世界遺産の橋を一望するボスニア・ヘルツェゴビナの古都モスタルの絶景モスク「コスキ・メフメット・パシナ・ジャーミヤ」
GOTRIP! / 2017年6月8日 6時30分
オリエンタルな情緒漂う、ボスニア・ヘルツェゴビナの古都、モスタル。この街の代名詞が、ネレトヴァ川に架かる橋「スターリ・モスト」です。
ボスニア語で「モスタル」は「橋の守り人」を意味し、その名の通り、モスタルの街はこの橋を中心にして発展してきました。
スターリ・モストはもともと、モスタルがオスマン朝の支配下にあった1566年に建設されましたが、ボスニア紛争中の1993年に破壊されてしまいます。ユネスコの協力を得て2004年に再建され、いまでは、平和と民族融和を象徴する世界遺産として大切にされています。
そんな世界遺産の橋、スターリ・モストを最もよく見渡せるのが、「コスキ・メフメット・パシナ・ジャーミヤ」。
ネレトヴァ川のほとりにたたずむ1618年創建のイスラム教のモスクで、その庭やミナレット(尖塔)は絶好の撮影スポットとなっています。
「ヨーロッパの国でイスラム教のモスク?」と思われるかもしれませんが、ボスニア・ヘルツェゴビナの人口の約48パーセントを占めるボシュニャク人の多くが信仰するのはイスラム教。
ヨーロッパといえばキリスト教のイメージが強いですが、ボスニア・ヘルツェゴビナは、イスラム教徒、カトリック教徒、正教徒が入り混じる、多民族・多宗教国家なのです。
スターリ・モストの東側の川岸を150メートルほど北に進んだところに建つ、コスキ・メフメット・パシナ・ジャーミヤ。
門をくぐると、信者が礼拝前に身体を清めるための泉があります。
オスマン朝支配時代に建てられたモスクは、青みがかったドームと、鉛筆のように細く端正なミナレットをもつトルコ風。
こんな風景を見ていると、ここがヨーロッパであることを忘れてしまうような、不思議な感覚にとらわれます。
こぢんまりとしたモスクながら、内部では、可憐な色合いのステンドグラスや、植物などをかたどったアラベスクが幻想的な世界を造り上げています。
とりわけ、精緻で色鮮やかな文様に覆われたミフラーブ(メッカの方角を示す窪み)は、見ごたえ抜群です。
コスキ・メフメット・パシナ・ジャーミヤを訪れたら絶対に見逃せないのが、ミナレットからの眺め。
狭いらせん階段をのぼり切った頂上からは、スターリ・モストはもちろんのこと、モスタル市街や周囲の山々までをも一望することができるのです。
スターリ・モストを中心に広がる、オスマン朝時代の面影を残す街並み。
他のヨーロッパ諸国では、あまり見ることのできないエキゾチックな光景に、新鮮な感動を覚えます。
そして、街の中央を走るエメラルドグリーンのネレトヴァ川と、市街を囲む緑の山々。
これらが一体となった景観は、吸い込まれるほどに美しく、いつまでも眺めていたくなってしまいます。
一枚の写真に、キリスト教会の尖塔と、イスラム教のモスクのミナレットが収まる様子は、一度は悲惨な民族紛争の舞台となりながらも、民族や宗教が異なる人々が共存してきたモスタルらしい風景といえるでしょう。
コスキ・メフメット・パシナ・ジャーミヤからモスタルの風景を見ていると、その美しさに感激するだけでなく、平和への思いを新たにせずにはいられません。
過去の紛争の教訓を語り継ぐモスタルの街は、私たちに人として忘れてはいけない大切なことを教えてくれるのです。
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