次世代CPU「Lunar Lake」でIntelが目指す“AI PC”とは? 驚くべき進化点と見える弱点、その克服法
ITmedia PC USER / 2024年6月4日 12時5分
最近のCPUでは、パフォーマンスの向上率を「IPC(1クロックあたりの命令実行数)」で算出することが多いが、ハイパースレッディングはまさにIPCを向上するために生まれた技術だ。
Intelが「Pentium 4」で初めてハイパースレッディングを実装したのは2002年。当時は「シングルスレッドにおけるIPCを向上させる」よりも、「互いに独立した無関係な2スレッドを並列実行させる」ハイパースレッディングの方が、全体としてのIPCを向上しやすかった。しかし、時代が流れて技術が進歩すると、シングルスレッド処理のために盛り込まれたIPC向上の仕組み(順不同のスーパースカラ実行/条件分岐予測精度の向上)が、ハイパースレッディングで得られるIPC向上効果と大差ない状況となった。
要するに、昨今はハイパースレッディング機構の搭載によって、トランジスタや消費電力が増える代わりに得られるメリットが薄くなったのである。
むしろ、ハイパースレッディング処理に伴い生じるオーバーヘッド(レジスタファイルの総入れ替えなど)が、シングルスレッドのパフォーマンスを阻害するケースも出てきている。特にゲームアプリのコアプログラムは、逐次処理の塊であるためシングルスレッド性能がパフォーマンスを左右することが多いので、Pコアのマルチスレッド非対応化はむしろ歓迎されるだろう。
もっと極端にいえば、「ハイパースレッディングに対応させるくらいなら、Eコアを増やした方がマシなんじゃね?」という状況なのである。
ハイパースレッディングの実装によって増えるトランジスタの数だが、先に触れたPentium 4の場合が「1コアあたりプラス5%」程度だった。しかし、近年のCPUではこれが「1コアあたりプラス10~20%」程度にまで達している。
EコアのサイズがPコアの4分の1程度にとどまることを考えると、「面積を考えてもEコア増やした方がいいよな、そうだよな!」的な状況になっているのだ。
今回のイベントの質疑応答において、Intelは「サーバ向けCPUにはなら、面積と電力のバジェット(予算)をある程度多く取ることをためらわない設計ができるので、ハイパースレッディングを引き続き搭載するかもしれない」と語った。
少し遠回りな表現にも思えるが、この言い方から察するに、優れた省電力性能と絶対的なシングルスレッド性能を追求する観点から、クライアント向けCPUではハイパースレッディング機構を順次なくしていく可能性は高い。
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