日本からデカコーンは生まれるか? 有力候補、マネーフォワードとフリーを徹底分析
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月19日 7時30分
スタートアップがデカコーンに向かう上で必要となる成長戦略
ChatGPTで名をはせる米OpenAIや、英フィンテック企業Revolut、TikTokを運営する中国のByteDance――。世界には「デカコーン」と呼ばれる、評価額が100億ドル(約1兆5000億円)以上のスタートアップ企業が50社ほど存在する。
前回の記事「評価額100億ドル以上の「デカコーン」企業、なぜ日本から生まれないのか?」では、デカコーンが日本から生まれてこない背景について解説した。起業家を取り巻く国内の環境が、大きな市場に挑戦しづらいものになっているというのが大きな要因だ。
こうした中、デカコーン規模の時価総額企業へと成長を目指す姿勢が顕著に見られる、マネーフォワードとフリーの2社に着目してみたい。
株式時価総額の推移を見ると、フリーが上場した2019年末から2021年前半ごろまでは、マネーフォワードがフリーを追いかける形だった。しかし、2022年後半から逆にフリーがマネーフォワードを追いかけるようになった。この背景を分析し、スタートアップがデカコーンに向かう上で、何が必要かを考えてみたい。
●マネーフォワードとフリーの株式時価総額が逆転した
2022年後半以降、マネーフォワード(下図:青線)がフリー(同赤線)を、株式時価総額で逆転した。理由は以下の2点だ。
(1)資本市場でテック企業に対する評価の目線が変わった。2021年までは売上高成長率や最大市場規模が重視されていたが、2022年以降はさらに収益性も重視されるという急激な変化が起きた。
(2)成長率と収益性を評価する「Rule of 40」という指標において、マネーフォワードとフリーが2022年に逆転した。
米国ではSaaS企業の評価として年間定期収益(Annual Recurring Revenue:ARR、※1)とその倍率であるARRマルチプルの乗算で考えられることが多い。企業の株価を計算する際に一般的に使われるNPVやPER、PBRといった指標は、実はSaaS企業への評価には使いづらい(※2)。
ARRマルチプルの妥当性を考えるための指標は、株式市場の状況や投資家の性質によって変化する。
2021年末をピークに、世界のハイテク銘柄に影響を与えるNASDAQ総合指数(※3、上図:緑破線)はしばらく落ち込んだ。米国でコロナ対策の金融緩和で豊富な資金に支えられ成長性一辺倒だった株式市場が、金融緩和解除で調整局面に入り、収益性も重視するようになったためだ。
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