【VW ポロ 長距離試乗】ロングドライブで際立つ圧倒的な剛性感と上質な乗り心地
&GP / 2018年6月2日 19時0分
【VW ポロ 長距離試乗】ロングドライブで際立つ圧倒的な剛性感と上質な乗り心地
「もう『ゴルフ』はいらないんじゃね?」…最近そんな会話が、自動車メディアに関わる人たちの間で飛び交っています。VW(フォルクスワーゲン)の基幹モデルにして、ワールドスタンダードな実用ハッチバックのゴルフを「いらない」とは、穏やかでない…!?
でも、そうなのです! ゴルフの弟分たる新しいVW「ポロ」があまりにも良くできているので、同車のステアリングホイールを握った人たちの口から、図らずも同じような感想が述べられているのです。
「そんなにイイんかいな?」と、少々懐疑的な気持ちになりながら、実際、新型ポロを運転してみると、うーむ、確かに、ス・バ・ラ・シイ!! 「いいクルマは“タイヤのひと転がり”で分かる」といいますが、ポロに乗って最初に圧倒されるのが、ボディの剛性感の圧倒的な高さでした。
■最大のライバルはゴルフの最廉価グレード!?
“ボディ剛性の高さ”は、ドイツ車を試乗した際に述べられる“お約束”の感想ともいえますが、今回、新型ポロでちょっとしたロングドライブに繰り出して印象に残ったのは、そのガッシリしたボディに加え、スムーズでフラットな走りを見せること!
つまり、筋骨隆々な体で路面からの入力を跳ね返す…だけではなく、サスペンションがキレイに動くので、乗る人の視点がむやみに上下しないのです。“硬質”と“スムーズ”が上手に同居している、とでもいいましょうか。路面の情報はドライバーによく伝えてくるのですが、いわゆる“Bセグメント”のコンパクトハッチバックとは思えない、上質な乗り心地なのです。
ボディサイズを感じさせない運転感覚は、ステージを高速道路に移すと、さらに加速します。日本に輸入される新型ポロのエンジンは、1リッターの3気筒ターボ。最高出力は95馬力、最大トルクは17.9kg-mですから、だいたい1.6リッター級のアウトプットといえます。これで車重1160kgのボディを動かす。順当な組み合わせですね。軽いビートが利いた3シリンダーユニットは、過不足ない十分な動力性能を提供しますが、絶対的に「速い!」というわけではありません。
“ノイエ・コムパクト”が本当にドライバーを喜ばせるのは、実は、狙ったラインを鋭利なナイフでなぞるかのようなシャープなハンドリングです。端からレールが敷いてあるかのごとく、ステアリングを切ったとおりに自車が飛び込んでいく! そのさまに、溜飲が下がります!! クルマの土台であるプラットフォーム、そして、その上に載るボディがしっかりしているからこそ、サスペンションが望んだとおりの仕事をしてくれる。ジャーマンコンパクトが高速で安定しているというのはすでに定説だけれど、新型ポロの走りからは、さらに一段、ステップアップした印象を受けました。
さて、1975年に登場した初代から数えて6世代目に当たる現行モデルには、VWの誇る“MQB”プラットフォームが採用されました。MQBには最新のモジュール設計が採り入れられ、ホイールベース(車軸間)の伸縮に限らず、さまざまなディメンションを自由に変えられます。
VWのラインナップでは、ゴルフはもちろん、上級車種の「パサート」、新たなフラッグシップ「アルテオン」にまで使われます。つまり、最新ポロの基本コンポーネンツには、上級モデルのクオリティが“そのまま”反映されているわけで、クラスを超えた走りが実感されるのも当然! なのです。考えようによっては、MQBの恩恵に一番あずかれるのは、MQBモデルの中で最もベーシックなポロを求める人たち、といえるかもしれません。
新型ポロの外観は、ソフト寄りの優しげな旧型から一転、直線基調のアグレッシブな姿に変わりました。フロントのフォグランプまわりや、ボディサイド上下のプレス&キャラクターラインなど、個人的には「ちょっとやり過ぎなんじゃないの?」と微苦笑を禁じ得ませんが「新世代のコンパクトカーを世に送りだすんだ!」という開発陣の気合いが感じられるのも確かです。
ドアを開けて運転席に収まると、いかにもVWらしい、ザラっとした肌合いの張りの強いシート生地で、座り心地は硬め。ムダなおもてなしはしないけれど「ビシッと仕事しまっせ!」という頼りがいのあるシートです。
インパネまわりも愛想のないつくりで、素っ気ない樹脂パネルなどを見ると「あえてゴルフとの差別化を図ったのでは?」と、邪推してしまうほど。むしろ「そこがVWのベーシックモデルらしくてイイ!」のかも!?
前述のとおり、国内で販売されるポロは、999ccの直3ターボに“DSG”ことデュアルクラッチ式7ATの組み合わせのみ。グレードは3種類で、ベーシックな「TSIトレンドライン」(209万8000円)、中堅の「TSIコンフォートライン」(229万9000円)、そして今回の試乗車である最上級グレード「TSIハイライン」(265万円)で構成されます。
TSIハイラインは、16インチホイールを履き、LEDヘッドランプ、フォグランプが標準で装備されます。シートが“スポーツコンフォート”タイプにグレードアップするほか、高機能のクルーズコントロールなど、先進の運転支援システムも備わります。オプションの「Discover Proパッケージ」(22万6800円/TSI コンフォートラインにも装着可)を選択すれば、スマートフォンと接続し、そのアプリケーションを活用することができるようになります。
8年ぶりにフルモデルチェンジを果たしたVWの新型ポロ。ボディサイズは、全長4060×全幅1750×全高1450mm。ホイールベースは、先代より80mm長い2550mm。ついに全長が4mを超え、全幅が1700mmより広がりました。これはもう、初代や2世代目のゴルフがすっぽり外殻に入るほか、登場時には「肥大化した」と一部で不評を買った3世代目ゴルフにも匹敵する大きさです。40年余のうちに、ずいぶんと成長しましたね。
もっとも、新しいポロは当時のゴルフと比較して、全長におけるホイールベースの占める割合が大きい。エンジンを筆頭に、メカ類の容積をできるだけ圧縮し、乗る人が使えるスペースをより広く確保しているわけです。
最新のポロを見て、乗って、運転してみると、「もうゴルフはいらないんじゃね?」というか、「むしろコレがゴルフなんじゃね?」と思ってしまいます。もしかしたら新しいポロの一番のライバルは、ゴルフの最廉価グレード「TSIトレンドライン」(253万9000円)なのかもしれませんね。
<SPECIFICATIONS>
☆TSIハイライン
ボディサイズ:L4060×W1750×H1450mm
車重:1160kg
駆動方式:FF
エンジン:999cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:95馬力/5000〜5500回転
最大トルク:17.9kg-m/2000〜3500回転
価格:265万円
(文&写真/ダン・アオキ)
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