米シリア爆撃で北朝鮮核開発に本腰
Japan In-depth / 2017年4月10日 7時45分
大野元裕(参議院議員)
【まとめ】
・トランプ氏、シリア政権放逐の意思なし。
・シリアでは政権軍、IS,イスラーム系武装組織、クルド勢力、反体制派の五つどもえの戦闘続く。
・日本は朝鮮半島情勢最悪のシナリオを想定せよ。
米国がシリアにトマホーク巡航ミサイルを撃ち込みました。本件については、考えるべき点が多く、我が国に対する影響も小さくないと考えます。ついては、長文になりましたが、現時点でのとりあえずの考えを以下のとおり取りまとめました。
1.米国の意図
(1) 先週、ヘイリー国連大使がアサド政権転覆はもはや米国の対外政策の優先事項ではないと述べていたばかりであったことに鑑みれば、シリア軍によるイドリブ郊外ハーン・アッ=シャイフーンへの化学兵器使用への報復としての米軍による空爆には唐突感が付きまとう。米政権は、被害に遭った子供たちを含む民間人への被害を強調するが、トランプ大統領の対外政策の中でも真っ先にシリア人難民受け入れ拒否を実行したことを思えば、シリア人の人権問題を重要と考えてきたかについては疑問符を付さざるを得ない。
(2)今次空爆においてトランプ大統領の最大の目標は、弱いオバマ大統領に自らを対置させ、決断力・行動力のある強い大統領であることのアピールにあったように思われる。2011年以来シリアは内戦に陥っているが、2013年、オバマ大統領は化学兵器使用を「一線を越えた」と評価し、対シリア攻撃を計画した。それにもかかわらず、計画が実行に移されないままに、露による仲介により、シリア政権がCWCに加盟し、OPCWの査察を受け入れることで問題は収束し、結果、米国による武力行使は行われずに終わった。トランプ大統領は、バッシャール・アル=アサドの政権が「多くの一線を越えた(Cross Many Many Lines)」と、オバマ大統領の発言を想起させるような主張をしたが、そこにはオバマ大統領の政策の失敗を強調する意図が見え隠れしている。
(3)「一線を越える」ことが米国による対シリア武力行使を直ちに意味し、米国によるシリア情勢への介入をもたらすことが米国の伝統的な意志であると考えることは困難である。2013年に対シリア武力行使が取り上げられた際、民主党内には武力介入に否定的な意見が多かった。また共和党内には、米国による対イラク武力行使が米軍を泥沼に引きずり込んだ経験から、介入計画が不十分との批判が上がった。なお、報道によればトランプ大統領自身、当時、介入すべきではないとツイートした由である。
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