日本からデカコーンは生まれるか? 有力候補、マネーフォワードとフリーを徹底分析
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月19日 7時30分
SaaS企業の成長性と収益性の双方を評価するには、一般的に「Rule of 40」と呼ばれる指標が参考に用いられることが多い。Rule of 40は、成長性をARR(年間定期収益)の前年と比べたときの成長率と、今年の利益率の和で求められる。企業のサービス利用が広がりARRが伸びたり、収益率が改善したりするとRule of 40が改善する。
下図で分かる通り、Rule of 40(下図:折れ線・左軸)の実際の動きをみると、マネーフォワードは2022年第4四半期以降フリーに対して勝っている。これはまさに、マネーフォワードとフリーの株式時価総額が逆転し、その差が開き始めたタイミングだ。ARR(下図:縦棒・右軸)も2023年末に、マネーフォワードとフリーはほぼ同額になっている。
(※1)定期購入サービスなどにより継続的に得られると期待される売上高。一過性のコンサルティングサービスなどの売上は含まれない。
(※2)NPVは、将来のキャッシュフローをリスクで割り戻すことで得られる。キャッシュフローの推定に必要な売り上げは顧客数x顧客1人当たりの生涯価値(LTV)で理論上は計算される。LTVは顧客単価を解約率で割り戻すと得られる。しかしSaaS企業では、優良なサービスでは顧客単価が次第に向上し、解約率が低下するし、逆に劣悪なサービスや競合が現れると顧客単価が下がり解約率が上がるケースもあり、予測が難しい。PERは、そもそも利益が出ていない際には計算が難しい。企業のB/S上の純資産から計算するPBRも、B/SにSaaS企業で価値を生む資産である顧客基盤が反映されないため、実体を捉えているものとは言えない。
(※3)米国の新興企業向けの株式市場ナスダックに上場している全ての銘柄を対象とし、時価総額加重平均で算出したもの。マネーフォワード、フリー両社共に、上場後海外の機関投資家から資金を調達しており、米国の株式市場の影響を受けやすい。
●百家争鳴のERP業界
両社の主力事業は、SaaS型会計ソフトから発展したERP事業だ。ERPとは、Enterprise Resource Planning(エンタープライズ・リソース・プランニング)の略で、システムの文脈で用いる際には、企業内の多様な業務の情報をつなぎ、管理、分析するためのソフトウェアシステムを指す。
ERPの業界構造をひもとくと、百家争鳴ともいえる複雑さが見える。
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