米シリア爆撃で北朝鮮核開発に本腰
Japan In-depth / 2017年4月10日 7時45分
しかし昨年12月のアレッポ東部陥落以降、米国支援の反体制派は重要拠点を失った。これに対してアサド政権は勢いを増し、シリアの将来についての国際的な協議の枠組みも、米国やサウジ等の湾岸諸国がはじかれて、露、イラン、トルコ主導に変わってきていた。
(2)空爆直前のアサド政権は、2013年以降最も安定した時期にあった。そのような中で政権側は、敵対する勢力を退け、政権を維持させる方途を模索してきた。しかし、シリア内戦を終結させるほどに強くないこともまた事実であった。5万程度の規模に縮小した政府軍は、露の空爆、イラン革命防衛隊やレバノンのヒズボッラーの支援を受けなければならず、そのような中で支配地域を拡大し、安定させるために、政権側が化学兵器を使用することが必要と判断したとしても不思議ではない。
(3)米軍空爆はかかる状況で行われた。それは、シリア協議で傍流に追いやられた米国が、再びシリア情勢に関与する宣言であり、反体制派への支援ととられるのかもしれない。しかし現実は容易ではなく、今回の空爆は短期的にはシリア中部に勢力を有する反体制派やイスラーム系武装組織を後押しするのみならず、ラッカを拠点とするISにとってもプラスになった。
(4)シリアで5つどもえになっている中、ISのせん滅が先か後かという議論はあろうが、いずれにしてもISを除く4つの勢力争いに一定の結論が出なければ、シリアは安定しない。今回の空爆は、立場を後退させていた米国が支持する反体制派を勢いづかせ、反体制派に対するシリア軍の攻撃拠点にダメージを与えた影響はあろうが、それだけで状況を一変させることは困難かもしれない。
もとより、今回の攻撃をもって米国がシリア内戦終結に向けたイニシアティヴをとり、アサド政権退陣を求めても、現時点でその実現の可能性は極めて低い。更なる米国の関与が反体制派を強化するならば、5つどもえの状況が当面強化され、混迷は深まることになりかねない。
(5)米国の根本的な介入は軍事的にも国際法的にもハードルが高く、米国にとっての泥沼化は、米国内の反発を招くことになろうし、そもそも、米国にそのための戦略が存在するかは疑問と言わざるを得ない。また、反体制派内に信頼できる人物や組織がほぼいない状況も依然として継続している。
3. 国際社会と日本
(1)米軍による空爆の影響の範囲は、アサド政権及びシリア情勢に限られないのみならず、状況によっては国際社会に大きな影響を与えることが考えられる。
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