古くて新しい「ROIC経営」 再注目の背景に、日本企業への“外圧”
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月25日 8時15分
なぜ今、ROIC(投下資本利益率)が再び注目を集めているのか(ゲッティイメージズ)
2024年3月4日、日経平均株価が終値で初めて4万円台をつけ、史上最高値を更新した。米国の株高や円安といった外部要因が大きい一方で、原動力となっているのが、日本企業の変革への期待感だ。
2000年代初期に注目を浴びた、企業の資本効率や事業の収益性を表す「ROIC」が現在、古くて新しい経営管理手法として再び関心を集めている。Google検索キーワードの動向を見ると、直近5年で検索数が増加。理由を探ってみると、時代背景に加えて、日本企業特有の経営文化が見えてくる。
なぜ今、ROICが再び注目を集めているのか。新連載「ROIC経営が企業を変える」第1回はアビームコンサルティング執行役員 プリンシパル 企業価値向上 戦略ユニット長の斎藤岳氏が、ROICが再注目される本質を解説する。
●外圧により再注目されるROIC
ROICが再び注目を集める大きな要因は「外圧」である。20年7月、経産省が発出した「事業再編実務指針」にて、事業ごとの資本収益性を測る指標としてROIC(投下資本利益率)を導入し、資本コストとの比較や競合他社との比較(ベンチマーク)を行うことが重要であることが示された。
また、23年3月、東京証券取引所より「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を通じて、PBR(企業の株価と純資産の比率)1倍割れ企業に対する改善の要請が出たことも記憶に新しい。
このようにROICが再注目されている一つの背景には、経産省、東証、そして投資家からの外圧があることは間違いないだろう。
●投資家と企業側には大きな意識ギャップがある
一方、投資家と企業の間には大きな意識のギャップがあることがよく言われている。22年の生命保険協会の調査によると、資本効率向上に向けて、企業が「コスト削減の推進」を重視しているのに対し、投資家が期待しているのはコスト削減の推進ではなく「事業の選択と集中」および「収益・効率性指標を管理指標として全社に展開すること」が示された。
「事業の選択と集中」と「資本効率指標の全社展開」は重要な経営アジェンダであり、取締役会や経営会議では、この2つに多くの時間を割いてもよいはずだが、むしろ個別の投資議案などに多くの時間が割かれているのが実態である。
●「事業売却の有無」と「PBR」には強い相関がある
実際、事業の選択の集中、中でも売却経験の有無がPBRの高低と強い相関があることが、アビームコンサルティングの23年11月に行った「進化するROIC経営の実態調査」(以下、ROIC経営調査)から分かっている。
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