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ショートドラマ人気の「必然性」 背景にある「新しい消費スタイル」とは?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月18日 6時30分

 だからこそ、特にZ世代(1996~2012年に生まれた層)においては、消費に失敗したくない、という意識や消費した気になれるモノを好む傾向がある。一時期問題となったファスト映画(映画の映像を無断で使用し、字幕やナレーションをつけて10分程度にまとめ、結末までのストーリーを明かす違法な動画)に需要があったのも、「見た気になれればいい」「見た状態になれればいい」というニーズを満たしていたからだ。

 またファスト映画に限らずネタバレサイトや他人のレビューを参照するなど、内容を知ってからコンテンツを消費しようとするのも、「消化できる時間は有限だから、その時間を無駄にしてまで、消費したコンテンツから不快感やつまらないという感情を生みたくない」という消費を失敗したくないという価値観によるものであると筆者は考える。

 コンテンツの消費を失敗したくない、時間を無駄にしたくないと思うからこそ、スーパーの試食のようにあらすじやハイライトだけを見て消費した気分になったり、ビュッフェのように好きな音楽のサビだけ、好きな動画のおいしい部分だけを消費したりするような仕方が好まれている。SHIBUYA109 lab.の「Z世代の映像コンテンツの楽しみ方に関する意識調査」によると、Z世代の9割がコスパを、8割以上がタイパを意識しているという。

 なかでもタイパに関して、「Z世代の映像コンテンツ視聴姿勢」の項目を見ると、サブスクの映像コンテンツを見る際に81.3%が「ながら見」、51.5%が「スキップ」、48.6%が「倍速」、44.3%が「ネタバレ」をしているという。ざっくり言えば半数以上が効率よく(タイパを意識して)コンテンツを消費しているわけだ。

 一方で、若者の中には映画などのコンテンツによって予期しない感情の起伏を得ることにストレスを感じる者もおり、そのようなコンテンツが生み出す「不確定さ」が、消費を躊躇(ちゅうちょ)させる要因になっているようだ。

 だからこそ、事前情報を浴びるように消費する。自分の想像や思い描いた内容に近いほど感情が揺さぶられない(ストレスが少ない)ため、求めている水準(内容=満足)を得られているかを本編と自身の想像(理想)とをなぞりながら答え合わせするかのように視聴することが結果的に消費の失敗に対するリスク回避にもつながるわけだ。

●「消化」が目的となった娯楽

 なにより、われわれの消費している娯楽のほとんどはフリーミアムで消費できるモノばかりだ。タダなら見てみよう、タダだからプレイしてみようと、スーパーの試食のように深く考えずに瞬発力をもって消費が行われている。お金をかけずに消費できるからこそ、消費しようと思うモノで溢れていくため、一つ一つのコンテンツが鑑賞ではなく消化目的になっている。

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