米シリア爆撃で北朝鮮核開発に本腰
Japan In-depth / 2017年4月10日 7時45分
(4)今回の空爆を前にし、極めて短い時間でトランプ大統領の考えが変わり、マティス国防長官とマクマスターNSC補佐官主導で空爆が決定されたようだ。トランプ大統領を含む米政権関係者は、この空爆と並行して、「将来におけるアサド大統領の役割は無い」、「すべての文明国家はシリアにおける紛争停止に貢献すべきである」等、アサド政権退陣に向けた国際社会の連携を強調しているようである。しかし今回の攻撃は、米国がハーン・アッ=シャイフーンへの化学兵器による攻撃の拠点となったと主張するホムス南東部のシュアイラート軍用空港の滑走路、航空機、格納庫、レーダー及び対空兵器に限られているようであり、それ以上に拡大する物理的な兆候は見られていない。
また、かつて米軍はイラクやアフガニスタンにおいて大規模な作戦前に慎重にビルドアップを重ねてきたが、シリアに対してはこれまで、米軍の大きな動きは見られていない。したがって、限定された目標以上に攻撃を行い、シリア政権放逐にまで軍事力行使を重ねるかについては、現時点ではその可能性は高くないようにも思われる。
(5)米軍によるシリア空爆は、国連において対シリア協議が継続されている中で実施された。米政権は空爆当初、化学兵器使用を防ぐという米国にとり死活的な国家安全保障の国益のために行動したとした。また、国連の対シリア措置協議が長期化する可能性が出てくると直ちに行動し、「これまでのシリアに対する政策はすべて失敗した」と主張し、シリアの化学兵器使用に対し行動したとした。
(6) 空爆翌日には、よりまとまった形で、以下のような主張が行われた。
〇 シリアによる民間人に対する化学兵器使用は明白であり、化学兵器による攻撃を行った施設に対する米国の攻撃は適当である。
〇 今回のシリアによる化学兵器使用の他、3月25日並びに30日にはハマーで同様の攻撃を行っており、行動しなければアサド政権は化学兵器の使用を恒常化させかねなかった。
〇 2013年にアサド政権はすべての化学兵器を破棄することに合意したはずである。ロシアが2013年以来の約束を実施させる責任をとることに失敗した以上、誰か他の者がこれを実現させるべきである。
〇 トランプ大統領は、いかなる政府や主体であっても、一線を越えたならば行動に移す。トランプ大統領はこのメッセージを世界に対して行った。
2.シリア情勢
(1)シリア情勢は混迷を極めており、出口が見えない状況にある。米国の空爆についての議論から逸れることになるので極めて簡潔に言えば、シリアでは、ロシアやイランが支援するアサド政権軍、IS,イスラーム系武装組織、クルド勢力および米国やサウジなどが支援する反体制派が5つどもえで戦っており、いずれの勢力も内戦を終結させ支配権を確立するには至っていない。
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