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90歳の母を老人ホームへ…「5,000万円分の金」を売却した年金月14万円の65歳男性、税務調査で撃沈【税理士が警告】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月14日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

株式などとは違い、価値が暴落するリスクが低く“安全”とされる「金」。価格は20年以上も上昇を続けている人気の資産です。しかし、そんな金を売却する際は注意が必要だと、多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士はいいます。税務調査によって多額の追徴税額を課されたAさんの事例をもとに、金売却時の注意点をみていきましょう。

いまがチャンス!金を売却→税務調査の対象に…

定年退職を機に、かねてから計画していた自宅の大規模リフォームを行うことにしたAさん(65歳・男性)。このタイミングで高齢の母親(90歳)が有料老人ホームに入ることになったほか、初孫のお祝いなどもあり、まとまったお金が必要になりました。

現在の主な収入源は月14万円の年金ですが、Aさんは35年ほど前から定期的に金を購入しています。そこで、自分と妻の老後資金も兼ねて5,000万円分の「金」の売却を決意しました。購入したときよりもだいぶ高騰していたので、Aさんは「いまが売り時」と判断したのです。

無事に換金を終え、上記の必要な費用を支払ったAさんは、残ったお金で悠々自適なセカンドライフを満喫していました。ところが……。

ある日、Aさんのもとに税務著から連絡が入りました。どうやら、「金の売却の申告が漏れているのではないか」というのです。実はAさん、金の売却については税務署にバレないだろうと考え、申告をしていなかったそうです。

この結果、Aさんは本来納めるべき税金のほか、加算税や延滞税などのペナルティなども含めると1,000万円の追徴課税を受けることになってしまいました。

“金の価値は世界共通で安全” …祖父の言葉を信じていたAさん

祖父が言っていた「金の価値は世界共通で安全」という言葉を信じ、Aさんは会社員時代からボーナスが入ったタイミングなど定期的に金を購入していました。株式投資などは「相場が激しく変動する」と怖くてできなかったそうですが、金は“有事の金”といわれるほど価格暴落のリスクが低く、安心して購入を続けていたそうです。

やがて定年を迎え、先述の理由からまとまったお金が必要だと感じたAさん。金相場を見てみると、購入金額の総額約2,000万円に対し、価格は約1億円に跳ね上がっていました。

5,000万円分の売却を検討したところ、売却益は約4,000万円になるとのこと。この売却益について税金の試算をしたところ、所得税・住民税等で800万円ほどの納付が必要であることがわかりました。Aさんは「え! こんなにかかるのか!」と衝撃を受けます。

Aさんは、「とはいえ、購入したのはずいぶん前だし、申告しなくてもバレないんじゃないか? 昔知り合いから申告しなくても大丈夫だったとか、そんな話を聞いたことがあるぞ」と考え、税務署への申告を行わなかったそうです。

「金の売却」が税務署に“バレた”ワケ

そもそも、なぜ税務署はAさんの申告漏れに気づいたのでしょうか。その理由のひとつに、「ルールの厳格化」があります。実は2012年より、貴金属売却時のルールが厳しくなりました。課税逃れを防ぐ目的で、「金地金(きんじがね)等の譲渡の対価の支払調書制度」が施行されたのです。

この制度は、金の取扱業者を通じて200万円超の金地金を売却・交換した場合、マイナンバーを含めた支払調書が税務署に提出されるというものです。

これを読むと、「じゃあ200万円以下の売却であれば申告せずに済むのか」と思われるかもしれません。しかし、200万円以下の取引であっても、金を売却する際は本人確認の必要があります。

さらに、金地金にはシリアルナンバーがついており、このシリアルナンバーに購入者情報が紐づけられているため、税務署はここから金取引を把握することも可能です。

したがって、金額に関係なく、金の売却については税務署に把握されていると考えたほうが無難です。

金の売却は「確定申告」が必須

Aさんのように、個人が金を所持している場合、持っていた金を売却して得た所得は「譲渡所得」として、確定申告が必要となります。

※ 参考:国税庁HP「金地金の譲渡による所得」

土地や株式を売ったときも譲渡所得ですが、土地や株式の場合は「分離課税」として、後述する総合課税の所得とは切り離して税金を計算します。

具体的には、株式の売却益に対しては20.315%、土地の売却益に対しては長期(5年超):20.315%、短期(5年以下):39.63%の所得税・所得税が課されます。

一方、金については「総合課税」となっており、給与所得など他の所得とまとめて課税されます。そのため、所得が高くなるほど税率が高くなる超過累進課税となります。

金売却時にかかる所得税は、その金の「所有期間」によって計算方法が変わります。5年以内は「短期譲渡所得」、5年以上は「長期譲渡所得」に分類され、それぞれ下記の式によって求められます。

短期譲渡所得(所有期間5年以内) ……売却金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除50万円

長期譲渡所得(所有期間5年以上) ……(売却金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除50万円)×2分の1

ただし、年金以外の所得が20万円以下である場合は申告は不要です。

20年以上続く「金価格」の高騰…いったいなぜ?

金の平均買取価格は近年高騰しており、2000年は1,014円※1であったのに対し、2023年では8,834円※2と約9倍近く跳ね上がっています。今年に入ってからもなお金価格は上昇を続けており、過去最高値となっています。

1999年の最低買取価格は917円でしたから、金の価値が10倍以上となっている人もいることでしょう。

※1、※2 いずれも税抜価格。

ここ20年ほど金の価値が上昇している理由については、主に

・NYの同時多発テロ(2001年)

・リーマン・ショックによる金融危機(2008年)

・新型コロナウイルス流行によるコロナ・ショック(2020年)

・ロシアによるウクライナ侵攻(2022年)

などが影響しているといわれています。いずれも株式市場が下落し、社会不安が高まったことにより、「安全資産」といわれる金を購入する人が増え、金相場が上昇したと考えられます。

現在、米国や日本の株式市場は好調ですが、今後も経済の先行きが不透明な状況が続く限り、安全資産とされる金の需要はしばらく高いままであるとみられます。

金や暗号通貨…税務署は「価値が上がっている資産」に目を光らせている!?

金相場が高騰するいま、税務署もそれにかかる申告について目を光らせており、申告漏れがないか重点的にチェックしています。また足元で価格が急騰している暗号資産も要注意です。

「故意に確定申告しなかった」=悪質であると判断された場合、Aさんのように重加算税が課せられますのでご注意ください。

また、「脱税」は刑事罰として懲役刑や罰金刑の対象となる可能性もあります。したがって、金を売却し利益が出た場合には必ず確定申告を行うようにしてください。

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

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