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「もはや勝ち組とは言えない…」国家公務員の給与に見える、日本の悲哀

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月11日 19時0分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

省庁に総合職として勤める国家公務員、通称キャリア官僚はエリートの象徴と言える存在です。しかし現在、「富と名声」を得られる職業ではない様子。国民の生活を担う国家公務員の給与と生活はどのような実情にあるのでしょうか。

「キャリア官僚」ハードさに比例しない給与額

人事院が発表している『令和5年 国家公務員給与等実態調査の結果概要』によると、行政事務を行う職員の平均給与月額は41万2,747円(平均年齢42.3歳)。残業代は含まれていません。

一方、厚生労働省は『令和5年 賃金構造基本統計調査』にて、正社員・正職員の賃金を月額33万6,300円(平均年齢42.7歳)と公表しています。

国家公務員の給与は、世間一般の給与と比べれば高い水準であることはわかります。しかし彼らはやはり、東京大学をはじめとした有名難関大学を卒業していることがほとんどです。コンサルや商社といった大企業で支払われる給与と比べると、「高給取り」とは言い難いでしょう。

例えば三菱商事の平均年収(2023年3月期)は、有価証券報告書から「1,939万3,985円(平均年齢42.9歳)」であることがわかっています(なお、有価証券報告書からわかる年収には残業代が含まれており、ボーナスも含まれていることが多いと言われます)。

国家公務員の平均年収はそれほどにはなりません。まず残業を考慮しなければ、年間4.45ヵ月分の給与がボーナスとして支給されるため、41万円×16.45ヵ月で約674万円。さらに月に50時間の残業をつけられた場合、月給41万円であれば基礎賃金は2,560円であるので、約16万円の残業代を得ることになります。毎月得たとしてプラス192万円となり、「866万円」と算出されます。

ここで残業時間を50時間としたのは、それ以上働いても「50時間分しか払ってもらえない」といった声が聞かれたためです。

実際には、さらに長い間働いている方も多いでしょう。コロナ禍では「超過勤務時間が月200時間以上となった職員のいる府省庁の数が16にものぼる」との答弁書が閣議決定され、大きな問題となりました。内閣官房と経済産業省では300時間以上となった職員もいたということです。

しかし、株式会社ワーク・ライフバランスが実施した「コロナ禍における中央省庁の残業代支払い実態調査」には、「超過勤務した分を申し出たが支払うことはできないと言われた」「テレワークは国際会議等の理由があれば残業がつくが、基本的に認められないと言われた」「3割支給されている程度で前と全く変わっていません。噂では、予算がないからとのことですが、予算がないなら残業させないでほしい」といった回答がみられます。

重い責務を背負い、身を粉にして働いている官僚が、働いた時間に応じた残業代をもらえないのでは、国家の運営に支障が出ても当然と言えるかもしれません。

優秀な学生が「国家公務員を目指さない」日本の悲哀

「大金を稼ぎたいなら民間の企業に就職したほうがよい」ことが明白であるなか、それでも国家公務員となった職員たちには、国民の生活へ貢献することへの使命感があるに違いありません。

人事院が2021年度、就職活動を終えた東京大や京都大など15大学の4年生と大学院2年生に実施した意識調査では、国家公務員の仕事のイメージについて「周囲の人に誇れる職業」との回答が7割以上となりました。

その使命感に沿える就労環境の整備が求められます。同調査で国家公務員以外を選択した学生はが職業として国家公務員を選ばなかった理由は、「採用試験の勉強や準備が大変」が約8割。「業務内容をこなすことが大変そう」「業務内容に魅力を感じなかった」「超過勤務や深夜・早朝に及ぶ勤務が多そう」といった業務内容や勤務環境に関する項目が6割前後でした。

現状では「そもそも目指す時点でハードルが高い」上に、「働き始めてからも困難が多い」ため志望者が減少傾向にあるのです。

2023年度国家公務員採用総合職試験(春)の合格者数は2,027人で倍率は7.1倍。申込者は1万4,372人と昨年度より1,000人近く減少し、10年前の3分の2程度となりました。

2021年の国家公務員採用試験では、倍率「7.8倍」と当時の過去最低を記録したことに対し当時の加藤勝信官房長官が「危機感を持っている」と発言し、減少の要因として「長時間勤務の実態などがある」と指摘したことが話題になりました。

そこで人事院は『令和5年 人事院勧告・報告について』の中で、さまざまな改善策を挙げています。

まず基本的な考え方として挙げられているのは、「公務組織を支える多様で有為な人材の確保のための一体的な取組」「職員個々の成長を通じた組織パフォーマンスの向上施策」「多様なワークスタイル・ライフスタイル実現とWell-beingの土台となる環境整備」の三点です。

人材確保のためには給与上昇や非常勤職員制度の運用についての検討、受験のしやすいオンライン方式を活用した採用試験の実施の検討といった取り組みが挙げられています。

負のイメージの払拭には時間がかかるかもしれません。ですが改革を経て、国家公務員が“優秀な人材”にとって魅力のある職業とならなければ、日本の未来がますます暗くなることは想像に難くありません。

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