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老後の資金不足を解消するのだけが目的ではない…定年後も働き続けることで得られる「お金より大切なもの」とは?

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月26日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

年金だけで老後の暮らしが十分成り立つという人は一握りで、多くの場合は資金が不足します。資金不足を解消する手段のひとつは「老後も働き続けること」ですが、現役世代とシニアとでは、勤労観が変わるといいます。本記事では『一生、月5万円以上の配当を手に入れる! シニアが無理なく儲ける株投資の本』(日本実業出版社)から、著者の〈川島睦保氏〉がシニアにとっての「働く目的・意義」について解説していきます。

老後も働き続けて「老後をなくす」!?

住友生命のサイト記事「老後の生活費は平均いくら? 資金計画のポイント3つを解説」によると、平均的な老齢年金額は夫婦で月額約22万円であり、それから老後の世帯生活費の平均月額の約28万円を差し引くと、毎月約6万円が不足する。

この不足額を埋めるための現実的な選択は、①働き続けるか、②資産運用するか、の二択しかない。このうち①については、仕事で稼ぐ=死ぬまで月6万円稼げる仕事を現役時代に準備するということだ。

平均的な老後生活の場合、仕事でひと月当たり6万円稼ぐことができれば、「月当たり不足額(約0万円)=生活費(28万円)-公的年金(22万円)-仕事の稼ぎ(6万円)」となって、不足額はゼロとなる。

これは「働き続ける」ことで「老後をなくす」作戦だ。言葉遊びのようだが、公的年金のほかに月6万円の労働収入がずっと維持できれば、老後資金の不足を心配する必要がなくなる。

ところで65歳以降も働き続けるといっても、そんな都合の良い仕事や職場が簡単に見つかるのだろうか。「そんなのないから頭を悩ましているのだ」。お叱りの声が聞こえてきそうだ。

しかし「働き続ける」といっても、現役時代のように月給40万円や50万円のフルタイムの仕事に就くわけではない。月に6万円を稼ぐ仕事ならハードルが下がる。

実際、多くの人が農業や運送業、施設警備や交通誘導、マンション清掃、販売業、接客業などで働いて、老後の資金の不足を補っている。

とくに警備や清掃は、シニア向け求人が多い。どちらも農作業と同じく屋外で立ったまま仕事をする時間が長く、体力の消耗が激しいが、体力に自信がある人なら挑戦する価値はある。

警備の仕事は、商業施設やオフィスビルなどの安全を守るのが目的だが、時には女性や子どものエスコートなどの仕事もある。仕事の内容はかなりハードだが、時給は悪くない。

ネットの広告を見ると、東京・神奈川エリアの交通誘導警備員の募集広告には「日給1万円~、夜勤1万2,500円~」と記されている。「勤務時間は8:00~17:00(1時間休憩)」。しかも3日間の研修があり、警備の仕事が初めての人も安心と記されている。仕事に就く前に3日間の研修に参加すれば2万円が支給される、という。

高齢になってからの警備員の仕事は肉体的・精神的にかなり過酷だが、この仕事を月に6日間だけやれば目標の6万円は稼げる。

スーパーやコンビニで時給1,000円(東京や神奈川など)のアルバイトをする場合、1日4時間×15日間働けば目標の6万円に到達する。夫婦2人でアルバイトすればそれぞれ7.5日間働くだけで済む。

退職後は仕事の目的や意義が変わってくる

退職後に働く場合、その目的や意義が変わってくる。その勤労観も若い頃とは大きく変わってしかるべきだ。

最近では定年後に現役のときとはまったく異なる新しい仕事やボランティアを通して、近隣の身近な人々に貢献したいと考える人が増えている。

定年後も働き続けることによって、体や心の健康につなげたいと希望する人が増えている。家庭に引きこもるのに比べれば、社会へ貢献している、社会とつながっているという前向きな気持ちを持つことができる。それによって、いつまでも精神的な若さや肉体的な健康を維持することができる。

NPO法人「老いの工学研究所」の川口雅裕理事長は「老い」の専門家だ。高齢期の幸福感を住環境や地域コミュニティーとの関係から分析し続けている。その著書『なが生きしたけりゃ居場所が9割』(みらいパブリッシング)によると、高齢期のいちばんの課題は「意図せぬ孤独」だ。

それを解決するために、自分の役割や居場所を実感できるコミュニティーへの日常的な参加などを推奨している。「健康の秘訣は同世代で集まること」であり、それによるメリットは次のようなものだ。

・規則正しい生活につながる

・身だしなみや清潔感に気を配るようになる

・年寄り扱いされることがない

・心身の痛みやつらさをシェアできる

私の年齢になると、これらはどれもが健康維持に結びつく、と実感できる。働くことの主目的が、現役世代のおカネからシニア世代は健康や幸福感へと変わってきて当然なのである。

とはいえ、健康や体力を考慮すると、労働収入を老後資金のメインとして位置付けるのはリスクが高い。労働収入以外のもの、つまり資産運用で資金を確保する手立ても選択肢として用意しておく必要がある。

人生においていちばん大切なことは何だったか?

昔、高校の生物の教科書で学んだことで、なぜかいまでも覚えていることがある。それは「リービッヒの最小律」というものだ。

生物の成長速度や収量は、必要とされる栄養素のうち、与えられた量のもっとも少ないものに影響されるという学説だ。ドイツの化学者ユーストゥス・フォン・リービッヒが提唱したといわれる。

この説に対しては異論もあるようだが、専門バカ、バランスの悪さ、一点豪華主義への警告として、いまでも語り継がれている。

リービッヒの最小律を一般向けにわかりやすく解説したものが、「ドべネックの桶(あるいは樽)」(図表1)といわれるものだ。そういえば私も「リービッヒの最小律」という言葉よりも「ドべネックの桶(あるいは樽)」の図のイメージが脳裏に強く焼き付いていた。

この図は、人間や植物の成長を桶のなかに張られている水、桶の横板を養分や要素に見立てている。

人間や植物の成長の過程では、横板の丈の高さはバラバラだ。こうした状況では、たとえ数枚の横板がどれだけ高くても、それよりも低い横板があればそこから水がどんどん外へ漏れだしてしまう。

その桶はいちばん低い横板の部分までしか水を溜めることができない。結局、桶の水かさ(=人間や植物の成長)はいちばん背丈の低い横板(栄養素)によって決まることを示唆している。

米国の名門ハーバード大学ビジネススクールの卒業生の意識を定期的に追跡調査した結果がある。彼らの多くは米国ビジネス社会で大成功をおさめたエリートで、経済的にも超裕福な人々だ。

その引退世代である60~70歳代の卒業生に「人生においていちばん大切なことは何だったか」と尋ねたところ、学歴や勤勉、社会的な地位やおカネなどを抑えて、家族や友人との交流・交際という回答がいちばん初めにきたという。

これは私の勝手な推測だが、彼らの多くは家族や友人との交流・交際を犠牲にして、多額の年俸や社会的地位を得てきたのではないか。アンケート結果は、そうした自省が反映されているのかもしれない。

私たちの退職後の幸せもドべネックの桶と似たところがある。おカネがあって健康に恵まれていても、社会や家族から孤立し、人との絆や社会との係わりが乏しければ、幸せの度合いも低くなる。

定年後の働き方も、変なプライドや世間体から選択肢を狭めれば、人との絆や社会との係わりという栄養素が大きく低下してしまう。退職後の幸せも大きく目減りしてしまう。

交通警備員がいなければ道路の工事現場は成り立たない。歩行者も安全に通行できない。マンションの清掃員がいなければ、マンションの住人は快適な生活を送ることができない。建設現場の作業員がいなければ、ビル自体を建設することさえできない。

あらためて「仕事はすべて尊い営み」であることを再確認したい。どのような職種、仕事であっても一生懸命に取り組めば、社会的な意義を感じることができて、気持ちや意思が通じ合える友人にも出会えるはずだ。

「投資」によってシニアが必要なお金を手当てすることは、老後の不足額を埋めるための最有力の手段だが、それだけがすべてではないことは心得ておきたい。

川島 睦保 

フリージャーナリスト、翻訳家

※本記事は『一生、月5万円以上の配当を手に入れる! シニアが無理なく儲ける株投資の本』(日本実業出版社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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