業について理解できない点を明確にして自覚することが求められる。「理解できないことがこんなにある」と気付けば、リスクの高さも確認できるはずだ。
理解できない点を明確にする具体的な方法として、私は常に[図表2]に示した5つの問いを検討することにしている。決算書や会社資料を読み込んでウラ(確証)を取り、それでも明確に答えることのできない問いが残る場合は「様子見」と判断して大きな投資はしない。
奥山 月仁 会社員投資家
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