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[清谷信一]【陸自は輸送防護車を使いこなせない】~海外邦人救助に大きな懸念 その1~

Japan In-depth / 2015年12月26日 7時0分

[清谷信一]【陸自は輸送防護車を使いこなせない】~海外邦人救助に大きな懸念 その1~

陸上自衛隊は12月17日、海外での邦人救助を想定した訓練を相馬原演習場(群馬県榛東村)で実施し、ここで初めて新たに中央即応連隊(宇都宮)に配備された輸送防護車「ブッシュマスター」を公開した。訓練は邦人が外国の日本大使館に取り残されたとの想定だった。

陸自は既に平成25年度の補正予算で、4輌の耐地雷装甲車ブッシュマスターを7億円で導入した。更に来年度予算でブッシュマスター4輛を9億円で追加調達する予定だ。

ブッシュマスターはADI(元タレス・オーストラリア)社がオーストラリア陸軍向けに開発した大型の4輪装甲車で、戦闘重量が14トン、耐地雷構造を有しており、路上最大速度は時速100キロである。乗員は車長、操縦手の他、下車歩兵が8名搭乗できる。内側には車内温度の低減のために耐熱素材が貼られており、クーラーも完備している。また飲料水タンクも搭載し、常に冷たい水が飲める。ブッシュマスターはオーストラリア以外にオランダ、英国なども採用しており、アフガニスタンなどの実戦で使用されている。

ブッシュマスター自体は優れた耐地雷装甲車である。また実戦を通じて多くの改良もなされている。そのことに異論はない。だが現状を見る限り陸自が邦人救護の任務と耐地雷装甲車の使い方を理解して採用したとは思えない。またブッシュマスターを選択した際に、まともに他の候補を検討した様子が見られない。率直に申し上げて、陸自の調達はアマチュアの思いつきレベルである。

導入されたブッシュマスター及び、来年度で導入されるブッシュマスターはすべてAPC(装甲歩兵輸送車)型である。軍事作戦の常識を考えれば、同じく耐地雷構造を有した回収車、指揮通信車、装甲救急車、工作車輌、工兵車輌、水や食料などを運ぶ装甲トラックなどをパッケージで揃える必要がある。ブッシュマスターで邦人を輸送するなら護衛用の車輌も同様に耐地雷装甲車が必要となる。せめて来年度の予算で回収車、装甲救急車だけでもパッケージで揃えるべきだった。

だが今回の演習では既存の軽装甲機動車などが使用されていた。既存の装甲車が触雷すれば乗員が死傷する率は極めて高い。護衛用の車輌はコンボイの前後につくが、触雷も敵の襲撃も真っ先に受けるのも前後の護衛車輌だ。

陸自の装甲車輌は軽装甲機動車を含めて、耐地雷能力は殆どない。96式装甲車に至っては車体下部が凹型となっており、わざわざ触雷の被害を拡大する構造になっている。陸自の装甲車でIED(Improvised Explosive Device:即席爆発装置)や地雷に触雷すれば乗員が全員即死する可能性は極めて高い。

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