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「ベンチャー企業政府調達で優遇」に思うダイバーシティ/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2014年7月9日 12時9分

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野町直弘 / 株式会社アジルアソシエイツ

欧米ではサプライヤダイバーシティという概念は当たり前のモノですが日本の場合は遅れています。

最近議会での女性に対するセクハラ野次が話題になっています。一部の議員が謝罪しただけで大きな問題にはなっていないようですが、これが海外(特に米国)などでは考えられません。そもそも「野次が議場の花」と言っていること自体が私には品性を疑うようなことに感じます。だって普通の会社や何かの発表の場で「野次る」ことってあり得ませんよね。それ以上に時代感覚のずれを感じたのは、野次がセクシャルハラスメントにあたることだったことです。日本以外ではこのようなことが明らかになれば責任を追及され、辞任せざるを得ないでしょう。

2000年前後のことですが、私が勤めていた外資系の企業ではCSR(ソーシャルレスポンシビリティ:企業の社会的責任)は当たり前の概念でした。その後日本企業でもCSRやCSR調達が当たり前のことと捉えられるようになりましたが、それはここ数年のことです。またその当時、勤めていた企業でしきりに言われていたのがダイバーシティ(Diversity:多様性)でした。

ダイバーシティ(多様性)とは:「幅広く性質の異なるものが存在すること」「相違点」を意味します。また、 このダイバーシティ(多様性)を活かして、『さまざまな違いを尊重して受け入れ「違い」を積極的に活かすことにより、変化しつづけるビジネス環境や多様化する顧客ニーズに最も効果的に対応し、企業の優位性を創り上げる』ことが求められており、最近ではダイバーシティマネジメントという経営用語もでてきているようです。

米国ではダイバーシティは調達・購買分野でも既に必須の要素です。

多くの公的機関では、女性及びマイノリティ(少数民族)が経営する企業の契約案件への参画の数値目標を設定しています。例えばメリーランド州ではマイノリティ企業の参加目標値を25%に設定。

民間企業においてもマイノリティ企業からの購買率をレポートすることが義務付けられており、各企業においても数値目標を設定しているのが一般的です。

ISM(Institute for Supply Management)の発表している"Supplier Diversity Survey - 2011"によると380社の回答企業の約2/3の64.7%の企業がSupplier Diversity Programを持っていると回答しています。またISMではCPSD(Certified Professional in Supplier Diversity)という資格制度を設置して「サプライヤダイバーシティ」についての教育や資格認定までも行っているようです。

このように米国において「サプライヤダイバーシティ」はごくごく一般的なものになっているのです。一言にサプライヤダイバーシティと言いますが取り上げられる対象企業は非常に多様です。

SB:Small Business(中小企業)

SDB:Small disadvantaged business(中小かつディスアドバンテイジ)

WOSB:Women-owned small business(女性が経営する中小企業)

VODB:Veteran-owned small business(退役軍人がオーナー)

MOSB:Minority-owned small business(ヒスパニック、先住民、アフリカ系アメリカ人等のマイノリテ民族がオーナー)

HUBZone:Historically Underutilized Business Zones

SDVOSB:Service-Disabled Veteran-owned small businessなどです。

これらの企業はSBA:Small business administrationなどの公共機関で定義され、登録されています。また、大手企業の殆どは各企業のWebサイト上に

"Supplier Diversity Program"のページを設けており、どの位の金額を購入しているかを毎年レポートおよび公開しているのが一般的です。

このようにダイバーシティが調達・購買においても着実に進んでいることが理解できます。

一方で日本での状況はどうでしょうか。すぐに思い浮かぶのが下請法です。しかし下請法はどちらかというと中小企業との取引を推奨する法律ではなく、中小企業との取引における義務および違反事項を定義しているものです。中には下請法が厳しいので下請法対象取引となる企業との取引を避けようという動きもない訳ではありません。これでは主旨が逆転してしまいます。また下請中小企業振興法における振興基準も基本は継続取引をしている中小企業との取引におけるルールを定義しているものです。やはり中小企業との取引を推奨する法律ではありません。

このように同じ中小企業他との取引の保護を目的にしたルールでありますが、米国における取引機会を公正につくることを目的としたルールと日本における取引を行う上で無理を強いることを禁じることを目的としたルールではその目的から大きく異なっています。

しかし、日本企業においてもグローバル化の進展が加速化していること、CSR調達も米国から遅れるものの非常に速いスピードで適応しなければならなくなっていること、等を考え併せると今後サプライヤダイバーシティを重視していかざるを得ないことは間違いありません。

先日この一端とも言える動きが新聞に発表されました。

「ベンチャー企業、政府調達で優遇、創業10年以内が対象。」という記事です。(日経新聞2014年6月28日)

記事によると政府は政府調達でベンチャー企業を優遇する、と発表しました。また、今後は各省庁や全国の自治体が関連施設の備品や工事などを発注するときも、ベンチャー企業をできるだけ選定するよう工夫するような方向でサプライヤダイバーシティを確保しなさいという方向のようです。将来的には民間に対してもこのような指示やルールを作ることは容易に想像できます。

私はこういう政策は非常によいことだと。何故なら、未だに「ベンチャーだから信用できない」という考え方があまりにも広く認識されているからです。確かに発注側からするとリスクは低くないでしょう。しかし政府自らがリスクを取りながらベンチャー企業を育成することにつながるのであれば非常に喜ばしいことです。

そう、弊社も政府からコンサル案件が取れるかも。と思いつつ新聞記事をよく読んでみますと、、「あれっ、ちょっと待てよ。創業10年以内って。うちもう12年超えているのですけど。。そうか、うちはベンチャー企業ではなくてただの中小企業、ってことか。」

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