米シリア爆撃で北朝鮮核開発に本腰
Japan In-depth / 2017年4月10日 7時45分
(7)国際社会の米国による武力行使に対する評価は様々だが、英国やサウジのようにシリア情勢ではじかれた国々はおおむね米国の攻撃を支持し、逆の立場の国々は批判的な反応を示している。EUなどは、日本と同様に武力攻撃そのものを支持することを避けつつも、人道的な立場を強調しているようである。それぞれの国々が自国の国益に沿った反応を示しているのは当然であろう。トルコなどは、シリア国内に部隊を駐留させ、状況に応じて露と米の間を行ったり来たりしてきたが、今回の空爆では、Safe Heavenやノー・フライゾーンの確立を求めるなど、クルド勢力駆逐に有利で且つシリア政府の動きを止めることに利益を見出しているようである。
(8)日本政府は今回のシリア空爆に際し、空爆を支持するのではなく、その「決意」を支持するという巧妙な言辞を用いた。予測の難しいトランプ政権の立場をおもんばかったということもあろうが、それ以上に、ますます緊張の度合いを強める北朝鮮情勢をめぐり、米国の北朝鮮に対する強い立場を抑止力として維持させることを意図しているのであろう。
しかしながら、最終的な武力行使の「決意」は必要であろうが、国際法を味方に付けるべき我が国にとって、国際法がないがしろにされた状況を甘受することは適当であったのだろうか。シリアにおける道筋と戦略を明確にしないままでの攻撃は、短期間で終われば米国を当てにしてきた反体制派の期待を裏切ることになる一方、再び反体制派が力をつけてくれば群雄割拠の状況が長期化し、その「つけ」はシリア国民に押し付けられて難民問題がさらに深刻化するかもしれない。それどころか前述の通り、シリアに拘泥すれば、逆に北朝鮮は、二正面作戦が困難と考えて、時を稼ぎながら、対米抑止力の強化に努めて核開発と長距離ミサイル開発に力を入れるかもしれない。
平和的なシリア問題の解決に国際社会が本腰を入れられるような環境作りに日本も乗り出す必要が高まったと言えるのではないか。また北朝鮮については、「飴と鞭」の使い分けが最も彼らに理解できる言葉と考えるところ、脅しで終わらせるのではなく、北朝鮮が受容でき、中国も最終的に乗ることできるような枠組みを動かすことが重要ではないか。なお、北朝鮮情勢のみならず朝鮮半島情勢は流動化しており、邦人退避を含めた最悪の場合のシナリオを真剣に検討すべき時が来ているのかもしれない。
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