古くて新しい「ROIC経営」 再注目の背景に、日本企業への“外圧”
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月25日 8時15分
23年11月時点で日本企業の平均PBRは1.3であったが、PBR1.3以上の企業と1.3未満の企業で比較をしたところ、事業撤退の意思決定に至ったことがある企業の割合は、PBR1.3以上が28.3%だったのに対し、PBR1.3未満が11.3%と、その割合に倍以上の開きが出た。
PBRの高低は、その企業が属する業界が伸びているのかどうかが大きな要因ではあるが、この事業売却の有無、すなわち投資家が求めている事業の選択と集中にしっかりと対応をしているかどうかもPBRに大きな影響を及ぼすのである。
●事業売却を推進している企業はROICを見ている
事業売却を本気で検討する企業にとって、ROICを事業別に算出することは必然であることもROIC経営調査の結果から見えてきている。PBRが1.3以上と以下の区分と、撤退経験の有無でセグメント分けをしたところ、A企業(高PBRで撤退あり)は事業別に連結ROICを算出している比率が66%以上あった一方で、D企業(低PBRで撤退なし)では、24%でしかなかった。また、B企業(高PBRで撤退なし)であっても、43%でしかなかった。
実際にROICを経営指標として活用し、かつ事業売却も積極的に行っていると考えられる企業として、資生堂、花王、味の素、村田製作所、オムロンなどが挙げられる。
各社はROICを管理指標として掲げているが、同時に、資生堂は21年のパーソナル事業の売却、花王は17年の製油会社とセラミック事業の売却、味の素は20年の包装材料事業会社の売却、村田製作所は17年の電源事業と、19年のスーパーキャパシタ生産ラインの売却、オムロンは19年車載部品事業の売却を実施しており、ROICを活用しつつ売却を推進しているのだ。
●花王はなぜ「EVAからROICへ」と指標を見直したのか
花王は、EVA(経済的付加価値)を全社指標として活用してきたが、23年にROICを経営指標に活用することを表明した。理由として「EVAでは事業の総和でしか判断できず、収益性が低い事業があっても見過ごされていた。これがうまくいかなくなった原因」「EVAは『絶対値』しか見えないため、売上高規模が違う他社との比較がしにくい。業績が好調な時は問題視されなかったが、苦境に直面する今、収益性低下の原因が明確にならないという欠点が浮き彫りになった」(いずれも出典は23年9月東洋経済オンライン)とのことである。
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