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古くて新しい「ROIC経営」 再注目の背景に、日本企業への“外圧”

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月25日 8時15分

 ROICは率での指標であるため、他社との比較、他の事業との比較、資本コストの比較がしやすい指標である。「撤退」という難しい意思決定を下すにあたっては、比較が出来ることは意思決定を促すメリットがあるのだと考えられる。もちろん、率指標は縮小均衡を引き起こす可能性があるため、ROICを指標としている企業は、同時に、市場成長率などの成長性指標や、市場占有率などの外部指標と共に見て行くことも大事なポイントである。

●日本企業特有の経営文化とROIC

 最後に、ここまでの話をもとに、経営者や投資家の方々と議論した際に出てきた話をいくつか紹介する。キーワードは「成長機会と内部留保」「縦割り組織」「投資家と経営と現場」の3つである。いずれも指標だけの話でなく、日本企業が抱える課題が浮かび上がる。

成長機会と内部留保

 日本企業は内部留保を厚めに持っている企業が多い。新たな投資を企てるも、自社の強みが生きそうな領域は成長機会が限定的であるという企業が多くある。特に日本市場を中心に考えると、人口が減少する中、成長機会は限定的になりがちである。内部留保が過剰となればROICが低下する原因になるし、成長の芽が少なければPER(株価収益率、利益と比較した株価の高さ)が低くなり、PBRはさらに低くなる。

 一方で、過去の歴史やさまざまなステークホルダーを考えると事業の組み替えを行うことは容易ではないし、次に狙う成長市場が既存の事業領域から遠い領域となるとリスクも高い。よって、このままだとROICもPERも下がりPBRが下がるということは理解しつつも、「分かっちゃいるけど変えられない」という問題を抱える企業は多い。

縦割り組織

 「分かっちゃいるけど変えられない」理由の一つが縦割り組織にある。コーポレートの経営企画部門が主導で全社にROICを導入するも、事業部側はやらされ感で指標を導入している企業は案外多い。結果、現場のKPIとROICは連動せず、PDCAは回らない。さらには、海外現法ではそもそもKPIの定義が本社と異なっているということまである。

 ROICを高めるには、全体最適の視点が大事である。どこにインパクトがあるのか、はたまたコスト削減のために大量生産すると逆に在庫増や値引きなどのしわ寄せが起こらないか、会社全体をみた意思決定が必要となるからである。全体最適の実現には、組織をまたいだ巻き込み、各組織のトップが自部門の1つ上、2つ上の視点を持つというリーダーシップが大事になる。逆に、ROICと現場を結び付ける活動がリーダーシップ育成に貢献するという面もある。縦割り組織を打開するためにも、リーダーシップ育成という長い時間軸での変革が必要なのである。

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