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「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり

ITmedia PC USER / 2024年4月24日 16時0分

―― 日本のDXの取り組みは、米国などに比べて大きく遅れているとの指摘がされてきました。現状はどう判断していますか。

山口 一概に、日本が遅れているということではないと思います。日本の企業においても、先進的な事例がありますし、進んでいる企業はかなり進んでいるというのが実態です。新たなビジネスを創出したいというような明確な姿勢を持ってDXに取り組んでいる企業は、結果を生み出していますね。

 しかし何のためにITを使うのか、あるいはDXをやるのかという部分に、フワっとした考え方がある企業の場合、「DXはIT部門の仕事である」ということになりやすく、生産性が少し上昇したというレベルで終わっているケースが目立ちます。

 DXはIT部門だけがやる取り組みではなく、経営を巻き込んで行う取り組みです。会社をどう成長させるのかを考えるのは経営にとって当たり前の仕事です。経営の変革を担うツールがたまたまITであるのに過ぎないわけですが、それをIT部門だけがやるものだと勘違いして、IT部門に丸投げしていては、DXは成果につながりません。

 また、ITを使えばコストが削減できるとか、生産性が高まると考えて利用する企業と、ITとデータを活用してトップラインを伸ばすビジネスを創出することを目指す企業とでは、ITの活用方法が全く異なります。日本企業は前者が多く、米国企業には後者が多いという実態は感じます。

 これはインターネットが登場したときと一緒です。当時の日本企業は、インターネットを使って検索が簡単にできて辞書が不要になるとか、Wikipediaを使えば何でも分かって便利になるといった部分に注目が集まっていましたが、米国企業の場合は、すごいツールが出てきたのだから、これを使って何か新しいビジネスができないかと考える人たちが多くいました。

 例え話をすれば、クルマが登場したときに早く移動ができて便利になり、生産性が高まり、今のビジネスを加速できると考えるのが日本の企業であり、クルマの技術を元にトラックやタクシー、バスという新しい形態のクルマを作って、運送業や観光業といった新たなビジネスを創出しようと考えるのが米国企業の姿勢です。日本の企業は、今の延長線上でビジネスの拡大を考えることは得意ですが、これまでにない新たなビジネスを創出するという発想が少ないといえます。

 昨今注目を集めている生成AIでも、同じことが起ころうとしています。日本では、生成AIを使って仕事の生産性が上がったとか、稟議書やメールを代わりに書いてもらえるようになったというような話題やニュースが中心です。これは成果としては大切なものなのですが、その一方で新たなビジネスの創出に使ったという事例やニュースが少ないのも事実です。

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