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「なんか最近口がクサいかも」は重篤な病気のサイン?注意すべき〈病的口臭〉の特徴とは【内科専門医が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月17日 7時0分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

朝起きた時や人と話す時など、ふとした瞬間に気になる「口臭」。病気のサインであるという話も聞きますが、心配すべき口臭とはどのようなものなのでしょうか? 本記事では米国老年医学の専門医である山田悠史氏による著書『健康の大疑問』(マガジンハウス)から一部抜粋して、「気にすべき口臭・気にしなくてよい口臭」について解説します。

口臭は気にしなくていい?

新型コロナウイルス感染症の流行を受け、多くの方がマスクをつけるようになりました。マスクをつけるようになって「自分の口臭が気になるようになった」という方も少なくないかもしれません。食後の臭いならまだしも、「何も食べていないのに口が臭い」「病気かもしれない」などと考える方もいらっしゃるかもしれません。

そもそも口臭は病気のサインなのでしょうか。一般的に、口臭は、生理的口臭、病的口臭、主観的口臭の三つに分けられます。それぞれどのようなものか、説明します。

1.心配がいらない「生理的口臭」

まず一つ目は、生理的口臭と呼ばれるもので、基本的に心配の必要はありません。これは多くの方が経験していると思いますが、朝起きた時に強い臭いを感じるというものです。でも朝歯みがきをすればそれ以降はスッキリ。そんな経験、ありませんか?

これは、皆にありうる「生理的」な口臭で、病的なものではありません。朝起きた後に歯みがきをしたり、朝食を食べたりすることで消えていく一時的なものです。

寝ている間というのは、唾液の流れが少なくなり、細菌が口の中で繁殖しやすくなります。口臭は、この細菌によって作られる化学物質から生じると考えられています。実際、全体で見ても、口臭の8割以上は口内由来であることが知られています※1

舌の上の細かな溝の間や歯の間に食物が残っていると、細菌が臭いを作るもととなり、臭いがより悪化することも知られています。寝る前の入念なブラッシングが口臭を防ぐために大切なことが分かります。

しかし、どんなに口臭が強くても、朝食をとったり、ブラッシングをしたりすることで、再び唾液が出るようになり、細菌が洗い出され、口臭はおさまります。このように、朝にだけ感じられ、ブラッシング後に消える口臭はあまり心配のいらない口臭といえます。

なお、女性の場合には、月経中に唾液分泌が減りやすくなり、月経中だけ口臭が気になる場合があることも知られています※2

また、生理的な口臭の原因は他にもあります。分かりやすいところではタバコやアルコール、食品でいえばニンニクや玉ねぎなどを摂取した後にも口臭は生じえます。これは摂取したもの自体の臭いによるものであり、これまで述べてきたメカニズムとは異なりますが、これも同様に、心配のいらない口臭といえるでしょう。

2.心配すべき「病的口臭」

裏を返せば、時間帯や食事摂取によらず口臭が続く場合には、少し心配すべきかもしれません。

この心配すべき口臭は、病的口臭と呼ばれます。病的口臭は、特定の病気によって生じる口臭で、生理的口臭との大きな相違点は、タバコなどの嗜好がなくても存在し、ブラッシングなどをしても消えない点です。そこに病気があり続ける限り、臭いも続くというわけです。

この病的口臭は、原因となっている体の部位によってさらに細かく分類することができます。なかでもとりわけ多いのは、口由来の病的口臭です。

例えば、歯周病など口の中で細菌感染が起こっており、歯肉でたくさんの細菌が繁殖してしまっているケースでは、強い臭いが出ることがあります。また、虫歯があったり、歯並びが悪く歯間に食べ物が詰まってしまったりというような方も強い口臭が出ることがあります。

つまり、口の中のケアを怠ってしまっている場合、虫歯が目立つというような場合にはそれが口臭の原因かもしれません。

また、「ドライマウス」と呼ばれる病態でも口臭が厳しくなることがあります。この「ドライマウス」は、読んで字の如ごとく、口が乾くという状態を指しますが、シェーグレン症候群と呼ばれる病気や、花粉症薬、うつ病の薬などでも生じることがあります。

例えば花粉症の薬を飲み始めてから口臭が気になるようになったという場合、薬をやめて元に戻るかを試すのも手です。このドライマウスは、虫歯の原因にもなりえます。口が乾きやすい、すぐに水が欲しくなる、などといった症状がある場合には注意が必要といえます。

さらに重篤なケースとして、口の奥の扁桃という場所の細菌感染症や口や喉のがんでも口臭をきたすことがあります※3。こうした場合には、痛みや発熱、首にしこりがある、体重が減るなどの症状が見られることも多くなります。

このように、口の臭いだけでなく痛みやしこり、体重減少といった症状があれば病気が隠れている可能性があり、病院受診が勧められます。特に口の中や喉の奥のがんはタバコが強い危険因子となりますので、喫煙者では注意が必要です。

口以外の病気が原因になることは比較的稀まれですが、そのようなこともありえます。口以外で多いのは、口と距離の近い鼻の病気です。特に、副鼻腔炎と呼ばれる、鼻の奥の構造に生じる炎症、感染症で、口臭が出やすくなることが知られています。強い鼻づまりや顔面の痛み、熱が続くという場合には、このような病気を疑う必要があります。

それ以外に、肺の感染症や食道・胃の病気でも口臭が生じることがありますが、とても稀です。咳や痰が続くという場合には肺の病気の存在が示唆され、胸焼けや胃の痛みが続く場合には食道・胃の病気の存在が考えられますので、あわせて注意すべき症状といえるかもしれません。

最後に、全身の病気でも口臭が出ることがある※4ので、ご紹介します。例えば、よく知られているのが、肝硬変という病気です。これは、ウイルスの感染症や長期にわたる飲酒で生じることのある病気です。肝硬変で生じる口臭は「肝性口臭」と呼ばれており、独特な臭いがするので、内科医ならすぐに気がつくかもしれません。

また、腎臓病や糖尿病の悪化でも口臭につながることがあります。糖尿病の悪化の場合にはどこか甘い匂いがするので、口臭とは捉えられないかもしれません。肝臓や腎臓の病気では、強い足のむくみが出る、息苦しさが出る場合があり、病気を疑うきっかけになりえます。

このように、口臭に加えて、その他の症状がある場合には注意が必要です。

3.気にし過ぎなだけ…「主観的口臭」

もう一つ、最後にご紹介するのが、主観的口臭あるいは偽口臭と呼ばれる口臭です。これは、実際には臭いはせず、他人からは確認できないものの、主観的に口臭が気になってしまっている状態のことを指します。実は、口臭を理由に病院受診する方の約4分の1がこれに該当すると報告されています※5

その多くが精神心理的な認知の問題で、歯みがきを過剰に行ったり、うがいやブレスケアの使用を頻繁にしたりといった行動変容が見られることも多いという特徴があります※6

また、稀に神経の病気やビタミンの欠乏でも、本当は臭いがないのに臭いがあると錯覚する症状が出ることがあります。

さらにいえば、新型コロナウイルス感染症でも、こうした錯覚が出ることがありえます。ただし、コロナウイルス感染症でこのような症状が出る場合、多くは同時か先行して発熱や咳といった他の症状が見られますので、そのような症状なしに不用意に感染を心配する必要はありません。

いずれにせよ、口臭が気になる場合に、同居のご家族やよく一緒にいる恋人、友人に確認し、臭いが気にならないと言われたら、それは主観的口臭の可能性が高く、病的口臭の心配はそう必要ではないでしょう。

病気のサインを見逃さない!「口臭チェックリスト」

以下の質問に該当する場合には病気のサインかもしれません。病院や歯科への受診をお勧めします。

① 時間帯や食事摂取、嗜好品によらない口臭があるか? ② 口の中のケアを怠っていないか? ③ 喉の痛み、鼻づまり、発熱や体重減少といった口臭以外の症状があるか? ④ その口臭は、家族や友人にも指摘されるか?

※1:Fedorowicz Z, Aljufairi H, Nasser M, Outhouse TL, Pedrazzi V. Mouthrinses for the treatment of halitosis. Cochrane Database Syst. Rev.2008. DOI:10.1002/14651858.CD006701.pub2. ※2:Tonzetich J. Production and Origin of Oral Malodor: A Review of Mechanisms and Methods of Analysis. J Periodontol 1977.DOI:10.1902/jop.1977.48.1.13. ※3:Ferguson M, Aydin M, Mickel J. Halitosis and the tonsils: A review of management. Otolaryngol. - Head Neck Surg. (United States). 2014.DOI:10.1177/0194599814544881. ※4:Preti G, Clark L, Cowart BJ, et al. Non-Oral Etiologies of Oral Malodor and Altered Chemosensation. J Periodontol 1992. DOI:10.1902/jop.1992.63.9.790. ※5:Rosenberg M, Kozlovsky A, Gelernter I, et al. Self-estimation of Oral Malodor. J Dent Res 1995. DOI:10.1177/00220345950740091201. ※6:Falcão DP, Vieira CN, Batista De Amorim RF. Breaking paradigms: A new definition for halitosis in the context of pseudo-halitosis and halitophobia. J. Breath Res. 2012. DOI:10.1088/1752-7155/6/1/017105.

山田 悠史

米国老年医学・内科専門医

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